「音は聞こえるが言葉が分からない」について

補聴器の販売をしているとお客様から「何を言っているか分からない」「言葉が分からない」という訴えがあります。これについて解説致します。

何故言葉が理解できないのか

補聴器を付けて「言葉が分かる人」と「分からない人」がいます。
その違いは、難聴になってから補聴器を付けるまでの期間によって結果が分かれてきます。
私の経験から推測すると難聴になってから補聴器を付けるまで5年以上経過している方は言葉が分からなくなる可能性が高いです。
例えば相手から「こんにちは」と言われたとします。
イメージとしては
難聴になって1年経過した方は「こんにちは」と聞こえます。
難聴になって3年経過した方は「こん○ちは」と聞こえます。
難聴になって5年経過した方は「こん○○は」と聞こえます。
あくまでもイメージであり、厳密には個人差や言葉の親和性にもよりますが、難聴になってから補聴器を付けるまでの期間が長期になればなるほど特に子音が聞こえなくなっていきます。「こんにちは」などの短い単語であればある程度分かるかもしれませんが、長文になればなるほど分からなくなります。さらに早口やモゴモゴとした話し方は余計に分からなくなっていきます。
他の部位に例えるならば、若い頃は走ることができたが、高齢になり走れなくなったとします。ではこの方にオリンピックの陸上選手と同じ靴を履いてもらうと走れるようになるでしょうか?
この例えに当てはめると、
走れなくなった人→難聴者
陸上選手の靴→補聴器
です。
道具ではどうすることもできないのです。


補聴器屋の対応

「言葉が分からない」とお客様から言われた際に補聴器屋としての本音は
「どうすることもできない」
です。(裸耳で語音明瞭度が低い方の語音明瞭度が改善するような調整方法をご存知の方はぜひご教授ください)

しかし高価な補聴器を買って頂いてそんなことを言う訳にもいきません。
なので補聴器屋は音の調整を行います。解決する見込みは薄いですが、「どうすることもできない」と言ってお客様の機嫌を損ねるぐらいなら、音の調整を行います。
しかし大抵の場合言葉(早口・モゴモゴ)が分かるようにはなりません。
その後は販売店によっては甘い言葉でより高性能・高価な補聴器に変えるように勧めてきます。しかしそれでも解決はしないでしょう。仮に読者の方で「言葉が分からない」と訴えた際に高性能の補聴器へ買い替えを勧められた際はすぐに店を変えましょう。
「それはどうしようもないですね」と言ってくれる店のほうが正直で誠実です。

一番の解決策

「言葉が分からない」という補聴器装用者に対する一番の解決策は、周囲の人たちの協力です。
協力とは補聴器装用者に対して極力ゆっくり、ハッキリ話しかけることです。大きい声を出す必要はありません。それは補聴器の役割です。
ゆっくり、はっきりと話すようにしましょう。それが一番の解決策です。
大きい声でゆっくり、はっきり話さないと伝わらないという場合は販売店に行き調整を依頼してください。調整することで少なくとも大きい声を出す必要は無くせます。

最後に

近年AI機能を搭載した補聴器や、外国語を翻訳してくれるような補聴器が開発されてきています。ですが今の技術でも早口やモゴモゴとした話し方を分かるように変換してくれる機能はありません。技術が進歩し、早口やモゴモゴとした話し方をされてもゆっくりハッキリと変換してくれるような補聴器が開発されることを願います。



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