「もっと早い馬が欲しい」
「アートメイク」という言葉をご存知でしょうか。
女性の方は聞いたことがあるかもしれませんが、「眉毛やリップに、数年間落ちない色素を注入することで、化粧をせずともメイクアップされた状態を維持できる技術」のことです。
これは、ある種「落ちない化粧が欲しい」という顧客の声に応えたサービスということもできるかもしれません。
ここまでであの話を思い出した方、鋭いです。
「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは「もっと速い馬が欲しい」と答えていただろう。」という、自動車を普及させたヘンリーフォードの言葉です。
車が発明される前は、
「もっと馬をうまく操るジャッキーはいないか?」
「もっと馬が早く走るにはどうしたらいいか?」
「摩擦の少ない馬車が作れないか?」
こんなことが頻繁に議論されていたんだと思います。
アートメイクでも同じですよね。この技術が生まれる前は、
「なるべく水落しない化粧品が欲しい!」という顧客の声に応えた製品が多かったでしょう。(いわゆる「ウォータープルーフ」というやつです!)
これらはいずれも「今作っているサービスの延長線上」であることが共通しています。いわゆる「イノベーションのジレンマ」というやつですね。
本質的な問いがジレンマからの脱出口
以前こちらの記事で、デザイン思考は「inspirationから始まる。すなわち、私たちが無意識に縛れられている既成の価値観を見出すことから始まる、というお話をさせていただきました。
言い換えるならば、解決したい本質は何か?と問題を問い直し、再定義すること。自分すら気付いていない、本来の目的は何か?を見つけること。
しかし、この問いを導ける人というのは本当に一握りです。大企業のお偉いさんたちがどれだけ頭を捻っても、ダビデとゴリアテ、大企業はベンチャー企業に敗れてしまいます。
強制的に本質へ辿り着くことはできないか?
この質問もまた、多くの人にとっての「本質的な問い」ではないでしょうか。
そして、本質へ辿り着けないか?ということは「今は本質にたどりついていない」=「行くべきじゃないところに行っちゃってる」、図で表すとこんな感じ。
そしてこの記事では、この質問に対して
・空からのアプローチ
・陸からのアプローチ
という2つの手法を考えてみたいと思います。(意味わかりませんよね。これから説明します。)
空から本質を見つけ出す
有名なイソップ寓話があります。「3人のレンガ職人」の話。
3人はレンガを積んでいた。それぞれに何をしているのか尋ねると、1人目は「親方の命令でレンガを積んでいる」と答え、2人目は「レンガを積んで壁を作っている」と答え、3人目は「偉大な大聖堂を作ってる」と答えた。
さらにこの話には実は、続きがあります。
10年後、1人目は相変わらず働き続け、2人目はより高賃金な危険な仕事をしていた、3人目は多くの職人を輩出し、出来上がった大聖堂には彼の名前が付いた
ここからわかるのは、多くの問題は抽象度が低いことに起因するというものです。
結局これは「レンガを積むことの価値は?」ということを理解しているかどうか、というわけで、レンガを積むことはもちろん、そもそも大聖堂を作り上げること自体も手段に過ぎないわけです。
その本質とは「多くの人が集い、祈る、憩いの場を作り上げる」ことであり、さらには「人と出会い、心を落ち着ける」ことこそ本質であると言えます。このゴールが見えているからこそ、3人の10年間には「ただレンガを積む」わけではなく、本質を捉えていた3人目が多くの課題を解決したことで、その名が刻まれることになったのでしょう。
ここでいう「空から」というのは、「物事を抽象化する」ということです。それによって、本質からゴールを逆算するということ。
強制的に抽象化する方法
ここにある図があります。
これは大谷翔平選手が高校1年生の時に必要な行動、要素を上げ「目標計画」として立てたものです。
中心に行くほど自分のゴール、抽象度が高いもの、外側に行くほど日々の行動、短期計画に落とし込まれていきます。
このシートを使うことで、大体のことは最上位の抽象概念まで
(最終的にはなぜ人のために?とかそういう話に帰結するものがほぼ100%なのですが…)
少し脱しますが、資本主義社会とは「より多くの人が、より豊かになれる」ソリューションに対して資本が集中するシステムです。言い換えれば、他人の幸福に対して抽象度の高い視点を持てることがビジネス成功の条件であることにも話はつながっていきます。
陸からのアプローチ
もの後を抽象化することで本質にたどり着く手法を「空から」と表現しました。しかし、空からのアプローチは簡単ではないです。
なぜなら「企業が考える本質」=「顧客にとっての本質」とは限らないからです。
よって次の手法では、そんな場合に有効かつより実践的な「陸からのアプローチ」についてお話しします。
これまで長い間、この真っ直ぐな道を、メンバーと共に歩き続けてきました。しかし、いつからか「この道をまっすぐに歩き続けること」それ自体が目的になっていることに多くの人は気づかずにいます。「手段の目的化」というものです。
このハードルに陥った我々にブレイクスルーをもたらすのが「陸からのアプローチ」です。
言い換えるならば、
「レールの外はどうなっているのか?」
「道が整備されてないところを歩いてみよう!」
「これまでの常識から外れてみよう!」
と言う(本質を導けていなくても選択できる)地に足のついたアプローチなのです。
強制的に常識から逸脱する方法
「常識を壊す」ことについては、博報堂のデータマーケティングディレクターである横井さんが、こちらの記事で記載されているものが素晴らしいです。(名付けて常識デストロイ法…そのまま笑)
この手法が本質的なソリューションを導くのか?と言うことについてですが、答えはYesです。
もしこれまで進んできた道が本質的でないと薄々気づいているのであれば、そこから外れている時点でその確率は高まりますし、何より「道を外れ続ける」ことで最終的に本質にたどり着くことができれば、御の字。これはデザイン思考のプロトタイピングのプロセスにも通ずるところがありますね。
とりあえずじっくり考える時間を作ることから
なんと言ってもこれらを考えるのにはとにかく時間が必要です。
If I had only one hour to save the world, I would spend fifty-five minutes defining the problem, and only five minutes finding the solution.
「もし世界を救うのに1時間しかなかったら、問題定義するのに55分、解決策を見つけるのに5分を費やすだろう。」
アインシュタインの残した言葉と言われています。
多くの企業は逆です。5分の問題定義と、解決策の発案 / 実行に55分。逆です。かけるべきところに時間をかけていません。
最初の取組みとして、週5日出勤のうち、1日は「問題定義のため、本質を導くため」だけの日にするなんていかがでしょうか!
長い記事をここまで読んでいただいて、ありがとうございました!弱小ツイッタラーですが、フォローいただけると嬉しいです!
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