見出し画像

欧州卓球観戦記:ペンドラ・小西海偉選手がオフチャロフを破る。

ヨーロッパチャンピオンズリーグに出場する、我らがペンドラの星、小西海偉(旧姓:吉田)選手の試合を見るために、駐在しているベルギーから車で6時間かけてドイツへ行った。


林昀儒、モーレゴード、オフチャロフという豪華メンバー

相手チームは、ドイツの「ノイ・ウルム」。台湾の林昀儒、スウェーデンのモーレゴード、ドイツのオフチャロフが所属する、まさに世界トップレベルのスーパーチームだ。対するのは小西選手がこの秋から所属するポーランドの「ジャウドヴォ」。ポーランド・スーパーリーグではトップを走っているが、やはり相手のドイツチームの方がはるかに格上だ。

会場にはウルム・サポーターが埋め尽くされ、家族で来た我々は完全アウェイ。会場に入るなり、小西選手と目が合って、軽く握手(実はポーランドまで応援に行ったことがあり、覚えてくれていた)。「頑張ってください!」と見送る。

けたたましい、ドイツ側の応援の中、試合が始まる。林昀儒、モーレゴードという銀河系オーダーの前に、ポーランド側の2選手は善戦するも、やはり散っていく。ゲームを2本取られ、後がなくなる中、三番手として小西選手がようやく登場。相手は満を持してのオフチャロフだ。

かつての日本王者、日本代表という輝かしい実績を誇り、昨年まで所属していた東京アートでも活躍していた小西選手だが、正直、世界ランク10位・東京五輪銅メダリストを相手に、41歳片面ペンドラ選手が勝てる可能性はかなり厳しいのでは。。そう思ってしまっていた。


小西海偉 対 オフチャロフ

試合が始まる。

1セット目から小西選手は、オフチャロフのあの独特なしゃがみ込みバックサーブをミスすることなく処理。そしてきっちりロングサーブからの3球目回り込みドライブを決める。ロビングに2回持ち込まれたが、2本とも打ち返して得点。オフチャロフの鋭いフォアクロスへのドライブも、奇跡的にカウンターが2本決まる。そして、要所で見せたサイドカットショートにオフチャロフ選手は戸惑い、球を浮かせてしまう。

気づくと小西選手が1セット先取していた。

これは一体。。

いやいや、もはや絶滅危惧種、いや絶滅「済み」の片面ペンという希少な戦型が故に、独特なショートなどオフチャロフ選手が慣れなかったんだろう。そう分析する。

2セット目。
今度は小西選手のフォアドライブがさらに火を吹く。おいおい、オフチャロフ、ボコボコに打たれてるやん。2セット目も小西選手がとる。

これはワンチャン、いけるかもしれない。相手が慣れないまま逃げ切れるかもしれない。希望が見え、3セット目から応援に力が入る。

かたやドイツサポーターは、我らが誇るオフチャロフが41歳ペンドラ選手にボコられ始めているのを見て、異変の様子。それまでの2試合は正直、いけるやろと余裕だったくせに、まさかオフチャロフが負けるはずはない、応援がガチになっていく。

「ディマ!ディマ!」(オフチャロフの名)と叫ぶ裏で、自分と息子で「海偉!海偉!」と叫ぶ。

3セット目、オフチャロフに追い上げられてセット奪われる。

4セット目。このまま対応できるようになったオフチャロフにまくられるかもしれない、そんな不安を抱えながら見守る。

しかし、ここでも小西選手のキレは鋭いまま。何よりもサービスへのレシーブが良い。横下バックサーブにビタどめのストップをフォア前に、横上バックサーブはドライブしてしまう。

そして光る3球目回り込み一発ドカン。
ペンドラのセオリーのような戦い。

10−9となった最後は、オフチャロフの横上サーブをショートでプッシュ気味に返し、それをネットにオフチャロフが引っ掛けて終了。

どう考えても奇跡ではない。

今回ばかりは、ペンドラという戦型自体が、オフチャロフに効果てきめんであった。オフチャロフも決して調子が悪かったようには見えない。ペン独特のショートのやりにくさ、そして回り込み3球目フォアドライブの威力にオフチャロフは対応できなかった。

歓声を上げる小西選手。

あっけにとられ、もはやリスペクトの拍手を送るドイツサポーター。そして観客席で一人立ち上がって歓喜・狂乱する私。

小西選手がコートから私を指差してドヤ顔。

さらには相手監督と握手を済ませるなり、こちらの観客席までジャンプしてきて、私、息子、妻の順番に握手。

あいつら誰だ?とこちらに全注目するドイツ人サポーターたち。

何よりも小西選手が一番嬉しそうで少年のようではしゃいでいた。

結局チームとしては負けてしまうが、ホームを舞台にオフチャロフを41歳ペンドラが沈めるという誰の記憶にも鮮烈に残る結果となった。

僕の隣に座っていたドイツ人サポーターも
「本当にアメイジングだ。卓球の試合として純粋に面白かった。海偉はすごい」。
と話しかけてくれた。

ベルギーから6時間ドライブして駆けつけた甲斐があった。素晴らしい試合を見せてもらった。日本では選手をこんな近くで応援・観戦できるだろうか。なぜ日本で小西選手の活躍がもっと見られないのか。

自称小西ファン、ヨーロッパ支部として応援し続けていきます(来年帰るけど涙)。

シェイク裏裏だけが卓球じゃない。ペンドラって知ってるか!?

東京五輪銅メダリストを目の前で破った小西選手。
感動をありがとう。まだまだ活躍してください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?