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肩関節 第3回 《関節性拘縮 ADL指導》

前回からの続きです。


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関節包性拘縮は器質的な障害のため、徒手療法では改善が不可能です。

1年以上の経過で徐々に改善してきますので、時間経過で様子をみるしかありません。(もしくは肩関節授動術をすすめるか)

その間、患者さんは、肩甲上腕関節のROM制限がある状態で日常生活を過ごさなくてはなりません。


そのような状態では、

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日常的に、無理に肩甲骨で挙上動作を代償することにより、慢性的な僧帽筋上部,肩甲挙筋の過緊張や滑走障害に繋がります(いわゆる肩こり)。


関節包性拘縮でクリニックに来られた患者さんは、肩甲上腕リズムが破綻した運動パターンが癖づいてます。

そのため、関節包が緩んでくるまでGHのROM制限は時間経過で様子をみるしかないので、

できるだけ、肩こりの症状で困らないによう、ADL指導を行います。


まず、患者さんに今現在の肩甲上腕関節(GH)の可動範囲を自覚してもらいます。


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自覚してもらう手順としては、まず鏡越しに私が患者さんの肩甲骨を手で抑え、患者さんに『私の手が動かない範囲で肩を動かしてください』と言います。



しかし、最初は何度も肩甲骨から挙上するパターンが現れますので、鏡越しに、『肩甲骨は動かさずに肩甲上腕関節のみ動かすように』、何度も練習しましょう。

そして、運動パターンが良くなってきたら、患者さん自身が、自分の手で肩甲骨を触り、肩甲骨が動かない範囲で、肩甲上腕関節の動きが出せるように自主トレ指導します。

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臨床では、関節包性拘縮の患者さんは、1st外旋が15°、外転が45°~50°程度で来られる方が多いです。

この可動域では、『胸の高さ以上に手は上げないようにしてください』と指導しています。

胸の高さ以上に手を上げようとすると肩甲骨の挙上が入り、肩こりの症状に繋がってしまいます。


関節包性拘縮の患者さんにとって、胸の高さ以上に手を上げ続けることは、健常者では頭上で棚卸作業をし続けているのと同程度の肩甲骨挙上が入ってきます。


これでは、すぐに僧帽筋上部と肩甲挙筋がガチガチに張ってきてしまいます。



指導したとしても、やはりGHの制限があるため、僧帽筋上部や肩甲挙筋などでの肩甲骨の代償動作は日常的に入ってくるため、リハビリに来られた際は、上記に対してリリースをかける必要はあります。


しかし、関節包に関しては、時間経過か授動術しか選択肢がないため、根気よくサポートすることが重要です。



ちなみに時間経過で改善しない関節包性拘縮もあります

時間経過で改善してくる関節包性拘縮は、原発性凍結肩ともいわれ、なんの要因もなく発症した凍結肩を指します。

それに対して、明らかな要因があって生じた関節包性拘縮は、続発性凍結肩ともいわれ、改善が見込めません。

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私は、腱板断裂修復術後に関節包性拘縮が生じた患者さんを担当したことがありますが、その方のROMは改善しませんでした。


このように、関節包性拘縮が生じた要因をはっきり問診で評価することも非常に重要です。

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