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お父さんミッション

先日娘と散歩に出かけると
近所の空き地に色とりどりの花が咲いていた。

誰かが植えたわけではない。
黄色や紫、そしてピンクなど色とりどりの雑草が
春になり花を同じタイミングで
咲かせたのであろう。

その空き地は近隣の企業が元々
社宅用に使っていた土地であるが、
従業員が減ったことに伴い
社宅が取り壊されて空き地となった場所である。

なので、その会社の方が年に2回ほど
草刈をしてくれる。

しかし、それだけでは荒れ放題になるので
私が住む地区の自治会に一部
管理が委託されているのである。

私達の地区はその空き地の一部を
家庭ごみを集める場所として使っており、
ちょうど先週は我が家がその場所の
清掃担当になっていたので、
娘と共にその雑草を摘み取ることにした。

娘はその雑草から花を集めて
妻にプレゼントすると張り切っている。

せっせと雑草を摘み取り、
その中から花が付いているものを
なるべく茎が長くなるように取って
娘に渡していくと、
それなりのサイズのブーケになった。

自宅から輪ゴムを持ってきて
そのブーケの茎を縛り、
Amazonの配送で緩衝材として入っていた
わら半紙を根元にまくと
小さいながらも花束の様になった。

その仕上がりに満足したのか
娘はニコニコしながら妻にそれを渡しに
家に入っていく。

作業が終わり、家に入ると
その花が花瓶に入ってキッチン前の台に
置かれていた。

雑草とは言え、花が家にあると
やはり雰囲気が明るくなるものである。

娘から花束をもらった妻も何だか
嬉しそうだったので、
人の心も花によって明るくなったのであろう。

そうして花をその場所に置いたまま
3日ほどが経過した。

すぐに枯れるだろうと思っていたのだが、
さすが雑草。全く枯れる事なく見事に花を
咲かせ続けている。

そんな様子をキッチンで子供たちの弁当を詰めながら
見ていると、
ふとその花束の下に粉のようなものが
落ちているのに気が付いた。

過去に娘がキク科の雑草(キク科)である
オオキンケイギクを同じように
摘んできたことがあり、
その時には多くの花粉が花瓶の下に
落ちていたことがある。

今回も花粉か花弁が落下したものだろうと
それを掃除しようとすると
その粉をよく見てみると
あるものの形をしていた。

これは間違いない。

アブラムシの脱皮ガラである。

ということは、間違いなくこの雑草には
アブラムシが付いているものが
存在しているということである。

この時期のアブラムシは卵で越冬した個体が
単為生殖(交尾を伴わない生殖)して
短期間で爆発的に数が増えるので、
恐らく摘み取った時には気づかなかった
アブラムシがここで増えたのであろう。

よく見てみると摘み取った花の中にあった
カラスノエンドウにアブラムシが
沢山ついている箇所があった。

私は昆虫が好きではあるが、
アブラムシがびっしりと付いた植物を見るのは
あまり気持ちがいいものではない。

ましてや昆虫が苦手な妻や子供たちが
このことに気付いたらきっとショックを受けるだろう。

しかも、娘は妻に喜んでほしくて
この雑草を集めて渡したので、
このことで責任感を感じてしまうのは
とても可愛そうである。

幸い早朝で私以外誰も起きていないので
花が枯れたことにして
シレっと捨ててしまおうか。

そんな風に思ったが、
前日の夜に娘が「まだ花咲いてるな」と
言っていたので、
あまりいい加減なことも言えない。

幸いこの花束の中で汚染されているのは
カラスノエンドウだけで
ソラマメヒゲナガアブラムシが
他に付きそうなマメ科の植物は
混ざっていない。

何とかカラスノエンドウだけを集めて
処分すれば問題は解決する。

そこで、さっそく花束を花瓶から外し、
カラスノエンドウだけを取り除くことにした。

だが、カラスノエンドウが無くなると
花束全体から特有の紫色が無くなり
明らかに取り除く前と様子が異なってしまう。

これでは結局皆にバレてしまう。

どうしようかと考えた時に
ふとあるアイデアが浮かんできた。

同じような紫の花を咲かせている
雑草と入れ替えればいいのだ。

いずれにしても除去したカラスノエンドウを
摘み取った雑草を入れる袋に
捨てに行かねばならないので、
そのタイミングで別の紫の花を咲かせている
雑草を数本摘み取り、
それを混ぜて花瓶に生け直した。

すると一見すると変化したことには
だれも気付かない仕上がりになった。

心の中でガッツポーズする私。

これで家族を誰も傷つけることなく
アブラムシを除去することに成功した。

とは言え、先ほど書いたように
この時期のアブラムシは本当に驚くほど
爆発的な増殖の仕方をするので
花が枯れるまでは予断を許さない。

私のミッションは全ての花が枯れて
捨てるまで続くのである。

今回のことに味を占めて
娘が再びカラスノエンドウを摘みに行きたいと
言いだすかもしれない。

その時はどのようにして回避すればいいだろうか。

春の週末もお父さんのミッションは続く。

アブラムシは見ていて心地のいい昆虫ではないが、
実はとても面白い特徴を色々を持っている。

先ほど書いたような単為生殖をするだけでなく、
アリのような昆虫と共生することで
守ってもらうのは有名な話である。

せっかくなのでアブラムシについての記事も
またの機会に書いてみようと思う。

その時は今回のカラスノエンドウのように
排除しないでぜひ読んでみてほしい。


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