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そのこだわり、本当に必要ですか?

あなたには何かこだわりがあるだろうか。

そのこだわりの理由は明確なものもあれば
自分でもよくわからないものもあるだろう。

こだわりがあることは決して悪いことではない。
むしろ、個性や自分らしさの大部分が
こだわりによって形成されていると言っても
言い過ぎではないだろう。

だが、時にはこだわりが変化の障壁に
なっていることもある。

今日はそんなお話をしようと思う。

私が働く会社は繊維関係の商品を製造販売している。

製造工程の中で生地や樹脂製のシートが
裁断されて、色々な加工をされるのだが、
先日その工程を見ている時にふとあることが
気になった。

作業員の方が裁断したシート状の原材料を
木製のパレットの上にとてもきれいに
積載していたのである。

シート状のものを何枚も積み重ねて
次工程に持っていく必要があるので、
積載した原材料が崩れてはならないし、
ちゃんと指定された枚数が裁断されたかを
後から確認しやすくある必要もある。

その結果、作業員の方は1枚1枚を
寸分たがわずキッチリと位置を合わせて
積載していたのである。

これは一見するととてもいいことのように見えるが、
私はこの作業がとてもムダだと感じてしまった。

この作業の目的は上述したように
積載が崩れずに枚数を数えられること。

その目的を達成しようとするためには
別にキッチリと位置を合わせて積み上げる
必要はないからである。

ある程度適当に置いても
位置がずれにくいようなガイドを
パレットに付けることで
積載した原材料が崩れることはないし、
カウントしやすいようにガイドの角部分を
オープンにしておけば問題ないだろう。

この作業員の方に求められている仕事は
”シート状の原材料を裁断すること”であり、
キッチリと積載することではないのだ。

とはいえ、私がこの作業員の方に指示するのは
明らかな越権行為になるので、
製造を管轄するY課長に相談してみることにした。

すると、Y課長からは私があげた2点以外に
次のような理由でこの作業を続けていると回答があった。

①原材料を大切にする精神を持つため
②次工程は顧客と考えるため

この考え方自体は私は否定するつもりはない。

原材料を自分のお金のように大切に扱い、
そして次工程を顧客の様に考えて
引き渡すことは製造業においてとても
大切な考え方である。

だが、この2つの理由を達成するための
方法は何も原材料をキッチリとパレット上に
積載することだけではない。

逆にそのこだわりを持つがゆえに明らかに
生産性が犠牲になっているのである。

製造における仕事とは
決められた納期に決められた品質の商品を
低コストで確実に供給することなのだ。

悪い言い方をするならば
こだわりのために余計なコストを払い、
それを結果として顧客に負担して頂いていることに
なるのである。

当然ながら社内でのこのこだわりは
最終商品の品質には何ら影響しない。

顧客のことを思い、そして自分たちのビジネスのことを
考えるならば、
このこだわりは全く必要のないものだと
私は思うのだ。

とはいえ、私がここでY課長に食いついたところで
それは単なる批判になってしまう。

それならば自分で解決法を考えて試したうえで
提案までするほうが明らかに建設的であろう。

そう思い、簡単なガイドをパレットに取り付けて
原材料のシートを並べてみることにした。

1回目のトライアルだったので、
色々と課題点は浮かび上がってきたものの
明らかに作業者の方がキッチリと並べるよりも
作業性がいいことが分かった。

そして、その結果をもとにY課長に再び
提案をしてみると、
Y課長は苦い顔をしながらもとりあえず
私の提案を聞いてくれた。

この提案が製造に受け入れられるかどうかは
わからないが、
このようなことは実は個人においても
沢山あるのではないだろうか。

冒頭に書いたようにこだわりとはその人の
個性の大きな部分を占めるものであるが、
一つのこだわりがあるがゆえに
本来求めているものが手に入っていないことが
しばしばあるような気がするのだ。

そうならなように、まずは自分で自分のこだわりを
可視化することから始めてみる必要が
あるだろう。

自分がどんなこだわりを持っているのか
気づかないことには修正のしようがない。

一度可視化してしまえば、後はそれを客観的に
必要なものかどうか検討することができる。

ある意味、noteで記事を書くこととは
自分のこだわりを可視化するプロセスの一つである。

あと1か月弱で連続更新が1000日になるが、
この間に紡いだ記事の中で
私は自分のこだわりに沢山気づかされた。

インプットから学ぶことも大切だが、
アウトプットから学ぶこともそれ以上に
大切なもの。

これからもこうして発信することで
メタ認知能力を高めていきたいと思う。

ちなみに私の提案に対してY課長が
嫌な顔をするのは想定していたので、
実際に嫌な顔をされた時には
内心「やはりきたか」と少し笑いそうになってしまった。

言うまでもなく私は顔には出さなかったが、
事前に想定しておくことで
ストレスを軽減できたようで
何だか嬉しかった。

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