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腰部・骨盤帯 第2回 《運動学的異常 前編》

本日は、前回のスライドの続きから始めます。


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前回、腰痛には、腰部の固定性と股関節の柔軟性が関係しているいうエビデンスをスライドで述べさせてもらいました。


まずは腰痛を引き起こす動作を見ていきましょう。

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※ここでの『過剰』とは、可動域的に大きい頻度が多い時間が長いということを意味します

過剰な屈曲負荷・・・腰椎椎間板ヘルニア、筋筋膜性腰痛

過剰な伸展負荷・・・筋筋膜性腰痛、椎間関節性腰痛、脊柱管狭窄症

過剰な回旋負荷・・・筋筋膜性腰痛、椎間関節性腰痛

日常的に腰椎がニュートラルな位置を保つ機会が少ないと、上記のような症状が出現しやすくなります。


では、過剰な屈曲負荷が起こりやすい人の動作を見てみましょう。


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ハムストリングスが硬く、腰部の固定性が低下している人は、前屈動作にて腰椎が過剰に屈曲しやすくなります。


ちなみに『腰椎骨盤リズム』という概念がありますが、

"膝を伸ばしたまま手が地面に着くように前屈するというありふれた動作を考えてみよう.健常成人でのこの運動は,腰椎屈曲約 40° とほぼ同時に股関節 での約70°屈曲を行う組み合わせであるという測定結果が出ている"(筋骨格系のキネシオロジー,Donald A.Neumann (著),医歯薬出版,2012より引用)


前屈動作のさいに、腰椎が40°屈曲することが腰部にとって良いとは、私は思いません。前屈のさい、腰椎の屈曲角度は少なければ少ないほうが良いと思っています。


下記のように腰椎骨盤リズムを否定されている方もおられます。

"多くの教科書に記載されているような,脊椎と骨盤の動きを別個に分離した 腰椎骨盤リズムが有益だという考えは,あくまで臨床的な神話のようであり,脊椎と骨盤の動きを定量化した結果ではないのである"(Stuart McGill:腰痛 ─エビデンスに基づく予防とリハビリテーション-原著第3版,NAP社,2017より引用)



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腰部に過剰な負荷をかけるスポーツであるウエイトリフティングの選手の動きですが、腰椎はニュートラルを保ったままです。

"オリンピックレベルのウエイトリフティング選手は正反対の動きをしようとしており,腰椎を中間位に近いところで固定し,回転はほぼすべてを股関節で行っている"(Stuart McGill:腰痛 ─エビデンスに基づく予防とリハビリテーション-原著第3版,NAP社,2017より引用)


では腰椎が屈曲位になると、重量物を持ち上げる際にどういったデメリットがあるのでしょうか?

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エコーでもわかるように、屈曲位では多裂筋の作用線が腰椎に対して平行になるため、腰椎の剪断力に抵抗できなくなります。


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また筋電図研究からも、腰椎屈曲位では多裂筋と最長筋の筋活動が低下することがわかっています。

"腰椎の生理的前弯を保った良肢位での静止座位では,...最長筋・多裂筋が主に活動し,長肋筋はほとんど活動しない.しかし腰椎が屈曲した座位では,最長筋・多裂筋の活動は低下し長肋筋の活動比率が大きくなる."(鈴木俊明:体幹と骨盤の評価と運動療法,運動と医学の出版社.2018より引用)


そのため、特に患者さんの移乗介助など、重たいものを持ち上げるときに、腰椎はニュートラスを保たなければパフォーマンス的にも低下し、腰部への負荷が増大します。

その結果、筋筋膜性腰痛やヘルニアになる可能性がグッと高まります。


前屈ではハムストリングスが硬いとどうしても腰椎が屈曲してしまいます。そのまま床のものを持ち上げると腰痛に繋がります。

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またしゃがみ込みの場合は、腰椎ニュートラルを保持するためにはハムストリングスに加えて、殿筋や梨状筋の柔軟性が必要になります。

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このように、腰椎のニュートラルを保つためには、股関節の柔軟性が非常に重要です。

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