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支配的な質問に答えないこと。(誓いと呪いと)

前々回及び前回のブログより引き続き、先日購入いたしました
宮崎駿さん監督映画作品集より、このたびは
『千と千尋の神隠し』をあらためて鑑賞しまして、そこから
もうすこし考えたことをしるしたいとぞんじます。

前回申したのは、千尋がたくさんの人たちに助けられながら
油屋のてっぺんの奥の部屋に居る湯婆婆のもとへたどりつき、
そこで無事に働くための契約を果たす。
このときにね、千尋、すごいなあ! って感じられたのは、
当初、ハクから言われたとおりに、湯婆婆へと
【ここで働かせてください!】
とだけ言い続ける千尋に対して、湯婆婆は
【うるさいね。静かにしておくれ。】
と言いながら、魔法で千尋の口をチャックする。
このあと、湯婆婆から千尋へ語られることばとして
【でも、まあ、よくここまでやって来たよ。
 誰かが親切に世話を焼いたんだね、褒めてやらなきゃ。
 誰だい、それは? 教えておくれな。】
と告げ、閉じていた千尋の口を魔法を解いて開かせる。
ここで千尋は、またもや
【ここで働かせてください!】
と伝えると、湯婆婆もさらに
【まだ、それを言うのかいっ!!!】
って怒鳴るんだけれども。

このときにね、湯婆婆より
「親切にしてくれたのは誰だい?」
とのように訊ねられても、千尋はこの
湯婆婆の質問には答えず、ハクから言われたように
【ここで働かせてください!】
のみを言う。もしも、千尋がその
親切にしてくれた人の名前を話した場合には、
千尋は仕事の契約を結べない、及び、
名前を出した人たちに迷惑がかかる、とも考えられる。
つまり、ボイラー室での
釜爺とリンとの会話の中で、釜爺がリンに
【おめえ、湯婆婆んとこへ連れてってくれねえか?】
と言ったとき、リンは
【やなこった! あたいが殺されちまうよ。】
って答えたかのごとく、湯婆婆は
「褒めてやらなきゃ」と表向きには言いながらも、
リンが言うかのような「殺される」かのごとくの
被害が起きたやもしらない。つまりはさ、
ここで千尋がある名前を話す、というのは
その人のことを「売る」みたいなことなのだと思うの。
でも、千尋はそうはせずに
【ここで働かせてください!】と言えた。

「質問」という行為とは、けっこう
微妙なところがあると思っていて。
もちろん、人とのコミュニケーションにおいて
質問をするのはとっても大切なことだとしても、
もっと考えるならば、質問者が回答者に対して
行動を縛ることができる、というか。
質問によって、回答しかできないようにさせて
相手を支配することができる、とも思われる。
だからこそ、相手へと質問をするときには
気をつけなければならない、
というふうにも思っているですが。
『千と千尋の神隠し』でのこのシーンにおいては、
千尋は湯婆婆のその質問に答えなかった、
ということは、いわば、千尋はすでに
湯婆婆の支配から抜け出す兆しを宿していた。

昨日のブログでは、『千と千尋の神隠し』とは
「就職活動」のお話しとしても見ることができる、
と申したけれども、だからと言って、たとえば
就職活動の面接中において、面接官の
すべての質問で回答しない、というわけにもゆかない。
面接官には訊きたい質問があり、かつ、
受験者にも答えたい事項がある。
でも、あるときには、湯婆婆のこの質問のごとく
支配的な質問というのもありえて、
千尋自身が答えなかったようにして、
答えてはならない質問もあるのだろう。
そして、そうすることによって、仲間から得られる
信頼もあるやもしらない、と申しますか。

そう考えてみると、
『千と千尋の神隠し』でのこの
湯婆婆と千尋の面接のシーン及びセリフって、
なんだかすごいことだなあ! と思ったんだった。

今回のブログをしるしながら、あらためて
このシーンを見直していると、湯婆婆が
【まったく、つまらない誓いを立てちまったもんだよ、
 働きたい者には仕事をやるだなんて。】
と言われていて、つまり、かつて
湯婆婆はそのような誓いを立てており、
その誓いが、ある意味では湯婆婆自身に対する
呪いのように機能しているやもしらないな。

ハクは、そのことを承知していた。

だからこそ、ハクが千尋へと
「働きたい」とだけ言えば湯婆婆は手を出せない、
と伝えていたということだったのかあ、
って思いました。

令和6年8月20日


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