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#6 マインドフルネスとは何か? その始まりと広がり

stand.fm『瞑想Cafe』の6回目の放送です。
今回は、「マインドフルネス」のブームの始まりとその広がり、サマタ瞑想との違いなどについて話をしていきたいと思います。

『瞑想Cafe』では、瞑想に関すること、マインドフルネスやヴィパッサナー瞑想、「ブッダの教え」など、瞑想に関連するさまざまなことを、その日の気分で、気軽に、誰でも分かるようにお話していきます。

この記事では第6回の放送内容を要約して、お伝えしたいと思います。

1.マインドフルネス・ブームの始まり

マインドフルネス(mindfulness)の語源は、パーリ語のsati(サティ)の英語訳で、「気づき」という意味です。

「マインドフルネス瞑想」は「気づきの瞑想」ともいいます。

さて、マインドフルネスのブームは、1970年代にジョン・カバット・ジン博士が『マインドフルネスストレス低減法(MBSR)』を開発したことから始まります。

これが、マインドフルネスのブームの始まりになります。

ジョン・カバット・ジン博士は、もともと禅やヨーガを実践していて、その後ヴィパッサナー瞑想も体験し、実践していた方です。

ストレス、悩み事、痛み、病気に対応する手助けとして、マインドフルネス瞑想を導入したんですね。

マインドフルネスストレス低減法(MBSR)は、慢性的な痛みやストレスをもった患者の治療を目的とした、8週間のマインドフルネスの集中プログラムになります。

上座部仏教のヴィパッサナー瞑想をベースにして、宗教的要素を排除して、現代的にアレンジし、治療目的にしたものです。

その後、1990年代には、うつ病の治療のために『マインドフルネス認知療法(MBCT)』も開発されました。

マインドフルネス認知療法は、うつ病、不安、燃え尽き、摂食障害といった認知に焦点を当てています。

ジョン・カバット・ジン博士のマインドフルネスの定義は

瞬間瞬間の体験に対して、今の瞬間に、判断しないで、意図的に注意を払うことによって実現される気づき


2.企業や一般へのブームの火付け役

2005年からGoogleがマインドフルネスを導入することで、ブームに火がつきました。

Googleでは、ベトナム人の禅僧ティク・ナット・ハン師やチベット仏教の僧侶を招いて、社内で勉強会などを開催しています。

そして、2007年にサーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)というGoogle独自の研修プログラムを開発しました。

これは、最新の脳科学に基づいて開発したリーダーシップ・パフォーマンス向上のプログラムです。

多忙なGoogleのマネジャーやエンジニアのパフォーマンスを向上のために開発されたものであり、マインドフルネスと科学に基づいた、リーダーのための心の知能指数(EQ)の開発プログラムになります。

このSIYの目的は、精神的な安定や脳の活性化、ビジネスパフォーマンスの向上、幸福度の向上などになります。

「Googleのマインドフルネス革命」という本に中に、

宗教色を排除したマインドフルネスは不完全である
特定の宗教に入らなければないらないと参加者が感じることなく実践できることが大切

とあります。
企業として導入するのであれば、どの宗教の方でも参加できるようにして、個人の能力開発とともに、組織としての効果が求められるので、企業用にアレンジしていくのは必然です。

その後、インテルやナイキ、マッキンゼー・アンド・カンパニーなど、多くの有名な大企業がマインドフルネスを導入し始めました。

Googleがマインドフルネスを導入したことによって、IT最先端企業が続いて導入したことにより、爆発的にマインドフルネスが広がっていったんですね。

その流れが日本にも入ってきて、マインドフルネスが最先端のものと感じられるようになったのではないかと思います。


3.マインドフルネスの定義

一般的に言うマインドフルネスとは、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)をベースとしたものか、Googleのサーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)をベースにしたものかの大きく2つの流れがあります。

◆ジョン・ガバットジン博士のマインドフルネス定義

瞬間瞬間の体験に対して、今の瞬間に、判断しないで、意図的に注意を払うことによって実現される気づき

◆日本マインドフルネス学会のマインドフルネス定義

今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること
” “観る” 見る、聴く、嗅ぐ、味わう、触れる、心の動きをも観るという意味

日本マインドフルネス学会の定義のほうが、よりヴィパッサナー瞑想でのサティの説明に近くなっています。

私の立場で言えば、マインドフルネスを本当に理解するのであれば、やはりヴィパッサナー瞑想を学んで実践してみないと、本質の部分はわからないのではないかなとは思っています。

ただ、広く誰でも導入して、その効果を体感していただくには、マインドフルネスはとても有効だと思います。

なお、精神的に問題がある方やうつ病傾向がある方などが、安易に精神科医以外の方のマインドフルネス指導を受けたり、導入したりして、問題が出ている記事などを最近多く見かけるようになりました。
そのような傾向がある方は、精神科医など専門の先生に相談の上、指導を受けるようにしてください。


4.サマタ瞑想とマインドフルネス瞑想の違い

マインドフルネスを理解するためには、サマタ瞑想との違いを理解いただくと、より理解が深まるかと思います。

サマタ瞑想とは、ひとつの対象に心を落ち着かせる瞑想で、心を鎮める、心を止める瞑想になります。

サマタ瞑想には、いろいろな種類があります。

イメージを用いたもの

・神様をイメージして、念仏や祈りの言葉を唱えて、その神の一体化を図る瞑想法
・太陽や光、気のようなものをイメージして、上から下、下から上と動かす瞑想法

音や言葉を使ったもの

・チベットのシンギングボウルなど
・瞑想用のヒーリングミュージックを用いたもの
・マントラを用いた瞑想法
・息を数える瞑想法(数息法)

など、さまざまなサマタ瞑想があります。

心は、何か対象となるものがなければ、集中することができません。

心に何か対象となる心の乗り物を用意して、それに意識を向けさせることで、心を鎮めていくのがサマタ瞑想になります。

サマタ瞑想では、心の乗り物を用意して、心のベクトルを今の自分や自分の心ではなく、その乗り物であるその対象に向けます。

すなわち、自分の内側である今の心ではなく、心の乗り物に向けて、心の反応をシャットアウトするものです。


マインドフルネスではどうでしょう。

マインドフルネスでは、自然な呼吸に意識を向けます。
鼻の穴を出入りする息だったり、腹式呼吸のお腹だったり、胸の動きだったり、体の一部に意識を置いて、体と呼吸を一体化させます。

心のベクトルは、今ここの自分、自分の心、心の内側に向けます。

今ここ、今この瞬間の体の感覚、今この瞬間の心、今この瞬間に無意識に反応している心の働きに意識を向けます。

心のベクトルをどこに向けるか、何に気づくのか。
それがサマタ瞑想とマインドフルネスとの違いになります。


ヴィパッサナー瞑想でのサティ(気づき)は、アーナパーナ・サティ(呼吸による気づき)と言います。
アーナーパーナ(anapana)とは、呼吸のことです。

※ ヴィパッサナー瞑想における呼吸の瞑想に関して詳しく説明をしている記事もありますので、よろしければ参考にしてください。




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