54.夏になったら考えよう

 昨日、いや、一昨日か。仕事でどうにもやるせない出来事があって、100%やり切れなさでいっぱいになって帰った日があった。

 帰り道に、イヤホンでジャスティン・ビーバーのHold Onっていう新曲を聞きながら、最寄り駅まで駆け足したら、苛立ちの3割くらいは吹き飛んだ。

 家に帰ってからお風呂に入ると、さらに2割減って、夜寝る前に彼女に話を聞いてもらってようやく4割減。寝ても覚めてもしぶとく残っていた1割は、今朝読んでいた小説のある一節を読んでついに消滅。

 主人公と、もう一人の登場人物が、海辺で食事しながら会話をしている場面。物語の終盤を決定づけるような、とても大事に思えるセリフに対して、主人公の女の子が返した言葉が「秋になったら考えよう」という一言。

 あー、そうだな、と思って。頭に残っていたあれやこれやは、別にいま考えんでもいいわと思って。理由も答えも痛みもなにも、いまここで受け止める必要なんてどこにもないなと思った。

 それこそ夏ぐらいになったらまた考えればいいやと思ったから、今日もいい休日を過ごせた。ジャスティンと彼女と、風美という名の主人公に感謝。

 話は変わって。こないだ彼女が家に来ていた時の出来事。

 毎朝起きるとわたしたちは大体いつも、裸になって体重計に乗る。今日は昨日と比べてどうだったとか、何ちゃらの数値が上がった下がったとかお互い報告をすることもあれば、しないこともある。

 わが家の体重計は、体重と体脂肪率、骨量と筋肉量、あとは内臓脂肪率と体内水分量まで測って数値を出してくれる。普段、彼女とはお互いの細かい数字まで報告することはないから、大まかには体重がどれくらいっていうのは知っている程度で、詳しい数値まで知っているわけではない。

 ただその日の朝はたまたま、彼女が体重計に乗っているときにわたしもそばにいたから、よこで一緒に体重計のモニター画面を見守っていた。そこで驚いたのが、彼女の体内水分量。

 一般的に、人の体重の6割を水分が占めているというのは知っていて、女性だと55%前後が標準だったかな。わたしはいつも、52〜54%をいったりきたり、たまに50%を下回ってしまう朝もあって、わたしは水分少なめ人間なんだなとぼんやり思っていた。

 そう。それで。その日に彼女が体重計で叩き出した数値を見ていたら、なんと水分量が66%って表示されていた。調べてみたらね、これはもう、ほぼ赤ちゃんの数字。赤ちゃんの水分量。むしろ赤ちゃんより多いくらい。おどろいてて、いつもこんなに多いの?って聞いたら、大体そうだよって。

 まじかよと思ったし、どうりで、とも思った。

 彼女のモチモチの肌とか、抱きしめたときの弾力、柔らかさとしっとり感って、そうか、水だったのかと合点が入った。思えば1才の姪っ子を抱っこした時のあの感覚と、思えばとてもよく似ている。軽いのに、重い、というか。

 だからなんだという話ではないんだけど。

 地球の表面の7割は水だし、映画でも音楽でも絵画でも何でも、人がつくるものって、色んなものの象徴として水が比喩的に登場するし。

 人のなかにも、たっぷりの水があって、その量は人それぞれ全然ちがうんだなっていうことに改めて気づいて、これからまた水をみる目が変わりそう。いや、どうだろう。

 彼女が、今の職場を辞める日が決まった。そこからしばらくは向こうで準備をしてから、大阪に来る。夏頃になるかな。1年くらい前からふたりで準備してきたことが、少しずつかたちになってきた。最近わたしは、洗面所の収納を変えたり、服の棚を処分して新しくしたり、こっちでできることを、日々せっせとやっている。

 今年も夏には、ふたりで湖に遊びに行けるといいな。できれば北海道。どうかな。

 じゃあまた。おわり。

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