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新型コロナ対策:緊急事態宣言と緊急事態措置①まん延の防止に関する措置

第3章が、特措法の本丸とも言える部分です。対象疾患の患者が国内で発生した時に、全国的かつ急速にまん延により国民生活及び国民経済に重大な影響を及ぼすおそれがあると認められる事態を「新型インフルエンザ等緊急事態」として、政府対策本部長(総理)が「緊急事態宣言」を公示する、というものです。まずは、緊急事態宣言が行われる条件、そして緊急事態措置のうち「まん延の防止に関する措置」を解説します。

緊急事態宣言が行われる状況

政府の行動計画には、緊急事態宣言が行われる状況として「緊急事態措置を講じなければ医療提供の限界を超えてしまい、国民の生命・健康を保護できず、社会混乱を招くおそれが生じる事態であることを示すものである」と記しています。感染拡大を少しでも防ぎ、あるいは遅らせて、適切な医療を受けられない状態になったり、社会が混乱に陥るのを防ぐための社会への重要な警報といえます。

緊急事態宣言が行われる条件

緊急事態宣言が行われる際には以下の3条件が満たされる必要があります。

緊急事態宣言の3つの要件
(1)国内で発生したこと
(2)肺炎、多臓器不全または脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度が、(季節性)インフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められること
(3)感染経路が特定できない場合、又は感染患者等が公衆にまん延させるおそれがある行動をとっていた場合その他の新型インフルエンザ等の感染が拡大していると疑うに足りる正当な理由のある場合

今回、今後どのタイミングで緊急事態宣言が行われるかわかりませんが、(3)をどのように解釈するかがポイントとなるでしょう。

緊急事態措置とは

緊急事態が宣言されると、その対象地域では、都道府県知事が「新型インフルエンザ等緊急事態措置」と呼ばれる、この章に記載された、より強力で実効性のある対策を取ることができるようになります。緊急事態では、政府対策本部長は都道府県知事等に対し、都道府県対策本部長は市町村庁等に対し、必要な指示をすることできる指示権も規定されています。また、全国の市町村にも対策本部が設置されます。緊急事態措置を実施するために必要があれば、都道府県間、市町村間で応援を求めることができる、という規定もあります。このような「横の応援」も緊急事態ならではです。

緊急事態宣言が行われると、政府対策本部長(総理)が、実施すべき期間と区域を定めます。また、基本的対処方針を変更し、緊急事態措置の実施に関する重要事項を定めていきます。これに基づいて、対象となる都道府県の知事や市町村の長が緊急事態措置を実施します。

この緊急事態措置には以下の3種類があります。まず、「まん延の防止に関する措置」から説明します。

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1. まん延の防止に関する措置

まん延の防止に関する措置は第45条と第46条に規定されています。第46条は住民への予防接種の話ですが、新型コロナに対してはワクチンがないので今回は割愛します。

第45条は「感染を防止するための協力要請等」です。ここでは、2種類の要請があります。

第45条 感染を防止するための協力要請等
1  不要不急の外出自粛の要請
2 学校、興行場等の使用制限等の要請等

不要不急の外出自粛等の要請とは、「住民に対し、期間と区域を定めて、生活の維持に必要な場合を除きみだりに外出しないことその他の感染防止に必要な協力を要請することができる。」というものです。具体的には、医療機関への通院、食料の買い出し、職場への出勤などが「生活の維持に必要なもの」として想定されています。期間は、インフルエンザの潜伏期間や発症から治療までの期間を想定して1〜2週間程度と想定されていましたが、新型コロナについては、もう少し長く取られる可能性があります。期間と地域は、都道府県知事が地域の状況を踏まえて決定します。なお、罰則はありませんが、先にも述べたように、国民は新型インフルエンザ等対策に協力する努力義務があります。

2. 学校、興行場等の使用制限等の要請等

学校、興行場等の使用制限等の要請等とは、「学校、社会福祉施設、興行場等多数の者が利用する施設の管理者又はそれらの施設を使用して催物を開催する者に対し、施設の使用の制限等の措置を講ずるよう要請することができる」というものです。さらに、正当な理由がないのに要請に応じないときは、新型インフルエンザ等のまん延防止等のために特に必要があると認める場合に限り、施設の使用の制限等を指示することができます。このような要請・指示を行ったときは、その旨を公表することとしています。

先に述べた、都道府県対策本部長の権限(第24条)で行う協力の要請と異なるのは、

・緊急事態宣言下で、地域や場所を具体的に指定して要請できること
・要請に応じない場合は指示ができること
・要請・指示を行なった場合はその旨を公表すること

という点です。なお、従わなかった場合の罰則はありませんが、使用制限に対しての公的な補償も規定されていません。

施設使用制限の考え方

使用制限を行う施設は以下の3通りに分けられています。

施設使用制限の運用
区分1:感染リスクが高い施設 →使用制限も含め最優先で対応が必要
区分2:社会生活を維持する上で必要な施設→使用制限以外の措置
区分3:運用上柔軟に対応すべき施設→できる限り使用制限以外の措置

区分1は学校、保育所、介護老人保健施設などです。これらは原則として使用制限等の要請を行います。区分2は、基本的に使用制限以外の措置(後述)を行う施設です。病院や飲食関係、銀行、保健所などがこれにあたります。

区分3ですが、基本的には、先にも述べた特措法第24条に基づく任意の協力要請で、感染対策等の実施を要請します。それでも応じない施設が出てきたときに、特措法の第45条の施設の使用制限の要請・公表を行うことになります。公衆衛生上の問題が生じていると判断された施設(1,000平米超)に対してのみ、限定的に要請を個別に行いその旨が公表されます。対象外となる1,000平米以下の施設については、任意の協力要請により対応しますが、特に必要がある場合には厚労大臣が定めて要請を行えるようになります

使用制限以外の措置

では、「使用制限以外の措置」とはなんでしょうか。以下のような、いわゆる感染管理の措置を行うことが想定されています。

施設使用制限・停止以外の措置(政令第12条)
・ 感染の防止のための入場者の整理
・ 発熱などの症状がある人の入場禁止
・ 消毒液や手洗いの場所の設置による手指消毒の徹底 
・ 施設の消毒
・ 咳エチケットの徹底
・ マスクの着用等の感染防止策の周知
・ その他必要な措置として厚労大臣が定めて公示するもの