抽象的なキーワードを別の言葉で言い換える:会話のデザイン
学生時代の先生の質問が、今でも印象に残っています。
「さっきから"本質的ではない"って言ってるけど、"本質的"とは何?」
正直なところ、当時は質問の趣旨が理解できませんでした。
「言葉の定義を答えればいいのか?」「それならググれば分かるじゃないか」。でも、今思えば、質問の主旨は定義の話ではありませんでした。
中途半端にしか理解していないことを、人はそれっぽい単語で補い、それっぽく表現してしまう。きっと、それを見破られていたのだと。
だから、別の表現で語るよう促し、具体的に解像度を高めて思考するよう求めていたんでしょう。
こういう話、実はよくあるのではないでしょうか。
「いや、その意見はナンセンスだよ」
「ブランディングを目的に、社食をオープンします」
「その機能はUX的にイケてないですよ」
「僕はマーケティングに重点を置いています」
「デザインがきれいなWebサービスだね」
ナンセンス。ブランディング。デザイン。DX。"それっぽい"言葉は、世の中にあふれています。
そういう言葉を使う人に「ブランディングって具体的には何を指しているのでしょうか?」と聞いても、答えが出てこないことがよくあります。
もし、その単語を使わずに表現できなければ、それは抽象的にしか理解できていない証拠です。
粗い言葉では、誰にも伝わらない
「ブランディングを重視する方針だ。だから社食をオープンしたい。それを足がかりにして、新卒採用を活発化させたい。」
「ほう、そうなんですね」
一見それらしい意見ですが、「ブランディング」とは一体何なのか。その言葉を、当人が具体的に理解できていないなら、聞き手も理解できるわけがありません。
なぜなら、「理解しやすさ」は「具体性」とセットだからです。抽象的な言葉では、なにも伝わりません。
これを、別の言葉で言い換えるとどうなるでしょうか。
「社員とクライアントに会社の風土を深く理解してもらいたい。だから社食をオープンしたい。」
「それが目的なら、社食以外に方法があるのでは?」
この提案がイケているかどうかは別として、理解がグッと進むのではないでしょうか。ここまで具体化することで、ようやく主旨を理解できるのです。
そして、その正しい理解が、「社食以外に方法があるのでは?」のような意見を促すのです。
あなたが知らず知らずのうちに使っているあいまいな言葉が、いつの間にか相手の意見を奪っているかもしれません。
それっぽい言葉で思考停止しない
それっぽい言葉は便利ですが、使い続けると思考停止してしまいます。当人が深く理解していない言葉を聞いたところで、その相手が理解できるわけもありません。
もしその単語を使わずに表現できないことがあれば、それは具体化すべき余地があることのサインです。
理解の浅い言葉を使うときは、別の言葉に言い換えて伝えることを試みましょう。
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