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理屈を知ろうとしない人

先日家に帰ると息子が声をかけてきた。

「パパ、自転車がなんかガタガタいうんやけど
見てくれへん?」

どの家でも同じ傾向があるのだろうが、
我が家でも機械関係の話になると
ほぼ間違いなく私に話がくる。

息子の自転車はまだ購入して1年未満の新しいものなので
ガタガタというような機械トラブルが
起こるとも考えにくい。

変速付きなのでチェーンが外れたのか
それとも、自転車がこけたときに
何かフレームが歪んで動く部分に干渉するのか。

そんなことを考えながら私は自転車置き場に
息子と共に向かった。

症状をみようにも鍵がかかったままでは
動かせないことに気付いたので、
息子に鍵を取ってくるよう指示し
その間自転車の外観を確認するが、
目立った凹みや変化は見られない。

はて、どうしたものか。

そう思っていると息子が鍵を持って走ってきた。

鍵を開けて動かしだすと、
すぐに違和感の正体に気が付いた。

後輪のタイヤがパンクしているだけだったのだ。

パンクしている時に自転車に乗ると
チューブの空気を入れる部分が接地面に来たときに
ガタガタとなるので
どうやらそれを息子は自転車がガタガタなると
感じていたらしい。

私が家に帰った時間からなので
今から直しに行くわけには行かない。

ちょうど妻はその翌日休みだったので
息子と一緒に近くの自転車屋に
パンク修理をしてもらい行って欲しいと
妻に伝えた。

すると、妻は急に苦い顔になり、
「パンク修理ってどうお願いしたらいいのか
わからへんから、パパが行って」
と言うのである。

私は一体何を言っているのかわからず
一瞬キョトンとなってしまった。

私は子供の頃から自転車に乗ってきて
無数にパンクを経験してきた。

その都度自転車屋さんで直してもらい、
その修理の様子を眺めていたし、
毎日往復で30㎞近くを自転車で通学していた
大学時代にはパンクぐらいなら自分で直したり
していたほどである。

なので、自転車のパンクを直すことに対しては
何の抵抗もないし、
どのような修理をするかを知っている。

しかし、妻は自転車屋さんにどのような依頼をすれば
直してもらえるのかがわからないと言う。

恐らく妻はこれまで自転車を自分で
直してもらいに行ったことがないのであろう。

そして、それと同時に自転車のタイヤがどのような
構造になっているのかも知らないはずである。

実は私が見る前に妻も息子の自転車の様子を
見たらしいのだが、
息子がいうガタガタの原因は全くわからなかったらしい。

実際に自転車を動かしてみると
その原因は一瞬で判断できるにもかかわらずである。

妻は自転車というものを利用はしていても、
それがどのような構造になっていて
なぜ自転車が前に進むのかという理屈を
知らないのだ。

これは自転車に限った話ではない。

何か車にトラブルが生じた時も、
驚くほど簡単な理由の症状であっても
妻はその原因特定に至らず
私に丸投げしてくることが多い。

これはもちろん私がいるという安心感ゆえに
あまり考えようとしていないという側面も
あるのだろうが、
私からしてみれば理屈がわからずに使いこなすほうが
逆に不安ではないかと思うのだ。

自転車には自動車の様に車検がない。

つまり、それは乗り手が整備を自分でしなくては
ならないということを意味する。

だが、理屈がわからないと何をどう整備していいのか
わからない。

家庭用の一般的な自転車では前輪のブレーキは
パッド式のものが使われ、
後輪はベルト式のものが使われている。

当然ながらブレーキをかければかけるほど
パッドもベルトも摩耗していく。

ブレーキは安全に乗るために非常に重要な
部品であることは言うまでもないが、
そのメンテナンスも理屈がわからないと
絶対にできないのである。

よく見てみると自転車はとてもシンプルな
機械だけで構成されている。

理屈はわからずとも定期的に自転車屋さんに
見てもらうというのも一つの手ではあるが、
せめて自分が乗る機械については
自分で考えてメンテナンスができるように
なっても悪くないのではないだろうか。

せっかくの機会なので、
今日にでも私がパンク修理をして、
タイヤの中がどうなっているのか、
そしてどのように修理したらいいのかを
見せてやろうと思う。

自転車のパンク修理もよく見てみれば
科学的な面白さに溢れているものである。

子供たちがどこに食いつくかはわからないが
少しでもその面白さに気付いてくれたら嬉しい。

ちなみに、妻に聞くと私に丸投げする案件の基準は
ネジがあるかどうからしい。

言われてみれば買ってきた家具も
ネジがある時点で組み立ては丸投げされてきたし、
子供のおもちゃの電池交換も
なぜか私に振られてきた気がする。

しかし、逆にネジを使わない機械など
あるのだろうか。

妻に問いかけようとして喉元で
その言葉を飲み込んだ私であった。

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