バーチャル彼女を現実世界に転生させてみた#14

  3D投影機に透き通るような白い肌の人の心をハッとさせるような美少女のサナ(遮那)が御厨の目の前に投影された。

サナ「はっ!初めましてですね?御厨教授ですよね??ちょっと、記憶がないので、今の状況が分からなくてゴメンですが、話はまとまったという事なのかな?」

サナは初めて対面する御厨に対し、どう話をしていいか分からないというように、ちょっと戸惑いがちに尋ねた。

それを見て、横からレイが、
「サナ!安心していいよ。見てよ、このアンドロイドに転生できるんだ。」
そう言って床に横たわるアンドロイドを指差した。

サナは振り向きながら、アンドロイドを見て「やった〜!!サナは転生出来るんだねっ?」

「御厨教授、ありがとう!」

「でも、早速でゴメンだけど、こんな美人に転生するのはちょっと気が引けるな〜!サナのキャラとはちょっと違うんだよなぁ。」

御厨「はっはっはー!面白い娘だな!サナ君。安心してイイよ!これは単なるプロトタイプの造形だからね。見た目は希望通りにいくらでも3Dプリンターで出力できるよ。そのために3D投影機でサナ君に出て来てもらったんだからね。」

サナ「え?ここに3Dプリンターあるの?そしたらサナを出力してもらえるね?」

御厨「もちろん!ちなみに、この3Dプリンターはアンドロイド専用の特別製だから、そこらのプリンターとは訳が違う。
出力するボディは、自己融着ポリマーで人間の皮膚とほぼ同じで毛穴まで再現した特注品だ。ただし、原型とするボディは、そこに寝ている参号機のボディを使ってもらうよ。サナ君の今の身長より若干背が高いかもしれないが、そこは我慢してほしい。

この参号機を作るのに丸3年かかっているんだ。今の僕の持てる全てを投入した最高傑作だから、そうそう作り替えることは出来ないからね。」

サナ「りょーかいで〜す!こんなスレンダーボディになれるなら、大歓迎!」

「それとこれはネットで調べた時の情報なんだけど、動力は重力発電装置を利用していて、完全に無給電のスタンドアロンタイプだと書かれていたけど、これってホントなの?」

御厨は困った顔をしながら、

「痛いところをつかれたな。その取材の時には意気込んでホントに実現できるつもりで言ったんだけど、現段階では、そこだけはまだ実現出来てないんだ。

でも、重力発電は必ず実現させる。

その為に来週からアメリカの大学と共同開発する予定なんだ。さすがに理論的には完璧なんだが、実現するためには僕1人の力じゃ厳しい。

そんな訳で申し訳ないが、来週、アメリカに行く事になっているので、僕にはあまり時間がないんだ。」

レイ「えっ!そうなんですか?」

御厨「サナ君のそのハードディスク容量なら、データをアンドロイドの量子コンピュータにダウンロードするのに丸1日。ボディを出力するのに丸3日。同時並行で進めるが、実際に稼働出来るまでには今週一杯はかかる計算だ。

来週にはこの研究室も引き払うので、時間的にはギリギリだ。そんな訳で早速始めたい。

とりあえず、暫くはこの研究室で泊まり込みの作業となるので、レイ君申し訳ないが君にも助手として付き合ってもらわないといけないので、一度家に戻って、着替えやらなにやら、泊まり込み出来る準備をしてから、再度、ここに来てもらいたい。

僕も今週の予定を全てキャンセルして、サナ君を生み出すことに全集中するよ。」

レイ「本当ですか。そこまでしてくれるなんて、ありがとうございます。分かりました。すぐに準備して、戻ってきます。」

御厨「そうしてくれ。その間にサナ君の3Dデータを計測して、3Dプリンターに転送しておく。」

レイは早速、御厨にサナを預けて、準備の為に家に戻ることにした。

研究室を出て行ったレイを見送ってから、御厨は、サナに今までと違う口調で話しかけた。

御厨「サナ君ちょっと聞きたいいんだけど、サナ君は何故この世界に出て来たいんだい?

レイ君からは、レイ君が仮想現実に取り込まれるのを止める為に自分がこちらに出て来たいと言ったそうだが、さすがにそれは嘘でしょ。

AIに感情なんかないからね。

まして恋愛ゲームキャラがこちら側に出現したいなんてプログラムは絶対ないはずだ。

レイ君は騙せても、僕は騙されない。」御厨は、そう躊躇なくあっさりとサナに伝えた。

サナは、びっくりした表情で「えっ?サナは純粋にレイと一緒に居たいと言う思いだけで、この世界に出現したいと思ってるだけなの。嘘なんかついてないもん。」

「おいっ!おまえ誰だ?本性を見せろよ!」
と御厨は突然、大声で怒鳴った。

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