コロナ禍就活生に知ってほしい、履修データで自己分析する方法
こんにちは、田島彩名です。突然ですが皆さん、大学の勉強、頑張ってますか?(既卒の方は頑張りましたか?)
日本の大学はまさに社会に出るまでの最後の楽園。サークル!バイト!飲み会!恋!……それが大学のメインだったのは今は昔。最近の学生さんたちは、就活の「自己分析」として大学での履修履歴を利用するそうです。
そんな話を噂には聞いていたのですが、お恥ずかしながら実情を知らなかった私。これは人事として由々しき事態です。今日は、最新の新卒就活事情を知るべく、株式会社履修データセンターの辻さんにお話を伺ってきました。
質問1:コロナ禍での新卒の就活ってどうなってますか?
田島
「(履修データセンターか……すごいお硬い人出てきたらどうしよう……)」
辻さん
「こんにちは!よろしくおねがいします!(関西弁)」
辻 太一朗さん
1984年㈱リクルート入社。採用担当として10000人以上の学生を面接。 1999年独立後採用の専門家として活躍。著書も多数出版。 2011年より大学教育と採用活動のねじれをなくす活動を開始。NPO法人DSSを設立し調査・啓蒙活動を実践しつつ、2015年には社会的な「履修データ」の活用を推進するために株式会社大学成績センター(現在の㈱履修データセンター)を設立し現在に至る。写真左。
田島
「履修データセンターさんって、具体的にはどんなことをしているんですか?」
辻さん
「履修データセンターは履修履歴の社会的な活用推進することで、個人にとって学ぶことの意義を高めることを目的にしています。そのために履修データを公共財と考え、社会的な共用を進める公益目的の事業、その基盤となる個人の履修データを個人の意思で送信する収益事業を運営しています」
田島
「なるほど……(難しい)。あとでぜひデータの活用方法など尾をお伺いしたいのですが……まず今日は学生さんの、大学の履修履歴を使った最新の就活について教えてください!」
辻さん
「はい、よろしくおねがいします!まず、2020年からコロナの影響で新卒の就活市場がどう変化したかはご存知ですか?」
田島
「……大変になった……んですよね……?(専門が中途採用領域なのであんまり知らないなんて言えない……)」
辻さん
「そうなんです。特に22卒生は大変ですね。去年の3月からコロナで学生活動が一切ストップしてしまって。3年生の時期って、いわゆる”ガクチカ”エピソードが生まれやすいタイミングなんです。ただ、その時期に殆どの活動が止まってしまったので、語れるエピソードが全然無いんですよね」
田島
「確かに……サークルの幹部とか、バイトの環境が解ってきてちょっとリーダー任されたりとかって3年生くらいからですもんね」
辻さん
「よく言われる就活でのエピソードって、トラブルを把握して解決したプロセスを語ることが多いじゃないですか。エントリーシートでも面接でも、みんな聞かれます。だから、その課題や問題に向き合って解決したストーリーを話さなきゃ、という固定観念があるんですよね。コロナによる就活への影響として一番学生への負担が大きいのは、この”語れることがない”問題だと思います」
【Check!】
・コロナ禍で、“ガクチカ”エピソードを作るための機会が減っている
・必ずしも、課題→試行錯誤→解決のストーリーだけが自己PRになるわけではない!
質問2:就活のエピソードトークってそもそも何のためにあるの?
田島
「そもそも、なんでそういうエピソード、ストーリーをみんなが語るようになったんでしょうか?」
辻さん
「面接の30分や一時間でその人の本質や行動特性を見るのって基本的には不可能なんですよね。たとえば、努力し続ける・実行力がある・ストレス耐性が高い……といった特性は、長期的に見なきゃわからない。だからエピソードを語らせることで、その特性を見ようとしているんです」
田島
「人事の世界だと、それを”コンピテンシー型面接”っていうんですよね。コンピテンシーっていうのは行動特性のことです。今までの経験を深堀りしていくことで、困難に対してどのようなスタンスで臨むのかを見ていくんですが……それを判断するためのエピソードすらコロナでなくなってしまった、となると、人事も学生さんも困りますよね……」
辻さん
「いわゆる就活でうまくいく学生って、とにかく面接で自分を見せる力が高いんですよ。コロナになってからオンラインの面接・面談が増えて、前よりもさらにコミュニケーションは難しくなりました」
田島
「確かに……正直、Zoomだと人柄って見えにくいな、って思います。でもその中でしっかりと魅力を伝えてくる人ってやっぱりいるんですよね」
辻さん
「人事も人間ですから、目から見える情報ってすごく大切なんですよ。喋りぶりとか、見た目とか。その喋っている雰囲気や風貌と内容が合致しないと、”ほんまかなあ”と思うわけです。要するにそれって、自己分析ができていないんですよね」
