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#16 アーユルヴェーダと脈診による気づき

stand.fm『瞑想Cafe』の16回目の放送です。
今回は、インドの伝承医学「アーユルヴェーダ」と「脈診による気づき」についてお話したいと思います。

『瞑想Cafe』では、瞑想に関するさまざまなこと、マインドフルネス、ヴィパッサナー瞑想、「ブッダの教え」、アーユルヴェーダなど、気軽に誰でも分かるようにお話しています。

この記事では第16回の放送内容を要約して、お伝えしたいと思います。

1.アーユルヴェーダとは

「アーユルヴェーダ」とう言葉、聞いたことありますか?

女性は結構知っているかもしれません。
アーユルヴェーダの健康法やオイルを使ったマッサージなどが、雑誌等で取り上げられたりしたのを、目にしたことがあるかもしれません。

日本では、「アーユルヴェーダ」は医学というより、『古(いにしえ)の知恵袋』のように扱われているかもしれません。

「アーユルヴェーダ」は、インド大陸の伝統的医学です。

サンスクリット語のアーユス(Ayus/生命)とヴェーダ(Veda/科学)を組み合わせた「生命科学」という意味です。

ユナニ医学(ギリシャ・アラビア医学)、中国医学と共に世界三大伝統医学のひとつと言われています。

インドでは、アーユルヴェーダ医師の資格は国家資格であり、現代医学と並んで治療が行われています。

2.日本におけるアーユルヴェーダ

1970年代のアメリカで起こったニューエイジのブームの中で、ヴェーダや東洋医学が見直され始めました。

一番大きいのは、1998年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)に国立補完代替医療センター(NCCAM)が設立されたことです。

西洋医学以外の医療を正式に国が認めたことになり、また数十億円の研究予算がついて、全米で研究が盛んになりました。

これを機に、日本でも代替医療や統合医療の学会が生まれ、日本の医師の方々が興味を持ち始めます。

日本では、アメリカでのニーエイジ・ブームの流れが、1980年代に入りやってきます。

その流れに中で、日本にも「日本ホリスティック医学協会」や「東洋伝承医学研究会」、「日本マハリシ・アーユルヴェーダ医学協会」など、いろいろな学会が立ち上がります。

その当時、アーユルヴェーダが日本でもブームになり、毎週何かの女性誌で特集が組まれるほどでした。
ですので、今の50代、60代の方にほうが詳しいかもしれません。

また、アーユルヴェーダ専門のクリニックも数軒立ち上がったりしました。

私は、この時代にアーユルヴェーダや代替医療、統合医療の医師の学会に関わっていました。

そのため、ヴェーダやウパニシャット哲学、アーユルヴェーダ、東洋医学、代替医療としての各種療法などを、先生方に交じって勉強していた時期です。

その後、アーユルヴェーダは日本では医師法や薬事法との兼ね合いもあり、医学としての発展は難しく、ブームが収束していきます。

そのため、アビヤンガやシロダーラなどのオイルマッサージを中心に、マッサージサロンやエステサロンで取り上げられ、女性の健康法の一つとして今に至ります。

2.ヴェーダ・アーユルヴェーダの歴史

ヴェーダやアーユルヴェーダは、約5000年前に始まったと言われています。
特に、ヴェーダの時代である約3500年前(紀元前1500年)ごろに確立したそうです。

ヴェーダとは、バラモン教とヒンドゥー教の聖典です。

古代のリシ(聖人)達によって、神から受け取られたと言われていて、長い間、口述でのみ伝承、受け継がれてきたものを書き留めたものです。

今から、約3500年前~2500年前ぐらいにまとまり、今のヴェーダにまとまったとされています。

お釈迦様がちょうど生まれる前の時代です。

ヴェーダは、4つヴェーダから成り立っています。

リグ・ヴェーダ:神々への韻文讃歌(リチ)集
サーマ・ヴェーダ:詠歌(サーマン)集、インド古典音楽の源流
ヤジュル・ヴェーダ:散文祭詞(ヤジュス)集、神々への呼びかけ
アタルヴァ・ヴェーダ:呪文集

その他、ウパヴェーダがあり、付随的・応用的な知識をまとめたものです。

アーユル・ヴェーダ:医術
ガンダルヴァ・ヴェーダ:音楽・舞踊
スターパティア・ヴェーダ:建築術(風水のような知識)
ダヌル・ヴェーダ: 弓術
ジョーティッシュ:インド占星術(せんせいじゅつ)

