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iwaki(イワキ) 耐熱ガラス コーヒーサーバー ウォータードリッパー

点滴法のコールドブリュワー/ドリッパーは一つは欲しいと思っていたがなかなか手が出なかったのだが、下記の機種が比較的安価で、楽天で割引やらポイント還元やらを足すと実質2000円程度で買える機会があったので、勢いで買ってしまった。

連休の間これで試行錯誤を繰り返しカフェイン摂取過剰で若干頭痛がするほどまで飲んだので、その結果をまとめておく。

味の特徴

点滴法で淹れるコーヒーやお茶の味は、よく言えば雑味がなくキレがある味になり、悪く言えば単調で尖った味になりやすかった。理由を考えるに、おそらく以下の2点があるだろう。

一つは微粉やオイルなど雑味を産むものが入りにくいという点である。抽出プロセスで機械的圧力はおろか対流などもほとんど発生しないため、純粋に水に溶ける物質だけが抽出されてくる。このため、微粉やオイルなど普通に淹れたコーヒーにコロイドとして入ってくるものがほとんど出てこない(ただし私の場合、機械のフィルタに加え、そこにすっぽりはまるペーパーフィルターを追加して使っている)。緑茶などは点滴法で淹れると極めて透明度の高い蛍光グリーン色になるので「え?これ本当に自分が淹れたんですか……?」という気分になる。

もう一つは抽出効率が良すぎるために味のバランスが変わるという点である。点滴法は原理的には超多段のカラムクロマトグラフィに近い性質を持っており、この方法では非常に味が濃く抽出されるのは「コーヒーの科学」でも解説されている通りである。

この原理を理解するため、簡単なモデルを作ろう。コーヒー豆に総量3のコーヒー成分があり、これに300mlの水を注ぎ、コーヒー滓に100mlが残り、200mlのコーヒーが得られるとしよう。浸漬法の場合、全体が均等な濃度になるので、200mlのコーヒー液には2のコーヒー成分が入り、滓の100mlの側に1のコーヒー成分が残る(図上)。これを、100mlの水で蒸らし、次に100ml注いで落ちきるまで待ち、さらに100ml注いで落ちきるまで待つドリップ式に変える。そうすると、蒸らし後の最初の100mlで3の成分が等分され落ちた100ml側に1.5の成分が落ち、次の100mlでは残り1.5が等分され、最終的なコーヒー液にには1.5+0.75=2.25のコーヒー成分が入り、浸漬法より濃くなる(図下)。理論上、「注いで落ちきるまで待つ」段数を細かくとるほど抽出効率は上がるが、点滴法はその極致ということになる。実際、点滴法のコーヒー滓にお湯を注いで二番煎じを取ると、普通のドリップの二番煎じより味は薄くなる。

多段カラムクロマトグラフィー

雑味が出にくく、かつ常温の水に溶ける成分は通常のドリップや浸漬法(フレンチプレス含む)より濃厚に抽出されるので、他の方法で淹れたコーヒーより苦味や酸味が突出しやすいという傾向にある、というのが自分の判断である。

実際にやってみると、深煎りでは苦味が突出し、豆と水の量が普通のドリップと同じ場合、カフェオレにするとちょうどよい味と感じた。雑味がない純粋な苦味にコクを感じる人もいるかもしれない。浅煎りの場合は酸味が強く甘味やまろやかさを隠す傾向にあり、今現在薄めて何とかなるか模索中である。

全体的には浅煎りのスペシャルティをブラックで飲むには浸漬法の方がコントロールが楽で、深煎りの豆でキレのある苦味が欲しい場合やカフェオレにしたい場合には点滴法のほうが優れていると思う。自分はドリップ派だが、ここまで雑味がないものを飲むと、多少の雑味があるほうが良いというフレンチプレス派の気持ちもわかる。

下準備——豆のガス抜き

点滴器の説明書を読むと、豆を全体的に湿らせてから点滴を開始してください、とある。そのため、豆を全体的に湿らせた状態で点滴してみたが、先ほど説明したような味の偏りがかなり強くなり、浸漬法に比べ香りが弱くなってしまった。

対策として、一度完全なガス抜きを行うことにした。100円ショップで売っている250mlの計量カップがぴったり合うので、フィルターに豆を入れ、そのフィルターを計量カップに嵌め、水を注いでしばらく待つ。すると炭酸ガスなどで豆が浮いてくるので、これをスプーンなどで水中に叩き落とす。豆が浮かび上がらず水面下に沈むようになったらガス抜き終了で、これをセットして点滴する。

この時計量カップ内に残った水はそのまま出来上がり側の瓶に入れてしまってよい。「薄くなるのでは?」と思われるかもしれないが、点滴法はどのみち非常に濃く淹れられるのであまり関係なく、むしろ香り成分を溶かし込むためにはこれも出来上がりに混ぜたほうが良いというのが私見である。

点滴速度を変えるとどうなるのか?

この機種は点滴の速度は変えられず、4杯をほぼ2時間かけて抽出する。この速度は事実上固定である。ただ、ドリップ速度は変更できる方が良い、という意見も根強い(ただしそれが可能な機種は最低6000円から、ガラス製品にすると数万円)。

個人的には、コーヒーの味の主要な成分——つまり苦味と酸味については、2時間の点滴で通常の熱水ドリップ以上の効率で抽出されるため、これ以上時間をかける必要はない、という意見である。

ただ、24時間の浸漬法に比べると甘味を感じにくい。これが微粉やオイルなど対流によって「漏れてしまう」成分によるものなのか、水に溶けにくく抽出に時間のかかる成分によるものなのか、それは不明である。前者の場合は点滴法が向いていないという話になるが、後者の場合には点滴速度を変えることで味のバランスが変わる可能性もあるので、そのうち試してみたいと思っている。

その他

緑茶・ほうじ茶・紅茶でも試してみたが、先に述べたように透明な液が得られるのは面白いが、カテキンの渋みが単調に出やすい傾向にあり、コーヒーと違って香りも湯温を上げたほうが立ちやすいため、かなり期待外れであった。ただ、ほうじ茶は茶葉の量を贅沢に使うと期待していた味に近くなる。また緑茶は渋みが持ち味の深蒸し茶だったので、通常低温で淹れるかぶせ茶などに変えるとまた違うかもしれない。

点滴法で試してみたいのはダシで、おそらく相当クリアで上品なダシが得られるであろう。うま味も雑味も強くなりがちな混合節で試してみたいところである。なお、ダシなど味が違うものは、コーヒー抽出とフィルターと瓶を共有する必要はない。ざるの上にだしパックを置いて椀に液を落とす状態にして、その上から点滴でよい。




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