田島
「確かに……見るからに堅実そうでしっかりものっぽい人に”人と違う発想をします”って言われても確かに”ほんまかいな”っておもいますよね。でもそうは言っても、伝える力って一朝一夕では育たないじゃないですか。喋りが美味いかどうかも、結構本人のそれまでの得意不得意が影響してしまうような……」
辻さん
「伝える力によって就活の明暗はかなり分かれてしまうのも事実です。でも、感情だけではなく理屈を通してどの様に伝えていくかに関しては面接対策としてやっていくことができます。そのための鍵になるのは自己分析です」
田島
「なるほど……。でも自己分析ってなかなか難しくないですか? 何が強みになるのかって、自分だとわかりにくいですよね」
辻さん
「例えば、この前私が指導した学生さん。お笑いをやっていたんです。お笑いをやっていた、というそのエピソードが強烈だから、そこをとっかかりに話そうとしていました。でも、重要なのはそこではないんですよ。よくよく話を聞いてみると、”あがり症を治すためにお笑いをはじめて、そのうちに楽しくなってきた”と言っていたんです」
田島
「おお……! 人事が知りたいのはそっちですね!」
辻さん
「自分の弱点を克服するために面白い手段を取れる、というのが本質的な魅力なのに、ついついエピソードに引っ張られてお笑いの話をしてしまって、魅力が伝わらないんですよね」
田島
「(動画を見て)……めちゃくちゃ良くなってる!後半のエピソードトークをされたらめちゃくちゃ興味わきます!」
辻さん
「これ、就活生が陥りやすいミスなんですよ。話しやすいエピソードから入ってしまって、本質的な魅力を伝えられず散らかってしまう。でも、コロナの影響で、その”語れるエピソード”すらなくなってしまっています。そこで私達が勧めているのが、大学の履修履歴から自己分析をしていく、という方法です」
田島
「ぜひそのお話を聞きたかったんです!」
【Check!】
・面接でエピソードを話すのは、その人の行動特性を見るため
・エピソードが先行しすぎると、本当の魅力が伝わらないことも……
・自分の魅力をしっかり分析してから、それを補強するエピソードを語ることが大切!
質問3:大学の履修履歴って本当にPRになるんですか?
辻さん
「ところで田島さんは学生時代、勉強って頑張りましたか?」
田島
「……自分で言うのもなんですが、めちゃくちゃ頑張ってたと思います。ほとんどすべての科目でAかB、GPAも3.5以上はキープしてました。でも、正直それって就活にいきるのかって言われたら……私の場合は全く実感がわかないですね……」
辻さん
「ちなみにですが、授業ってどうやって選んでましたか?」
田島
「まずは必修科目を詰め込んで、ほかの選択科目に関しては、シンプルに好きなものや役立ちそうなものをひたすらやってましたね。たとえば、Drama for Language Learning(語学習得法としての演劇)という授業があったのですが、私は即興で英語をしゃべるのが苦手だったのと、第二言語での感情表現が苦手だったので克服のために履修しました」
辻さん
「そういう履修の選択や傾向を分析することは、すごいPRになるんですよ」
田島
「詳しく教えて下さい!」
辻さん
「大学4年間は遊びまくる! ……というのは、実はもう過去の常識なんです。調査によると、大学生の85%は8割以上の授業にちゃんと出席しています。そうなると、学生時代の殆どの時間を大学での授業に使っていることになるんですよね。その、長い時間を費やした履修から自分の傾向を分析していく……というのは当たり前なんです。どんな意図を持っていたっけ、とか、どんなふうに授業を受けていたっけ、とか。試験やレポートでの対策の特徴は? とか、履修から振り返ると解ってくるんですよね」
田島
「待ってください! お恥ずかしながら楽単(取得が楽な単位)ばっかり取ろうとしていた私のような学生はどうなるんでしょうか!」
辻さん
「今はそういう学生ばかりじゃないですね」
田島
「うっ……」
辻さん
「例えばですが、楽な単位を狙って取っている学生は、学業意外にやりたいことがあったりします。それ以外の時間で、精一杯自分のやりたいことに打ち込んでいるならそれがPRになります。一方で、ちゃんと学業主疎かにせず情報収集も怠らなかったとあれば……」
田島
「確かにPRになりますね!」
辻さん
「そもそも大学生は卒業単位は取らないといけないので、必ず数十に及ぶ授業を選択します。そうなると、どうせ取るなら自分が興味のあるものや役に立ちそうな科目を取ってくる。そこに本人の意図や考えが出てくるんですよね」
【Check!】
・大学生にとって履修は4年間の殆どの時間を費やした大切な分析材料
・履修から見える自分の興味や特性はPRとして使っていける!
質問4:履修でPRしたい! ……何から始めたら良いですか?
