改造人間

今日、初めてMRIを受けた。
腰痛が酷くて、精密検査するためだ。

機械にベルトで固定され、手にはブザーを持たされた。「検査中、気分が悪くなったら押してください。一度中断しますから」と言われ、機械の中に入れられた。

正直、とても怖かった。台に固定された人間を改造する、みたいなシーンは映画でよく見るが、まさか現実で自分が改造される日が来るとは思ってもいなかった。

スパイダーマンに出てくる悪役のドクターオクトパスのように背中から配線が出ている改造人間か、トランスフォーマーみたいに形が変わる車に変えられるのか。はたまた脳みそだけ別の器で生きてる的な、よくアニメで見かけるコミカルなやつか。

考えれば考えるほど、怖くなったし、優しそうな検査技師がサイコパスな博士に見えてきたから、考えるのをやめようとしたが、恐怖を目の前にして人間は思考を止めることはできないのだろう、無理だった。

「検査中、大きな音がします。怖がらなくて大丈夫です」と、博士は最後の言葉を言い放ち、安全な別室へと移動した。

ブォンブォンブォンブォン、ブーーーーーブーーーーー、カチカチカチッ。

大きな音が鳴る。
「目は開けていても、閉じていても大丈夫です」と言われたが、改造されている最中の自分を受け入れられない、と思いずっと目を閉じていた。

ブォンブォンブォンブォン、ブーーーーーブーーーーー、カチカチカチッ。

大きな音と、改造人間にされているという恐怖で気分が悪くなったし、脳裏では、楳図和夫描くおさげ髪の女の子がギャーーーッとずっと叫んでいる。頭の中はパニックのカーニバル状態だ。

本当はブザーを押して一回検査を止めてもらいたかったが、検査室入札前に、閉所や暗いところが苦手ではないですか。と聞かれ、大丈夫です。と答えてしまった手前、途中で怖くなったことを伝え辛かった。

博士は、私の人見知りの性質を熟知した上で、事前にそういうことを確認したのだろう。入念な準備には脱帽だが、なんてサイコパス野郎なんだ。凶暴な改造人間になったら、真っ先に食べてやるからな、とだんだんイライラしてきた。

ブォンブォンブォンブォン、ブーーーーーブーーーーー、カチカチカチッ。

一定のリズムと、同じことをぐるぐる考えているからか、だんだんと眠くなってきた。

ブォンブォンブォンブォン、ブーーーーーブーーーーー、カチカチカチッ。

ブォンブォンブォンブォン、ブーーーーーブーーーーー、カチカチカチッ。

自然と恐怖は体から抜けていた。きっと、もうすぐ改造が終わるのだろう。目を覚ましたら、どんな姿になっているのか、想像はつかないが、どんな姿でも受け入れられる気がした。

ガチャ

部屋の扉が開く音がして「検査が終わりましたので、ベッド動かしますね」博士は優しく台を動かし、素早く機械から私を解放した。

「以上になりますので、お忘れ物ないよう別室でお待ちください」

優しい声だった。きっと思うように改造がうまくいったのだろう。不思議と凶暴な感情は芽生えなかったので、対戦闘ロボット用ではなく、花に水をあげるような実用的なロボットになったのだと思う。

腰痛の原因も椎間板ヘルニアだということがわかって、一件落着。改造人間なってしまったが、凶暴でなくてよかった。優しい気持ちで家に帰って、我に返った。

何かの拍子で対戦闘ロボットになるのかもしれない。

私の大好きなエージェントウルトラという映画で、普通の生活を送っていたジェシー・アイゼンバーグが戦闘用改造人間にされていたことを何かの拍子でその事を思い出し、最強兵器に戻る。ということがあった。

私もその可能性がある。
そうしたら、真相を博士に聞きに行かなければならない。そう考えると、またソワソワしてきた。

私の改造人間物語は、まだまだ始まったばかりだ。

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