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MOVIE REVIEW 「SEOBOK/ソボク」

(監督:イ・ヨンジュ 主演:パク・ポゴム、コン・ユ 2020年/韓国)

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BTSメンバーとも仲が良い、韓国の国民的俳優、パク・ポゴムが、遺伝子操作で作られた死なない人間・ソボクを演じている。

余命わずかで自暴自棄な生活を送る情報局員のキボン(コン・ユ)は、ソボクの不思議な力を利用しようとする悪い奴らから彼を守ることを命じられる。

設定は完全にSFなのだが、「生きること」「死ぬこと」をテーマにしていて、不思議なほど非現実感がなかった。

取り急ぎ言いたいのは、とにかくソボクがかわいい。はじめて研究所の外に出て、見るもの全てが珍しく、キョロキョロと四方に気を取られながら歩く姿は、子犬のように愛らしい。

小さな洋品店を見つけ、ずっと着てきた真っ白な服からちょっとダサめの若者向けの服に着替える様子や、はじめて食べたカップラーメンに感動してひたすらに食べ続ける様子もめちゃくちゃキュートで、どんどんソボクにハマっていってしまった。

最初はぶっきらぼうだったキボンも、ソボクの純粋さや裏表のないマイペースさに惹かれて次第に心を許しはじめる。韓国では親しい間柄の年上の男性を「ヒョン」と呼ぶ習慣があるのだが、「そろそろヒョンって呼んでくれよ」と、ソボクに言うほどだ。

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永遠に途切れない命。それは死を恐れる人間からすれば限りなく魅力的であるけれども、死ぬことがありえないということもまた、虚しいものでしかない。

「生き続けることも、死ぬことも怖い。どうしたら僕は怖くなくなるの?」変えようのない自らの運命を嘆くソボク。その想いが切なくて、苦しくて…。

ソボクが自分の母親だと語る、ソボクを作った研究所の女性との密やかな絆もまた、強く胸を打った。女性自身が過去に負った深い傷と、ソボクを作った理由を知ったとき、人は「悲しみ」という感情をもとに、歪んだ「愛」を生み出すものなのだと感じた。

劇中、ソボクがギホンを「ヒョン」と呼んだシーンあたりから、私はずっと泣いていた。彼は運命を受け入れ、たくましく美しい生き様を見せる。普通の人間として生きてこられなかった、そしてこれからもそうであろうソボクという存在に、人間の素晴らしさを教えられた気がする。

公式サイト https://seobok.jp/

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