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第10回 苦を消滅させるための道『8つの聖なる道』

“ストレスを手放し、心を解放しよう!”シリーズの第10回です。

前回の「ヴィパッサナー瞑想を通じて『智慧』を育む」の続きとして、今回は「苦を消滅させるための道『8つの聖なる道』」に関してお話したいと思います。

1.苦に関する4つの聖なる真理

前回ご説明しましたように、4つの真実の観察を通じて、アニッチャ(無常)・ドゥッカ(苦)・アナッタ(無我)の3つの性質の真理を悟ることが『ブッダのメソッド』の要であるとお話しました。

そして、ドゥッカ(苦)の『智慧』を育むために、苦に関する4つの聖なる真理を悟る必要があります。

苦に関する4つの聖なる真理
① 苦についての真理
  5つの集合体への執着は苦である
② 苦の原因についての真理
  
苦が生まれる原因は、執着である
③ 苦の消滅に関する真理
  
苦は消滅させることが可能である
④ 苦を消滅に導く道に関する真理
  苦を消滅させるための道『8つの聖なる道』

①~③までは、前回ご説明していますので、今回は④の「苦を消滅に導く道に関する真理」に関して、ご説明いたします。

2.8つの聖なる道

ブッダは、苦を消滅させ、心を解放するための現実的な方法を発見しました。その道を「8つの聖なる道(アリヤ・アッタンギカ・マッガ)」と言います。

「8つの聖なる道」は、シーラ(道徳)、サマーディ(精神集中)、パンニャ-(智慧)の大きく3つの修行段階に分かれています。

第1段階:シーラ(道徳の訓練)

私たちは、日々の出来事を通じて、心の中に新しい汚濁、サンカーラを作り続けています。毎日、毎日、新しい汚濁を作り続けています。
日々、いろいろなことが起こり、いろいろな感情を生み出し、執着し、心の中に汚濁を生み出し続けています。

心を鎮めて、汚濁を取り除こうとしても、新たに汚濁が入ってきたら、また濁ってしまいます。

また、心の奥にある汚濁を取り除くためには、表面の汚濁から順に取り除くしかありません。

そのため、新しい汚濁を生み出さないようにしなければなりません。

つまり、新しいサンカーラをつくらないことです。
そのためには、日常生活すべてにおいて、新しいサンカーラを生み出す要因を排除する必要があります。

悪いことをしないで
良いことをしなさい
心をきれいにしなさい
これが悟りを開いた人々の教えである

すなわち、からだと心のすべてにおいて、悪い行為を慎むことです。
悪い行為をするとき、心は必ず乱れ、強い渇望や嫌悪の感情が起こり、新しいサンカーラを生み出します。

日常生活において、自分の言動に注意し、自分の心をコントールするようにして、常に平静な心を保ち、新しいサンカーラを生み出さないようにすることです。

また、心の平静さを保つためにも、シーラの実践は不可欠になります。

シーラには、3つの修行があります。

シーラの3つの修行
① 正しい言葉
② 正しい行為
③ 正しい生活

「正しい言葉」とは、清らかな言葉を使うことです。
正しくない言葉は、ウソをつくこと、傷つける乱暴な言葉、中傷、悪口、陰口などで、これらの言葉を使わないことです。

「正しい行為」とは、からだによる清らか行為のことです。
清らかな行為とは、人を助ける行為のことです。
逆は、人を傷つける行為、生き物を殺すこと、盗むこと、不貞な行為など、ほかの人を傷つけ、自分をも傷つける行為のことです。

「正しい生活」とは、人を傷つけない仕事で生計を立てていることです。
私たちは、自分や家族のために、何らかの生計を立てる必要があります。
直接的、間接的であっても、人を傷つける仕事をしないことです。

他の人の安らぎや和を乱しながら、自分自身の内に安らぎを保てるでしょうか?
悪い行為を慎むのは、結局は自分自身のためです。
からだの行為であれ、言葉の行為であれ、他の人が傷つく行為をするとき、必ず自分の心の中には、渇望・嫌悪・恐怖・我欲といった穢れが生まれているからです。

