そこにバイアスはあるんか?
通勤バスの車窓から外の景色をふと見ると
通りがかったミニストップの前に
ノボリが立っているのが目に入った。
ミニストップはコンビニの中でも
スイーツに力を入れているイメージがある。
まさにそのノボリはプリンパフェが
販売開始されたことを知らせるものである。
そのノボリを見た時に反射的に
私はある言葉が妙に気になった。
それは”ロレーヌ岩塩使用”という言葉である。
そもそもプリンパフェに塩が要るのか?という
疑問が最初に引っかかったのだが、
それ以上にロレーヌ岩塩が何か全く知らない私が
何となくそのフレーズを見て
「美味しそう」と感じてしまったことに
私は驚いてしまった。
ロレーヌという響きからはなんとなく
フランスの雰囲気が漂ってくるし、
フランス産の岩塩ならなんとなく
まろやかそうなイメージがある。
ミニストップのHPを参照すると
このように記載されいている。
やはり想像したようにフランス産の
塩であった。
だが、私はこの塩自体を食べたことがない。
塩自体の味がわからないのに
実際にこのスイーツを食べて
「おお、さすがロレーヌ岩塩だ」と
感じられるであろうか。
しかも、まだ私はこのスイーツすら
食べてもいない。
にもかかわらず、私はロレーヌ岩塩使用の
このスイーツが妙に特別で美味しそうな
印象を受けてしまったのである。
これはとても不思議な事ではないだろうか。
過去に私は同じようにスイーツで
妙にひっかかる言葉に出会ったことがある。
それがこれである。
職場に置かれているオフィスグリコの中に
この商品が置かれているのを見て、
私は何だか妙に美味しそうに感じて
実際にこのお菓子を購入した。
だが、実を言うと私はビスコが子供のころから
あまり好きではない。
ビスコのクリームにつけれらた独特の香りが
あまり好きではないのだ。
そんな私がこのビスコを美味しそうと
感じたポイントは何かと言うと、
”発酵バター”である。
私は発酵バター自体をこれまで食べたことがない。
バターとは乳脂肪の塊であり、
脂質の含有率は8割を超える。
油は酸化こそすれど、発酵することはないので
発酵バターというのは何かしらの処理をして
20%含有されている部分を発酵させるのだろう。
何となくチーズに近いイメージがあるが、
それはあくまで私の想像にすぎない。
にもかかわらず、私はこのお菓子を
美味しそうだと感じてしまったのだ。
実際、このビスコは通常のビスコと違い、
クリームにあの独特の香りが付けられておらず
とても美味しいと感じた。
だが、これが発酵バターを使っているから
美味しいのかと言われると、
正直全くわからないのだ。
実は私達はこのように本当は知らないのに
イメージだけで判断してしまっていることが
多いのではないだろうか。
私は繊維関係の商品の開発をしているので、
商品を設計したときに
特殊な繊維を使ったりすれば
それを無意識にアピールしたくなる気持ちは
よくわかるつもりである。
だが、それは消費者にとって何も関係ない。
消費者が求めているのはあくまで
商品全体としての性能であったり、
質感なのである。
○○社の××をいう繊維を使ったことは
消費者にとってアドバンテージにならないのだ。
しかし、世の中にはそのようなイメージだけで
訴えかける広告は枚挙にいとまがない。
もちろんそれに素直に従って購入することは
悪いことではないだろう。
だが、その商品を使う時にあなたは既に
広告に記載された言葉がバイアスになって
公平な評価を下すことが
もはやできなくなっているのである。
冒頭で事例に出したロレーヌ岩塩を使用した
プリンパフェにしても、
食べる時には間違いなく塩味に注目するであろうし、
何となくいつもと違う味わいに感じるであろう。
だが、それがロレーヌ岩塩だからこそ
出せる味わいなのかどうかは私達には
全く判別はできない。
極論をするならば、これは広告によって
否、商品を作る企業によって
味覚までもがハックされた状態と言えるのでは
ないだろうか。
「そんな極端な」と思うかもしれないが、
私達が何気なくモノを購入している時にも
このように無意識のうちに私たちの心には
パッケージなどに書かれたメッセージが
バイアスとなり、
その商品を手に取りたくなるように
考えられているのである。
私たちは商品を自分で選んでいるつもりが
実は商品を選ばさせられているのだ。
このようなバイアスを0にすることは
とても難しいことであろう。
それだけ多くの商品に色んな仕掛けが
されているからである。
だが、自分が何かに魅力を感じた時、
もしくは購入したいと感じた時に
それが本当に自分が本心から欲しいと
思っているものなのかどうかを
確かめてみるプロセスはあるべきでは
ないだろうか。
そうすることで必要以上に広告に踊らされることなく
自分が本当に必要で欲しいと思うものに
囲まれて過ごせる割合がグッと高まるのだ。
私は以前この本を読んでから私たちが
いかに色んなバイアスに影響を受けいているかを
痛感し、そこから自分が持つバイアスを
意識するようになった。
きっとロレーヌ岩塩というワードに
違和感を持ったのも、
そのおかげなのであろう。
この本はとても読みやすくありながら、
読んでみると目から鱗がボロボロと
落ちるような内容なので、
まだ読んだことがない方は
ぜひ一度読んでみてほしい。
というわけで、今日の仕事帰りにでも
ロレーヌ岩塩使用のプリンパフェを
食べてみようと思う。←
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