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十和田市現代美術館@青森(日本)

2022年冬に訪問した際の備忘録。

街に溶け込む地域のアートセンター

穏やかで広々とした街に出現するいくつものホワイトキューブ。設計は西沢立衛。街と違和感なく調和しつつ、開放感を保ち、アートに没入できる空間設計は金沢21世紀美術館に通ずるものがある。
十和田市が中心となって現代美術館、アート作品、アートプログラムの3つの要素からなるまちづくりを行うプロジェクト「Arts Towada」の一環として作られた十和田市現代美術館。展覧会以外にも、地域のお祭りや地域団体の発表会、講演会等が開催されており、本当の意味で街に溶け込んでいる。

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白壁全体に描かれたポール・モリソンの風景が。手前の紅葉が塗り絵のお手本に見えてくる。

作品一つ一つと対峙する

絵画の展示はなく、作品ごとに割り当てられた部屋で1つ1つのインスタレーションと対峙しながら鑑賞することになる。
当時、企画展は「インタープレイ」第二期が開催されていたが、コレクション展の作品一つ一つのメッセージ性の強さがより印象的だった。

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ロン・ミュエクの「スタンディング・ウーマン」。肌のたるみまでリアルで、彼女を観察しているつもりが、彼女と異なる生きた自分の存在について想いを馳せることになる。

立体作品は絵画と異なり様々な角度から見ることができるし、屋外で風を感じながら鑑賞する作品もあり、中に入ることができる作品もある。絵画が並べられているような美術館ではいくつかの作品をスキップすることもザラであるが、ここではどうしても一つ一つの作品に足をとめ、対話を行うことになる。少なめな展示数ではあるものの、鑑賞後は充実感と疲労感に満ちていることに気づいた。
芸術鑑賞とは、作品から与えられる情報を一方的に受け取る行為ではなく、作品と自分との間の空間で、双方向的に情報をやり取りし、自分について知り、自分を変化させていく行為ではないか。動線に導かれインスタレーションごとに部屋を移動した先で得られた気づきであった。

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人的彫刻が連なったソ・ドホの「コーズ・アンド・エフェクト」をみて、人間は常に集団的な関係において存在していること、自己と他の関係が明示的に表現されているように感じた。
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ストリートアートも盛んで。草間彌生の作品愛は「とこしえ十和田でうたう」の中(上?)で遊ぶと言う贅沢な経験もできる。

おわりに

十和田市現代美術館は、アートによる市民の豊かさへの貢献、街の活性化、創造的な循環経済の醸成といったミッションが明確であり、全国的な知名度や開催される地域的な催しを見ると実際にそれらを達成しているように思う。この成功の鍵はどこにあるのか。
美術館に求められる役割、市民との関係性が変化しつつある現在において、公立美術館のあり方のモデルケースとして学びの多い美術館ではないだろうか。

公式サイトにコレクションの詳細な解説も載っている(https://towadaartcenter.com)。

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