穢れを内に生み出すことなしに、人を傷つける行為はできないのです。
そして、内に生み出す穢れによって、自分自身が傷つくのです。

もし悪い行為をしてしまったら、心が乱れ、強い渇望や嫌悪の感情が起こり、その雑念で心がさまよい、瞑想を始めてもなかなか集中できなくなり、荒い強い感覚が生じてきます。
日々の行為が日々の瞑想にすぐに反映されますので、日々の行為にはより気をつけるようになると思います。

シーラを実践するのは、簡単なことではありません。
頭でわかっていても、心をコントロールできなければ、悪い行為をしたり、し続けてしまいます。

そのためにも、心をコントロールする方法、心を制御する方法を学ばなければなりません。

第2段階:サマーディ(精神集中の訓練)

心をコントロールするために、サマーティを実践します。

サマーディには、次の3つの修行がありますが、第7回及び第8回で説明しましたアーナーパーナ・サティ(呼吸による気づき)の実践そのものです。

サマーディの3つの修行
① 正しい努力
② 正しい気づき
③ 正しい精神集中


ヴィパッサナーのアーナーパーナ・サティ

自然な呼吸に意識を置き、鼻孔から入っていく息、出ていく息、これに意識を向け続けて、ただ観察する。
そして、鼻孔の縁に意識を集中させる。
からだに生じる微細な微妙な感覚を観察し続けて、その感覚に心の焦点を合わせ、心がブレないようにしっかり固定し、心の平静を保ち続ける。


このアーナーパーナ・サティの実践を通じて、心の平静さを育むことが大切です。

・気づきを育むこと
精神を集中させること
・心の平静さを育むこと
・自分の心をコントロールすること

第3段階:パンニャ-(智慧の訓練)

シーラ(道徳)、サマーディ(精神集中)の実践の上に、サンカーラを滅する段階になります。
この段階で、第5回及び第8回で説明しましたヴィパッサナー瞑想の実践になります。
そして、ヴィパッサナー瞑想の体験を通じて、前回説明しました『智慧(パンニャ-)』を育むことが必要になります。

パンニャ-には、次の2つの修行があります。

パンニャ-の2つの修行
① 正しい思考
② 正しい理解

パンニャ-に関しては、前回説明したとおりです。

すなわち、自分自身で体験し、4つの真実の観察を通じて、この3つの性質の『智慧』を育むことです。

智慧を育む

この3つの性質の真理を悟ることより、心の奥深くにある微細なすべてのサンカーラを滅することができるようになり心が浄化されます。

「8つの聖なる道」の全体像は次のようになります。

8つの聖なる道

この苦を消滅させるための道『8つの聖なる道』が、心を解放させ、悟りに至る道、ブッダのメソッドになります。

正しい理解から正しい思考へと進み、
正しい思考から正しい言葉へと進み、
正しい言葉から正しい行為へと進み、
正しい行為から正しい生活へと進み、
正しい生活から正しい努力へと進み、
正しい努力から正しい気づきへと進み、
正しい気づきから正しい精神集中へと進み、
正しい精神集中から正しい智慧へと進み、
正しい智慧から正しい心の解放へと進む。

まずは、本を読んだり説法や講話を聞いたりして、ある程度の基礎的な知識をことは必要です。そして、それを頭で論理的に考えることも大切です。

たとえ表面的な知識であっても、そういうものが頭に入っていないと、この『8つの聖なる道』を進むこともできません。

まずは、表面的でもいいですので正しい理解から」です。

そして、シーラ(道徳)・サマーディ(精神集中)の実践、ヴィパッサナー瞑想を通じてパンニャ-(智慧)を育んでいくと、あらためて「正しい知識」「正しい理解」ができるようになり、「正しい智慧」になっていきます。

私たちは、シーラ(道徳)・サマーディ(精神集中)・パンニャ-(智慧)を別々ではなく、一緒に修行しなければなりません。

アニッチャ(無常)・ドゥッカ(苦)・アナッター(無我)も一緒に育んでいかなければなりません。

それが、苦しみから解放される道です。

なお、ここで言う「正しい」とは、正悪の正というよりは“完全にする”という意味に近いそうです。

この流れがスパイラル的に繰り返されながら、徐々に深まっていきます。

そして、スパイラル的に繰り返しながら、やがて心が解放さていきます。


次回は、10回までのまとめとして、“【図解】これがブッダ・メソッド“と題して、これまでのブッダの教えをまとめたいと思います。

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