アーユルヴェーダの知識は、アーユルヴェーダ古典『チャラカ・サンヒター』にまとめられています。

この中では、8つの分野に分類されています。

内科:身体全般における病気の治療
外科:異物の摘出や腫瘍の治療
鎖骨より上部の専門科:頭を中心とする鎖骨より上部の治療
小児科:産科も含む
鬼神学:精神科学
毒物学:毒物・体毒・誤った食べ合わせによる異常に関する治療
不老長寿法:老年医学、健康延命法
強精法:催淫剤と性的若返りの研究

3.アーユルヴェーダの理論

(1)アーユルヴェーダの世界観

アーユルヴェーダは、ヴェーダの世界観でできています。その哲学は、ウパニシャット哲学、特にアーユルヴェーダではサーンキャ哲学がベースになっています。

ウパニシャット哲学では、この世界は『ブラフマン(純粋意識・統一意識)』から出てきていると考えられています。

このブラフマンの世界は、光だけしかなく、すべて真っ白な世界で、上も下も、右も左も、過去も未来もない、ただ何もない純粋な世界です。

あるとき、歪みが生じて、初めて自分の中に認識されるものが生じます。

それを、リシ(認識の主体)、デーヴァター(認識の過程)、チャンダス(認識の対象)と言います。

サンヒター(三即一構造)が生まれ、万物が創造されたと言われています。

私たちの世界は、この三即一構造のフラクタルであり、これが宇宙や人体をつくっていると考えられています。

そして、サンヒター(三即一構造)の歪みから、「空」、「風」、「火」、「水」、「地」の5大要素(元素)が生じます。

また、アートマン(自我・真我、魂のようなもの)があると考えられています。

(2)トリー・ド-シャ理論

この5元素が2つづつ対になり、3つのドーシャ(トリー・ドーシャ)が生まれます。
ドーシャとは、体液・病素とも訳されますが、この世界、特に人体を構成するエネルギーのようなものと考えていただいたほうがいいと思います。

3つのドーシャは、それぞれ次のようなものです。

ヴェータ(V)
「空」と「風」の要素が合わさったもの
属性(性質):軽い、動き、速い、乾き、冷たい
役割:体内の動き、運搬、排せつなど
ピッタ(P)
「火」と「水」の要素が合わさったもの
属性(性質):軽い、熱い、鋭い
役割:体内の消化、代謝など

(※放送では、ピッタを風+水と話してしまいましたが、正しくは火+水になります。放送は修正していませんので、ご了承ください。)
カパ(K)
「水」と「地」の要素が合わさったもの
属性(性質)
重い、遅い、安定性、粘着性
役割:体内の結合、同化、人体構造の維持など

この3つのドーシャは、中医学における「気・血・水」に対応していると思います。

また、ドーシャは、季節や時間帯、年齢によっても変わっていくと考えらえています。

季節の変化
3月~6月頃 カパ
7月~10月頃 ピッタ 
11月~2月頃 ヴェータ
時間帯
2時~6時頃 カパ
10時~2時頃 ピッタ
6時~10時頃 ヴェータ
年代別
幼年期: カパ
青年期: ピッタ
老年期: ヴェータ


この3つのドーシャのバランスが、人体の生理・心理機能を調整し、健康や病院の発症に関与していると考えられています。

3つのドーシャのバランスをとることが大切で、それにより健康が維持できると考えらています。

アーユルヴェーダでは、病気になってからそれを治すことより、病気になりにくい心身を作ることを重んじています。

アーユルヴェーダは、病気を予防し、健康を維持する「予防医学」の考え方が中心にあります。

そのため、健康のレベルを4段階、病気のレベルを3段階に分けていて、全部で7段階に分けて健康を捉えています。

(3)アーユルヴェーダの体質

アーユルヴェーダでは、その人の生まれもった体質を「プラクリティ」と言います。
インド占星術の生まれたときの場所と年月日、生まれた時間の星の位置で占うのと同じように、アーユルヴェーダでは生まれた時のドーシャのバランスです。

