焙煎の定量化

コーヒーの焙煎の深さには様々な表現がある。例えば日本語では、

浅煎り
中浅煎り
中煎り
中深煎り
深煎り

といった5段階評価がよく用いられるし、横文字で

ライトロースト
シナモンロースト
ミディアムロースト
ハイロースト
シティロースト
フルシティロースト
フレンチロースト
イタリアンロースト

あたりの評価も良く用いられる。

問題は、これらはおおよその共通了解はあるものの、人によって微妙に指している焙煎度合いが違う、ということである。この問題を回避するため、物理的・客観的な指標で評価しようという声もある。例えば、一つは焙煎に伴って生じる物理現象を使う評価である。

1ハゼ(パチン!パチン!とハゼる現象)、2ハゼ(ピチピチピチ……と内部がヒビわれる現象)、油煙発生、オイル表出を境目とし、

1ハゼ前
1ハゼ中
1ハゼ後
2ハゼ直前
2ハゼ中
2ハゼ後
オイル表出
オイルで覆われる

という表現法あたりは可能である。ただし、この方法は1ハゼ前、1ハゼ後、オイル表出後の解像度が低くなる欠点はある。

色彩色度計を持っている場合、L*a*b*表色系のL*の値(=暗さ・明るさ)、ないし光の反射率(雪のように白いとほぼ1、光を吸収して真っ黒で0)で定義することもできる。以前購入していた早川コーヒーは色彩色度計の値、主にL値で焙煎度を指定できた。

画像1

L*a*b*色空間。縦軸がL*値で、大まかに明るさを指す。

もう一つは、焙煎機内部に温度計がある場合、温度変化のプロファイルで表現する方法である。これはおそらく現在使える指標で一番正確なものの一つである。というのも、焙煎に伴って生じる化学反応は、最高温度と、ある温度の持続時間の両方が関与しうるものであり、浅~深のように一次元では必ずしもないからである。

昨今のようにコーヒーのマニアックな深堀りが続いていく場合、温度変化プロファイルや、仕上がった豆の中の化学物質の定量などの方法が発達していくのではないかと予想している。

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