田島
「せっかくなので、自分の履修からどうやってPRに結びつけるのか見せてください!」
辻さん
「じゃあ、田島さんも学生時代を思い出してやってみましょう。手順としてはすごく単純です。このフォーマットに従って、履修の意図と実際の振り返りをしていき、特徴を整理しましょう」
▼フォーマットはこちら
PDF
http://dscenter.co.jp/download/risyuupr_format.pdf
パワーポイント
http://dscenter.co.jp/download/risyuupr_format.pptx
田島
「ありがとうございます! 記入してみました。私が在籍していた国際教養大学は、全部授業が英語で、ディスカッション・プレゼン・レポート、どれもすごく多かったんですよね。当時からライター業もやっていたので、上手くバランスを取るために色々工夫したなあ……」
▼実際につくってみたメモ
田島
「こうしてみると、結構私成績に執着してたんですね……分析するまで気付かなかったです。自分を楽単ばっかりとってるしょうもない学生だと思っていたんですが、意外と準備もしてた……」
辻さん
「これができたら、次は長所の整理をしていきます」
田島
「なるほど……これもやってみました。履修の履歴からまとめると、必ず具体的なエピソードが出てくるので武器になりそうですね」
田島
「さっきも出ましたが、これってコンピテンシーですね。まさに。自分の長所はかならずそれを証明する行動とセットで考えるべきです。面白い!」
辻さん
「ちなみに、自分の履修結果を登録して弊社に送ってもらえれば、大学のGPA平均値や相対的に優秀だった科目が解る履修履歴表を提供しています。興味がある人は、ぜひこちらを参照ください。」
▼こちらから自分の履修結果の問い合わせが可能です!
http://dscenter.co.jp/student/pdf/risyuupr_offer_info.pdf
田島
「これ、絶対やったほうが良いですね。正直、私も田舎の大学で、勉強するか仕事するかお酒飲むかしかやってなくて、サークルも入ってなかったのでガクチカってなかったんですよ。でも、履修から自分の傾向とか、何を大切にしてるのかって見えてくるんですね!」
辻さん
「履修をPRに使っていくことのよさは大きく分けて二つあります。1つ目は、さっきも話した“長い時間を費やしたものから自分の分析ができるから”です」
田島
「就活ではかならず自己分析はやりますが、そもそも自分のやっている自己分析で本当に自己を分析できているのかって怪しいんですよね。辻さんのおっしゃるとおり、一つの印象的なエピソードから考え出してしまうと、本質的な自分の行動の特性は見えてきません」
辻さん
「そうですよね。もう一つの特徴は、履修データの場合は結果から俯瞰できること、です。エピソードを思い出すときって、自分が意図したものを思い出します」
田島
「そうですね、印象的なことから思い出しますし、些末なことは出てきません」
辻さん
「でも、4年間のデータの積み上げから俯瞰すれば、自分の意図と、意図していなかった結果、両方が見えてくるんです。それに、人事の人にもデータで見せることができます。“自分がAを取ってる単位は全部ディスカッション系です。ディスカッションの授業ではいつもグループをまとめていました” といえば、自分の行動特性としてリーダーシップがあることにも証拠ができますよね」
田島
「そこまでされたら人事は唸ってしまいます!(笑)」
【Check!】
・エピソードトークはそれを補強する証拠があってこそ活きてくる
・履修からみつけた自分の特性は、かならずエピソードや履修履歴の結果で頬供されている。ガクチカエピソードが無くても武器になる!
質問5:正直、大学での勉強って社会で役に立ちますか?
田島
「これ、本当によく聞かれるんですけど……正直大学での勉強って役に立たないんじゃないか、って考えている学生さんはまだまだ多いんですよね」
辻さん
「間違いなく活きます」
田島
「(言い切った……!)……でもそれは、私も実感としてあります」
辻さん
「役に立つものって、知識とスキルの両面だと思うんです。大学で学ぶのは知識だけじゃなくて、ディスカッション力や論理的思考力、短時間で深く考える力……そういうものを養っていくのが大学の授業なんですよね」
田島
「確かに……私も、大学に入るまでほとんどディスカッションなんてやったことなかったんです。でも、準備したり場数を踏んだり大失敗したり、そういうことで身についたものは知識以上に活きていますね」
辻さん
「コミュニケーション能力とか、ディスカッション能力は一朝一夕で伸びるものではないんですよね。でも4年間積み重ねれば必ず伸びていきます。加えて、大学で勉強するときに自分の興味関心に従って選び取っていくというプロセスも、絶対に役に立ちます」
田島
「頑張るに越したことはないですよね。人事をしていると、どうしようもなく魅力的な人に出会うことが結構あります。そういう人に共通するのって、自分の行動の意図をしっかりと説明することに長けていること、なんですよ」
辻さん
「そうなんですよね、本人がしっかり考えて選び、それを伝えることに価値があります」
田島
「なかなか自分の行動に意味を見出すのって意識しなきゃできないじゃないですか。でも履修にはそれが現れてくる……っていうの、すごくよく解った気がします」
辻さん
「履修から自己分析をして、企業PRに使うのがスタンダードになれば、日本の学生はもっと勉強に興味を持てるようになると思うんですよね」
田島
「結構学生時代勉強を頑張った身からすると、勉強を頑張った人がそれをしっかりPRにしていけるのってすごくいいなあって思うんですよ」
辻さん
「なかなか今の学生には、自分の選択の背景まで考える機会ってないんですよね。その最初のきっかけとして、履修を就活のPRとして応用していく。是非試してみてほしいです」
【Check!】
・大学の勉強で役に立つのは、知識だけではなくスキルも。授業を通して鍛えられたスキルは社会に出て必ず役に立ちます!
▼更に詳細は、辻さんなどの専門家がノウハウを公開しているガクチカ研究会のYoutubeチャンネルを御覧ください!
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