そして、今の体質を「ビクリティ」と言います。

アーユルヴェーダでは、プラクリティとビクリティのギャップが病気を生み出すと考えられています。

私のプラクリティは、「ピッタ・カパ」体質です。
一番強いドーシャを先に、2番目に強いドーシャの順で表現されています。

アーユルヴェーダでは、生まれた時の体質である「プラクリティ」のドーシャバランスが、その人にとって健康な状態です。

その後、日々の生活の中で、ドーシャが乱れ、心のからだのバランスが崩れていきます。

その今の体質がビクリティです。

プラクリティとビクリティを診断して、プラクリティの生まれたときの体質に戻していくのがアーユルヴェーダになります。

アーユルヴェーダで「パンチャカルマ(5つの治療法)」という治療法があります。
この治療法は、心とからだの固まった毒素を溶かして、流し、排出する浄化法です。
PCをリセットして、出荷時に戻し、正しく再起動していくようなものです。
そのため、パンチャカルマは王様の治療と言われるぐらい、期間と手間と費用がかかります。

(4)アーユルヴェーダの診断と脈診

診察は、視診、問診、触診で行います。
特に、脈診が重要で、脈診をサポートするのが視診や問診になります。

視診(ダルシャナ):舌診、目、爪、肌・皮膚など
触診(スパルシャナ):脈診(ナーディ・パリークシャー)
問診(プラシュナ):ドーシャチェックシートなど

アーユルヴェーダの脈診は、右手の人差し指、中指、薬指を使って行われ、
男性は右手、女性は左手の脈を診ます。

脈は、橈骨動脈(とうこつどうみゃく)という手首の親指の側にある骨の出っ張り、橈骨突起のやや下の部位に、人差し指、中指、薬指の順に置いて脈を診ます。

それぞれの指で、3つのドーシャの波動を感じられます。

人差し指:ヴァータ(V)
中指:ピッタ(P)
薬指:カパ(K)

それぞれの指に触れる脈の「感覚」を感じてみてください。

その脈の強さや性質で、そのドーシャのバランス状態を診断します。

アーユルヴェーダ専門医は、脈の深さを7段階に分けて、プラクリティからビクリティまでを診断していきます。
さらに、サブドーシャ(各ドーシャごとに5つ)の要素も診断していきます。
脈診のスペシャリストになると、数十秒脈診をするだけで、その方の過去病歴なども当ててしまいます。

(5)セルフ脈診

では、自分で脈を診てみましょう。

男性は右手、女性は左手の橈骨動脈(とうこつどうみゃく)という、手首の親指の側にある骨の出っ張り、橈骨突起のやや下の部位に、人差し指、中指、薬指の順に置いてください。

ヴァータは人差し指で感じます。
蛇のようなニョロニョロした動的な脈です。

ピッタは中指で感じます。
カエルのようなピョンピョンした脈です。

カパは薬指で感じます。
白鳥のようなゆっくりした力強い脈です。


セルフ脈診のやり方は次のとおりです。

まずは、深呼吸して、精神集中を行います。

最初は指一本のみで脈を感じてみます。
人差し指、中指、薬指の順で脈を診ます。

・触れた瞬間の感覚
・少し押さえたときの感覚
・少し力をいれて押さえたときの感覚
・強く力を入れたときの感覚
この4段階ぐらいで、脈を感じてみてください。
脈の感覚に気づいてください。

脈の波動を感じられますか?
指によって、脈の波動の違いが感じられますか?

脈の速さ、
強さ、
クリアーさ、
性質、
を感じてみてください。

今度は、三本一緒に触れて、脈を感じてみてください。
三本の指を同じ力で触れるようにします。
先ほどと同様に、4段階ぐらいで脈を感じてみてください。
一本づつとは、また違った感じだと思います。
より複雑になっていますので、最初はわかりづらいと思います。

脈を診る際には、VPKを意識しないで、分析したり、考えたり、判断せずに、ただ脈を観察してください。

自然な呼吸で、
脈は今ここ、指先に意識を集中し、
脈に気づくことです。


1日何回でも、1回数分程度行ってみてください。

セルフ脈診は、瞑想です。
瞑想をするつもりで、セルフ脈診をしてみてください。

特に、脈診をするタイミングとしては

イライラしたとき
何か興奮しているとき
落ち着かないとき

このようなときは、脈が荒くなっています。

不思議と最初荒かった脈が、脈を観察しているだけで、落ち着いてきます。
それとともに、感情も落ち着いてきます。

私たちの心とからだの状態を一番正確に現れるのが「脈」だと思います。

その「脈」を自分で客観的に観ることは、マインドフルネス瞑想、気づきの瞑想になります。

是非、セルフ瞑想を試してみてください。


※アーユルヴェーダの理解におススメの本




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