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伯父さんが体験した怖い話

こんばんは。
石野です。前回の人の縁取りの白い膜について、DMやXのリプで色々お話を聞かせて下さったり、体験やご友人のお話を聞かせて下さり本当にありがとうございました!

中にはほぼ同じものが見えるという方がいらっしゃって、見え方は人それぞれだと言いますが、ちょっぴり仲間ができたようでうれしかったです。

さて、今日は私の「お誕生日プレゼントに稲川淳二のCDをくれる」くらい心霊が好きなのに、超怖がりで幽霊を信じていない伯父さんの話をしたいと思います。

・私の伯父さんについて

わたしの伯父さんは「俺の怖いものは幽霊だ。だが、幽霊を見たことがないからこの世に怖いものはない」と豪語する、激つおの人です。外見がかなりいかつく大きく、浅黒い肌を持つ人なのでぱっと見その筋の人にしか見えないですが、心優しく家族思いの良い人です。

その伯父さんなんですが、心霊番組や心霊映像が大好きで、稲川淳二さんのファンでもあります。

その伯父さんが私の中学二年生の誕生日のプレゼントにくれたのが「稲川淳二のCD 3枚」でした。

そんな伯父さんは幽霊が見えないと言いつつも、実は何度かそれらしいものを見たこと体験したことがある、ということで今回はその中の一つをお話させていただきます。実体験のお話なので、とても短いです。

・海を見つめる人/伯父さんの体験談

12月中旬ごろの冬の日。伯父さんは牡蠣殻を捨てに、牡蠣捨て場にトラックを走らせていました。

牡蠣をあけた後、残った牡蠣殻はベルトコンベアーで牡蠣殻を捨てるための専用のトラックの荷台の中に次々と落ちて詰みあがっていくシステムです。トラックの牡蠣殻がいっぱいになると、それを捨てるためにちょっと10分くらい車を走らせた先にある「捨て場」に持っていきます。

「牡蠣殻捨て場」は陸から海へせり出すような形で作られた場所で、海に落とす格好で牡蠣をトラックから落とします。牡蠣捨て場の四方は金網で囲われており、度々、そこに集積された牡蠣殻を回収しに船がやってきます。

船に乗せられたクレーンで、牡蠣殻が回収されて船に乗せられて行くのですが、その時は硫黄の匂い、というか、何とも言えない卵が腐ったような匂いがその場所から10分以上離れている伯父さんの牡蠣打ち場(作業所)まで強く漂ってくるほどです。(マジで強烈なにおいがします)

つまり、それほどの悪臭で、牡蠣捨て場に集積された牡蠣が回収された日というのは匂いだけで、牡蠣殻を船がとりに来た日だとわかるくらいです。

では、牡蠣を回収しない日はそこまでの匂いがしないのかというとそうでもなく、潮の匂いの他にその場所に行くと、何とも言えない卵が腐ったような匂いが漂っています。牡蠣殻から流出した栄養が海に凪がれてプランクトンが湧いて、そのプランクトンを食べにたくさんの魚がやってきます。魚を食べに色々な鳥もやってくるのですが、人間側としてはあまり長居はしたくない場所です。

用を済ませたらさっさと帰りたいそんな場所で、伯父さんはある日変なものを見たと言います。

いつものようにトラックを走らせて牡蠣捨て場に行くと、牡蠣捨て場の先端の方に誰かが突っ立っているのが見えたそうです。

誰だ、あんな所に立ってんのは。邪魔だな、と思ったそうです。

伯父さんは牡蠣捨て場に入るためのフェンスの扉を開けてトラックを慎重に中に進めると、その後姿に向かって「おーい。何してるんだ。今から捨てるから」と声をかけたそうです。

牡蠣捨て場は意外と広く大型のトラックを横に数台並べても大丈夫なほどの広さがあります。

人がいる場所とやや離れた場所に伯父さんはトラックを停めました。牡蠣殻がいっぱい詰まった荷台を、ボタン操作で斜めに動かして海の方に向けてザザーと牡蠣殻を捨てきるのを運転席で待っていたそうです。

そういえばあの人、もう行ったかな。

そう思って運転席から、サイドミラー越しに海の方を見たそうです。海の方には先ほどの男の人の横顔がなんとなく見えたそうで、なんだか土気色のとても顔色の悪い肌色でぼーっと何をするでもなく海をじっと見ていたそうなんです。

ざっとみると三十代後半くらいの、髪の毛が多めで少し天然パーマがかかったような細身の血色の悪い男性。なんだか、今にも海に飛び込んでしまいそうな雰囲気だったそうですが、牡蠣殻が山のようになっているその場所は飛び込んでも海に落ちるというより、牡蠣の殻の中に落ちるという感じで自殺をしそうな人には見えなかったそうです。ただ。

気持ちわる。

じっとりとなんだか肌に張り付いている感じの青色の上下のつなぎが、なんだかさらに気味が悪くて伯父さんは牡蠣殻がすっかりなくなると、車を走らせてフェンスの前で一度車を停め、扉を閉めてダイヤル式の南京錠をかけたそうです。

そこでふと変だなぁということに気づいたそうです。

牡蠣捨て場に車を入れる前にフェンスを開ける。

そのフェンスにはこの南京錠がかけられていて、関係者以外立ち入りができないようになっている。南京錠の番号は関係者しか知らない。

フェンスをよじ登って中に入ることはできるけど、臭いし寒い牡蠣捨て場に目的もなく入る馬鹿がいるだろうか?

伯父さんはもう一度フェンス越しに目を向けると、やはり海をぼーっと見るようにして突っ立っている青いつなぎの男の人が居たそうです。ただ、足元に影があったかどうかは全く不明で、生気のない不気味な雰囲気にぞっとして、慌てて車を走らせて作業場に入り仲間に話したそうです。

伯父さんは漁業組合の会長を当時していたので、顔も広く仲間づきあいもうまかったのですが、牡蠣捨て場で見たその人物について聞いてみても、誰も知らないと言うばかりだったそうです。

生きているのか、死んでいるのか。
なぜそこにいて、海をぼーっと眺めていたのか。
今でもわからない。
伯父さんはそう言っていました。

また、この場所で誰かが命を亡くしたとか、そういう話は聞いていないそうです。

そんな伯父さんの話。



天然石を極細の糸で編むマクラメクリエイター。天然石をマクラメの技法を駆使して宝石いっぱいのペンダントにしています。