腰部・骨盤帯 第17回 《仙腸関節障害 治療編》
前回からの続きです。
仙腸関節に加わっている、ストレスの型が決まれば、治療方針が決まってきます。
では、ニューテーションのストレスが仙腸関節痛になっている患者さんの治療方針から述べます。
ニューテーション型の人は、ハムストリングスの硬化があるため、その柔軟性を出していきます。
前屈位でハムストリングスのストレッチをかけると、余計にニューテーションストレスがかかり疼痛が増強するので、座位で体幹を固定した状態でストレッチをします。
ハムストリングスの柔軟性を出すのと同時に、腹横筋と大殿筋内側部を強化して、日常的に、仙骨がニューテーションしなよう、仙腸関節の固定性も強化していきます。
仙腸関節の固定性には
腹横筋と大殿筋内側部が関わっているため、両方の筋を一緒に強化する方法として、Draw-inしながらピラティスエクササイズのPelvic Curlを用います。
両大腿の間にボールや枕をはさむと、内転筋も入ります。
内転筋-大殿筋内側部-腹横筋はインナーユニットとしてシナジー(共同収縮)関係にあるため、内転筋も働かせるとより効果的です。
次に、カウンターニューテーションのストレスが仙腸関節痛になっている患者さんの治療方針を述べます。
カウンターニューテーション型の人は、大腿筋膜張筋や大腿直筋の硬化があるため、ストレッチやリリースで柔軟性を出していきます。
それと同時に、先ほどと同じように仙腸関節の固定性も強化していきます。
最後に、仙腸関節の過可動性(不安定性)で仙腸関節痛がでている人は、
臨床的には、かなり体幹が弱い人が多いので、十分に強化していきましょう。Pelvic Curl以外にも、体幹メニューを複数取り組むことも必要です。
また、股関節周囲の筋が硬化していれば、柔軟性を出していきましょう。
腰痛や仙腸関節痛の治療=『身体づくり(体幹を強化し、股関節の柔軟性を出す)』となるため、時間がかかります。
そのため。日常的に疼痛をだしている状況を聴取し、ADL指導にて仙腸関節へのストレスを軽減させ、炎症を抑え込むことも重要です。
その他にも、厳密には仙腸関節痛ではないのですが、仙腸関節の拘縮が腰痛に繋がっているケースもあります。
骨盤後傾位の高齢者に多いですが、
拘縮により、仙腸関節の緩衝作用が低下し、床反力がダイレクトに脊柱起立筋に入るため、腰部痛を起こしている患者さんもいます。
AKA-博田法-の仙腸関節の離開で、腰痛が軽減する人を見かけますが、私はこの理屈だと思っています。
仙腸関節の拘縮がある人は、
長後仙腸靭帯周囲に癒着(滑走障害)があり、かつ
仙腸関節の可動性が乏しいことが多いです。
治療としては、
長後仙腸靭帯周囲のリリースをかけてから、仙腸関節のモビライゼーションにて可動性をだしていきます。
注意していただきたいのは、高齢者では、一気に仙腸関節の可動性を出しすぎると歩行が不安定になります。
そのため、治療後は、介助下や支持物を利用して、片側立位訓練をするなどして、仙腸関節の安定性をだすための訓練をする必要があります。
※お尻の穴を締めるようにして、大殿筋内側部を促通させ、仙腸関節の安定性を得る。
そして、転倒に気を付け、近位見守りから歩行をするようにしましょう。
いかがでしたでしょうか。以上が、私が仙腸関節障害のに対して行っていることになります。
図でまとめますと以下のようになります。
※TLFは胸腰筋膜の略です。
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