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新型コロナウイルス感染症に関する政令改正の概要

指定感染症とは

新型コロナウイルス感染症は、感染症法で「指定感染症」に指定されています。指定感染症とは、四類以下の感染症法上の感染症、または感染症に位置付けられていない感染症について、時限的に一類〜三類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症に対して行う措置を準用することができるようにするための感染症法上のカテゴリーです。

「指定感染症」とは、既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)であって、第三章から第七章までの規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。(感染症法第6条)

一類〜三類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症は、感染症患者に対して入院や就業制限など、行動の制限を伴う措置をかけることができます。そのため、そのような措置を行う感染症は、法律で位置付けるのが大原則です。つまり、国会審議を経て法改正を行って位置付ける必要があるということです。しかし、それは通常ものすごく時間がかかるプロセスであるため、新しく発生した感染症に対する対策として間に合わないことも危惧されます。そのため、(閣議決定で決められる)政令で時限的に指定して措置を行えるようにしています。措置は、一類〜三類感染症に対して行える措置(入院勧告など)から、必要な措置を選んで(準用して)行えるようにします。

新型コロナウイルス感染症については、段階的に取れる措置が追加されてきました。初めて指定されたのは、1月28日のことです。

ちょと複雑ですが、
1/28:政令公布←患者・疑似症患者に対する入院措置
1/31:1/28の政令を改正する政令の公布
   ←ここで無症状病原体保有者に対する措置を追加

筆者注(8/25):無症状病原体保有者に対する措置が追加されたのは2/14(施行)でした。謹んでお詫び申し上げます。

2/1:施行
となりました。

これにより、新型コロナ患者に対し、感染症法上で公費による入院措置を、患者・疑似症患者・無症状病原体保有者に対して行えるようになりました。

注)感染症法上では、症状があり、かつ病原体が検出されている人を「患者」と見做して措置をとることが原則です。一方で、病原体はまだ検出されていないけども症状がある人を「疑似症患者」、病原体は検出されているけども症状がない人を「無症状病原体保有者」と呼び、これらの人に対しても措置が取れる場合があります。

3月26日に追加された措置

さて、昨日3/26に、新型コロナウイルス感染症が「まん延のおそれが高い」として、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき対策本部が設置されたところですが、併せて、新型コロナに対して以下の感染症法上の措置が追加されました。

3月26日公布・3月27日施行の政令により新型コロナに対して感染症法上追加された措置 (Link: 通知
第31条 生活用水の使用制限
第32条 建物に係る措置(建物の立ち入り制限等)
第33条 交通の制限または遮断
第44条の2 実施する措置等に関する情報の公表
第44条の3  感染を防止するための協力(健康状態の報告、外出自粛等の要請)
第44条の5  都道府県による経過報告

第31条 生活用水の使用制限
第32条 建物に係る措置

第31条・32条は、病原体で汚染されている生活用水を制限したり、汚染されている建物の立ち入り制限等を行える、というものです。第32条はさらに、建物の封鎖や焼却も想定されていますが、消毒は難しくない新型コロナでここまで行うことは考えにくいです。第33条は、病原体で汚染されている、あるいは汚染された疑いのある場所の交通の制限や遮断を時限的(72時間まで)行える、というものです。逐条解説によれば、ノミやネズミが媒介するペスト等の患者がある地域に発生したような場合を想定しているようです。第32/33条は、これまで一類感染症に対してのみ想定されていた措置でした。

第44条の3  感染を防止するための協力

第44条の3は、元々新型インフルエンザ等感染症に対してのみ規定されていた措置です。先にも述べた通り、感染症法の措置は、症状があり病原体が検出されている(あるいは少なくともいずれか)人に対して行うのが大原則です。しかし、インフルエンザ(そして新型コロナウイルス 感染症も)発症する前から感染性があることが知られています。例えば、陽性者の家族などの濃厚接触者は、症状がなく病原体が検出されていなくても、すでに感染性があるようなリスクが高いと考えられます。そのような方から、さらなる感染を引き起こす可能性を低減するため、外出の自粛と健康状態の報告を求めることができます。罰則等はありませんが、一定の努力義務が課せられています。なお、このような対策の実効性を保つため、都道府県知事には食事や物品の提供などを行う努力義務があります(実費は当該者から徴収可能)。

四種病原体への追加

また、今回の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が、四種病原体に追加されています。これは病原体の管理に関する規定です。これにより、本ウイルスを所持する検査室などは、所持するにあたって許可や届け出は必要ありませんが、基準を遵守することが求められます。