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40分の楽しみ方

先日息子をサッカーの試合に送ったとき、
片道40分の道を何もせずに運転するのは
何だかもったいない気がした。

とはいえ、車の中でできることなど
限られている。

そう考えた時に、昔よく聞いていた
エリック・クラプトンのライブDVDを
車の中で再生して音楽を楽しもうと思いついた。

久々に我が家のCD、DVD入れを開ける。

お目当てのDVDは特徴的な形のケースに
入っているのですぐに見つかるはず、、、
そう思ったがなかなか見つからない。

まさか長らく見ないからと処分したのだろうか。

思わず過去の自分を責めそうになったとき
特徴的なケースを発見した。

危うく過去の自分に冤罪をかけるところだったので
一安心しながら、
私はそのケースを車に置いて
息子と共にグラウンドに向かった。

往路は息子と話しながらなので
音を小さくしながらそのDVDを流し、
復路は思い切り音を大きくして
体で音楽を味わう。

家にもいいスピーカーがあるのだが、
あまり大きい音で鳴らすと家族から
ひんしゅくをかってしまうので、
殆どその活躍の機会はない。

しかし、一人で運転する車の中ならば
そんなこと気にしなくてもいい。

前の車の人がバックミラーを見ると
何だかノリノリで歌いながら運転している
妙なメガネが映るであろうが、
そんなの関係ねぇ。

そんな風に思いながら
聞いていると私のお気に入り曲、
Change the worldが流れだした。

エリック・クラプトンの作品の中でも
最も有名な曲の一つであろう。

そのライブと同じ映像がこちら↓

エリック・クラプトン特有のソロギターから
少しずつ盛り上がってきて曲が始まる。

アコースティックのメロディが心地よく
ビートを刻みながら彼の力強い歌声が響く。

そんな感覚を車の中で楽しんでいたのだが、
曲が後半に差し掛かったときに
私の中で何かひっかかることがあった。

この曲の歌詞は思いを寄せている女性に
「星に手が届いたら」「私が王になったら」
自分があなたのために何をするかという、
イタいぐらいロマンチックな言葉を
歌ったものである。

そしてサビの歌詞はこのようなフレーズ。

And I can change the world
I will be the sunlight in your universe
You would think my love was really somothing good
Baby, if I could change the world.

Eric Clapton "Change the world"歌詞より抜粋

”もし世界を変えられるなら
私はあなたの宇宙を照らす太陽になる
あなたは私の愛が素敵なものだと思うだろう
私が世界を変えられるならね”

このような和訳になるだろう。

歯が浮くような愛の台詞であるし
英語でなければなかなか歌にできない
そんなフレーズだと思うのだが、
私はある一つのポイントが引っかかった。

サビの最初はIf I can change the world
と言っていたのに
後半ではIf I could change the worldと
なっているのである。

Can だろうがCouldだろうがどっちでもいいじゃん。

そんな風に思うかもしれないが、
こういうことに気になってしまうのが
私なのである。

前半のIf I can~の方は
ごく普通の仮定法なので
「もし私ができるならば」と訳す事ができる。

では後半のIf I couldの場合は
どうかというと、これは仮定法過去になる。
私達の時代なら高校で習ったので
うっすらと覚えている方もいるかもしれない。

これも日本語にするなら同じように
「もし私ができるならば」となるのだろうが、
そこには明らかに現実的ではないニュアンスが
含まれてしまうのである。

If I am a singer, I will sing for you.
私が歌手ならば、私はあなたのために歌うだろう

この場合、私は歌手になる可能性があると思っているし
なんなら今から歌いだすようなニュアンスがある。

If I were Eric Clapton, I would sing for you.

この場合、私はどうあがいてもエリック・クラプトンには
なることができないので仮定法過去で表現するのである。

なので、ニュアンスとしては
私がクラプトンなら歌うんやけどなぁ。。。
の感じになってしまう。

何となく思い出していただけただろうか。

今まで何度となくChange the worldを
この違いを意識せずに私は聞いていた。

しかし、久々に大きな音で聞いてみると
この違いが妙に気になったのである。

そして、この違いに意識して曲を聞いてみると
後半になるにしたがって
「世界を変えられたらいいんやけどなぁ」の
ニュアンスが強くなっていくことに
気が付いた。

これはまさに一時流行ったJames Blantの
”You are beautiful”の歌詞と同じ構成である。

この曲でも最後に想いを寄せる彼女とは
自分は決して一緒にいられる存在でないことを
歌っている。

つまり、前半に歌っていた美しい歌詞は
妄想なのである。

なんだか妄想と言ってしまうと
すごくチープなように聞こえてしまうが、
少なくとも多くの男性はこのような妄想を
考えたことがあると思うし、
それを人に明かせない恥ずかしさのような
そんな気持ちを抱えているものである。

その気持ちがこれらの曲の歌詞には
とても反映されていて
私達の胸に刺さるのかもしれない。

何だかそんなことを思いながら
DVDを聞いていると
あっという間に我が家に到着してしまった。

家を出発してから1時間半ほどの時間であるが、
出発前にこのDVDを観ようと思い立った自分に
Good Jobと伝えたくなった。

今週末も息子のサッカーの試合がある。
場所は車で片道30分ほどの距離。

次はどんな曲を聞きながら行こうか、
そんなことを考える楽しみもいいものである。

ちなみにこの記事で紹介した
You are beautifulは全米・全英で
とても人気が出た曲であるが、
実は現地では男性人気が悪い曲らしい。

理由は未練たらたらで女々しいから。

そんな女々しさがこの曲の味わいと思う私は
欧米では恋愛は難しそうである。
女々しくてつらいよ。




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