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腰部・骨盤帯 第4回 《体幹機能 前編》

※SafariなどWebからのアクセスで画像の拡大ができます。スライドが見にくい方は、Webからのアクセスをお勧めします。


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第一回の記事にて腰痛になりにくい身体とは腰部の固定性があるということを述べさせていただきました。


今回より三部作にて、その腰部の固定性(体幹機能)についてお話します。


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腰部を固定化する筋収縮の方法としてDraw-inBracingという二つの方法があります。ほかにもIAP Braceやバルサルバなどありますが、ここでは割愛します。


まずはDraw-inについて、

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『臍を背中の方に向けて引きこむ』という運動ですが、

臨床上よくある間違った動きは、横隔膜を挙上させ胸郭が拡大させながらお臍を引くという動きです。

Draw-inをしたことがない人や、高齢者では、腹横筋が弱化機能低下しており、臍が引けても数ミリ程度のため、少ない動きで良いので代償がでないようにすることが大切です。


次にBracingについて

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臍を引き込まずに、腹部周囲に等尺性に力を入れるという動きですが、

臨床上よくある間違った動きは、横隔膜を下降させ下腹部を膨らませるという動きです。

おなかに力をいれるという単純な動作のため、BracingはDraw-inよりはやりやすいです。

高齢者の場合は、Bracingは血圧が上がりやすくなるので注意がいります。



では、このDraw-inとBracingでは、どちらの方が腰を守るのには良い方法なのでしょうか?


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では、Draw-inとBracingのそれぞれのメリットを見ていきましょう。


まずはDraw-inのメリットから


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Draw-inのメリットとしては、腹横筋という深層にある筋を使用し、そして、深層の筋は原始的なメカニズムでコントロールされている可能性があります。

そのため、Draw-inは獲得してしまえば無意識下でコントロールできる可能性があります。



次はBracingのメリット


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腹横筋以外にも内腹斜筋,外腹斜筋も収縮させるため、安定性はDraw-inに勝ります。



では、次はデメリットをみていきます。


Draw-inのデメリットは


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さきほど述べたように、繰り返しになりますが、安定性ではBracingより劣るということですね。


Bracingのデメリット

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安定性(剛性)が高い分、歩行などの運動時に胸郭と骨盤の柔軟な動きが制限される可能性があります。結果、エネルギー効率が悪くなる可能性がでてきます。


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Bracingは、動揺や負荷量を予測できない場合に適正であると述べている人もいます。


簡単にまとめると

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Draw-inのメリットは、無意識化でのコントロールが可能

Bracingのメリットは、安定性(剛性)が高い

ということになります。


つまりDraw-in、Bracingのどちらが優れているというわけではなく、それぞれにメリット、デメリットがあり、適材適所で使い分けるということが大事だと思われます。

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たとえば日常のADL動作などや非接触型スポーツなどでは、外力がない状態で腰部を固定するだけならDraw-inで十分だと思いますし、日常生活では、無意識で過ごしている時間帯が多いと思うため、無意識下でもできるDraw-inが適していると思われます。

重労働や接触型スポーツなど外力がある状態では、Draw-inだけで腰部の安定性を確保するのは不十分だと思われ、Bracingが適していると思われます。


引用

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