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メイティエンに行きたい家族

昨日はサプライヤーと面談のために
大阪を訪問した。

大阪の中心から電車で数駅行った場所にある
大企業の工場の一角。

私自身初めて訪問する場所なので
事前に駅からの道をリサーチしており
目的地には無事到着し、面談が始まった。

面談自体は非常に有意義なものとなり、
終わったのがちょうど夕方だったので
このまま直帰しても問題なさそうである。

花金の夕方に直帰、とてもラッキーだと思いながら
駅までの道に向かおうとしたとき、
真っ黒な雲が広がってきたかと思うと
瞬く間に大粒の雨と雷がやってきた。

カバンに忍ばせておいた折り畳み傘を
とっさに広げたものの、
風も強かったので見事に折り畳み傘は
変な方向にひっくり返されてしまう。

しかもこんな時に限って急遽オンライン会議に
参加してほしいとの連絡がきた。

ワイヤレスイヤホンをスマホにつなぎ、
ひっくり返った折り畳み傘と格闘しながら
オンライン会議に参加した。

外出先なので私はカメラをオンにしていなかったが
恐らくカメラを映していれば
私の置かれた酷い状況に皆が絶句したであろう。

ひとまず自分が置かれた状況を
口頭で説明して、
状況が落ち着くまでは耳だけ参加になることを
参加者に伝えた。

ひとまず向かうべきは駅である。

駅に付けば雨も避けられるし、
なんなら耳だけ参加のまま帰路にもつける。

駅に向かおうと私は雷雨の中
歩き続けた。

だが、困ったことに10分ほど歩いても
駅が見当たらない。

「おかしい。こっちの方向から来た気がしていたのに」

こんな時自分の方向音痴さに嫌気がさす。
だが、オンライン会議に参加中の私は
スマホのマップ機能を開くことができない。

どうしようかと思っていると、
ちょうど私が担当するパートの議論が終わり
何とかオンライン会議から解放された。

慌ててマップ機能を立ち上げ、
駅を目的地に入れてみると、
驚いたことに私は駅と反対方向に歩いていたのだ。

これまで多少方向を間違えることはあったが
反対方向に行くということはなかった。

おそらく「ながら」で歩いたのが
良くなかったのであろう。

とはいえ、これで駅までの道がわかったので
もと来た道を引き返しつつ駅に向かった。

相変わらず雨が降り続いているので
速足で歩き、そこから10分ほど歩いたところで
ようやく駅に到着した。

一度乗り換えはあるものの、
あとは電車にさえ乗っていれば家に帰れる。

そう安堵したとき、駅のホームで
私に対して手を振る3人家族が目に入った。

何だろうと思ってそこに行くと、
中国の人らしく、完全にカタコトの英語で
「I want to go メイティエン」と私に訴えてきた。

「メイティエン?」そんな場所聞いたことがないので
聞き返してみると、
スマホを取り出して画面を見せてきた。

そこには”梅田”と書かれている。

なるほど。JRに乗っていると”大阪”としか
書かれていないのに、
目的地は”梅田”と書かれているので
困っていたらしい。

ちょうど私も大阪駅で乗り換えをするのと、
彼らはあまり英語が通じないことが分かったので
その家族に、”私が連れて行くよ”と英語で伝えると
明らかに彼らは安心した様子であった。

ほどなくして電車がホームに入ってきて
電車に乗り込む私達。

すると家族の代表であるお母さんが
再び私にスマホを見せてきた。

そこには中国語サイトのホテルが記載されており、
そこに行きたいと言う。

中国語で書かれているので最初それが
どこなのかわからな方のだが、
よく見てみるとヒルトン大阪と書かれていた。

ヒルトンと言えば西梅田駅のすぐ前。

大阪駅で彼らを下ろして「じゃあね」と
言うこともできたのだが、
日本人の私ですら梅田の町で目的地にたどりつくのは
困難な状況なのに、
英語もまともに話せない彼らが
ヒルトン大阪にたどり着くまでには
相当苦戦を強いられるであろう。

バックパッカーならその苦労も楽しみになるかもしれないが
若いお母さんとその息子、そしておばあさんの3人組である。

ちょうど仕事も終わって今から帰るだけの私は
これも何かの縁かもしれないと思い、
彼らをヒルトン大阪まで案内することにした。

花金の梅田は人があふれかえっており
まっすぐ進むのも困難なほどである。

おばあさん連れの私達はゆっくりと地下を進み
地下鉄西梅田駅を目指した。

そうしてようやく駅が見えてきた時、私はてっきり
ヒルトンの案内がどこかに出てくるかと思ったのだが、
リッツカールトンなどの表示はあるものの
どこを見渡してもヒルトンの表示は見当たらなかった。

「あれ?ヒルトンは西梅田にあるはずなのに」
少し不安になり始める私。

一旦立ち止まって、私は通りがかったひとに
ヒルトン大阪の場所を尋ねてみることにした。

一人目に声をかけたご婦人は
「この辺に間違いはないと思うけど、
ハッキリとはわからないです。
地上に上がってみはったらビルが見えますよ」という。

ひとまず自分が案内した方向は間違っていないことに
安堵はしたものの、
今だ目的地がどこかはわからない。

地上に出るのも一つの選択肢ではあるが
まだ雨は降り続いているので
それも現実的ではない。

ご婦人にお礼を述べて次に私は
ビジネスマン風の男性に声をかけた。

するとその方は「たぶんこっちですよ」と
私達を入り口まで案内してくださったのだ。

ビジネスマン風の方にお礼を述べて
私達はその入り口に入ることにした。

入り口まで来てしまえばもうこっちのもの。

そう思いながら、中に入ったのだが、
今度はエレベーターの場所が全くわからず
探し回ることに。

ようやくエレベーターを見つけ、
ロビー階まで彼らを連れていくと、
彼らの顔にあった緊張は解けた様子であった。

そこで別れようとすると、
何やらスマホを触りだすお母さん。

翻訳ソフトを立ち上げて画面を私に見せてくれた。

「わたし達は中国の大連に住んでいます。
大連に来たときは是非連絡してください」と書かれており
私に電話番号を教えてくれた。

上海や蘇州ぐらいならビジネスで行くことはあるが
恐らく大連に行くことはないだろう。
そんな風に思いながらも、これも一つの縁だということで
私は電話番号を受け取りスマホに登録した。

そこで別れを告げ、エレベーターに乗り込むまで
何度も「謝謝」と繰り返す彼ら。

何だか突然の雨に降られたり
道を間違えたりした結果にたどりつた
不思議な経験であったが
これが彼らの日本滞在の思い出の一つになれば
多少苦労した甲斐があるというものである。

昨日の出張では大阪の前に京都にも行ったが
街中で多くの中国人観光客を見かけた。

先日まで欧米系の方ばかりであったが、
いよいよ中国からも多くの人が
日本にやってきているのがわかる日となった。

今私は英語の学習が楽しくて仕方ないが、
そのほとぼりが冷めた暁には
中国語に手を出してみるのも悪くない気がした。

今日も最後まで読んでくれたあなたに謝謝。

ちなみにヒルトン大阪からJR大阪駅まで
私が再び迷ったのはいうまでもない。

再見。


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