これ聴いてました② UNICORN/雪が降る町(1992年)

とりあえず終わりました。
後は家族に見せてOKが出ればそれで終わりなのですが、いかんせん今両親共に買出し中なので、しばらくは待ちぼうけです。
という訳で、今はぼんやりと力なく机の前に座っている状態。さっきまでこの曲を聞き流していました。

元々私は正月が苦手です。
高校時代より、試験・進学・進路等、その時々の理由によって、常に数日後、数ヶ月後の未来を綱渡りで凌いできた私にとって、年末年始というのは一種の猶予期間である以上に、これが終わるといよいよ逃げる事はできないというプレッシャーを始終覚える時期でもありました。恐怖を忘れられるのは眠っている時と、紅白を観ている時位です。
そして、そんな自分自身の感情と、世間のお祝いムードの温度差に対して、時に苛立ちを感じる事さえありました。

けれども、今年の正月は大分違います。何しろ、新型コロナウイルス感染拡大によって、世間では帰省や旅行は勿論、外出もうかうかとはできません。先の見えない状況下、テレビのニュースは毎日感染者数と対策の話題で、一年を振り返る余裕もなさそうです。普段通り楽しい晴れ着姿のタレントのCMが流れたりもしますが、その時でさえどこか凍りついた空気を感じざるには得られません。

無論、私の気持ちがそれで上向くといえば当然逆で、むしろこの一年自体が「長い正月」のような心持ちでした。今も来年以降の大学・進路活動はどうなるのかという不安が、起きている間ずっと頭の片隅に残っています。この一年は公私共に、全く満足できなかった年でしたが、それが来年も続くのではないかと考えると、とても恐ろしくなります。
ただ、不謹慎ではありますが、例年と違うのは、苦しんでいるのは私だけではないというのを否応なしに意識する事です。陰鬱とした気分は変わらないのですが、それでも去年よりは少しだけ冷静になる事ができます。

UNICORNは、高校時代に私が本格的に音楽を聴き始めた時の、最初期のミュージシャンです。母が持っていたベスト盤(解散直後に出た『THE VERY BEST OF UNICORN』)を聴いた時、一曲ごとにかなりの衝撃を食らい続けた記憶があります。もっとも、大ファンという程胸を張れる訳ではなく、その時のメンタルによってつかず離れずの関係ではありますが、それでも活動自体はずっと追い続けているミュージシャンの一つです。

この「雪が降る町」では、クリスマスと元日の間の数日間、それも喧騒ではなく静寂の光景が、ゆったりとしたノスタルジー溢れるメロディーで表現されています。
前述のベスト盤で聴いた時は、例によって衝撃を受けたと共に、それまで私が上手く把握できなかった、自分の中の正月像というのを気づかされたような気がしました。

この曲で好きな所は色々あるのですが、強いて一つ挙げるなら歌詞の「世の中は色々あるから」の一節でしょうか。「あるけど」ではなく、「あるから」。たったそれだけの違いなのですが、そこには正月であろうがいつであろうが、常に混沌とした世間へのやるせなさと、それでも時は過ぎていくという無常感がよく表れていると思うのです。同時に、それをくどくどと表現せずに、さらりと済ませる奥田民生さんの詞の中に、私は今でも、自分に足りない、「こう生きれたらいいな」という、一種の理想を感じてしまいます。
加えて、今年は文字通り「色々あった」からこそ、この言葉には例年以上にそんな強い感慨を覚えます。

あいにくバンドの公式動画がありませんので、代わりにキッズバンド・The Dropkicksのリモート演奏によるカバー動画を紹介します。
リモートという、大人でもなかなかに難しそうな条件で、きちんと演奏が形になっているのが素晴らしい。楽器が少ないのもあってか、原曲以上にゆったりと落ち着いた雰囲気です。
以下に原曲のSpotifyリンクも貼っておきます。

https://open.spotify.com/track/5GhZX2MUqHpIAWt7zqkyuf

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