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やる気は出さなくていい。頑張らなくていい。『あやうく一生懸命生きるところだった』を読んで。

 こんにちは。はづきです。投稿が途絶えてしまっていましたが、現在の会社を退職すべく上司へアプローチしておりました。辞める方向へ気持ちも固まりました。ああ、早く自由になりたい。

 人って、迷っている時に、もう気持ちは決まっているんだけど、あと一押し、誰かに背中を押してほしいとか、この選択でよかったんだと思える何か確たるものが欲しい時ってあると思うのです。

 退職を決めた私にとって、あなたは間違っていないよ、と思わせてくれたのがこの本でした。

 ハ・ワン氏著、岡崎暢子氏訳の『あやうく一生懸命生きるところだった』です。

 著者は、やる気に燃える者が、経験が積めることをウリに少ない報酬で会社にこき使われてしまうことを「やりがい搾取」と揶揄しています。「世界は僕らにやる気を強要し、僕らはやる気を見透かされ、足元を見られて搾取される。だから、やる気をむやみに見せるのは危険」というのです。

 「やる気」にポジティブなイメージしかなかった私にとって、その発想は晴天の霹靂でした。だって、小学校の時、先生が「やる気!元気!根気!」ってあんなに言っていたのですから。むしろ「やる気」がない者はダメ、みたいな刷り込みすらあります。

 「やる気とはそれほど頻繁に生まれるものでも、持続可能なものでもない。やる気はすり減る。だから、むやみに使うと本当に必要なときに使えなくなる。」

 まさに私がこれでした。育休から復帰して、さあバリバリ働くぞ!と、私はハンデ(子ども)があって早く帰るけど、成果は出しますよ!と、やる気を撒き散らしてすらいました。そうすれば社会が認めてくれるような気がしていました。

 自分の体のことも、家族のことも、顧みてはいなかったかもしれません。その結果、体を壊して病休を取得することになりました。

 女性の活躍推進とか、仕事と家庭(育児)の両立とか、多用するのはやめてほしいものです。それは一般論、理想論であって、必ずしも個々の現実に当てはまるものではないのです。働くママでなければいけないようなプレッシャーを与えないでほしい、ということです。

 私の退職についてもしかりです。世間は私が安定した正社員生活を辞めることに対して、「もったいない」と口をそろえることでしょう。事実、上司や母からもそのように言われました。

 しかし、一般論は必ずしも普遍的なものではありません。親を敬えみたいな風潮がありますが、例えば親が犯罪者だったり、そこまでいかなくても毒親だったりした場合は、敬うどころか関わらなくたっていいのです。

 ところで、「やる気」とよくセットで語られるのが「勉強」です。勉強も頑張ったらいけないそうです。自分の好奇心のあるものは努力せずとも自らどんどんやってしまいます。強制されて、むやみに頑張ると成績は落ちてしまうこともあるといいます。

 子どもたちはまだ勉強をする年ではありませんが、上記の話を夫としたところ、「勉強」という単語は中国語にも存在するようで、「勉強は中国語で無理やりって意味だからね。」と言っていました。(夫の第二外国語専攻は中国語だったとのこと。)

 「やる気」も「勉強」も動機付けが世間や親から与えられたものであれば、それはプレッシャーでつぶれますよね。

 「やる気を持って頑張ります」とかはもはや呪いの言葉といっていいでしょう。

 「頑なに張っている」状態で、ただ世間からプレッシャーを感じて「やる気」を無理やり作り出していた私。

 自分をすり減らして毎月決まったお給料をもらうことに、一体どれほどの価値があるのでしょう。

 皆の働き方も生き方も、皆違って皆いいのです。

 そもそも世の中に「しなければならないこと」なんて案外少ないものです。もちろん法律を守ったり、交通ルールを守ったり、人を傷つけたりしてはいけないとかはあります。でもそれ以外は、本来自由なのです。

 毎朝スーツを着て○時に出社、など会社が作ったルールに過ぎません。合わなければ、辞めればいい。ひととき社会から離れて無給の時期があってもいい。まして子育て世帯ならなおさら。

 著者は「あなたの内面はパンツに表れる」としていますが、言い得て妙でハッとさせられます。人からどう思われるかを気にして、私も外見だけ取り繕っていたようです。

 自分を大事にできない人が周りから大事にされるでしょうか。また、人を大事にできるでしょうか。

 私は下着だけでなくパジャマもボロボロというか、ボーダーの可愛くない部屋着をしばらく着用していたので、一新しました。

 柔らかく暖かな綿素材で、グレーの生地にピンクのバラがあしらわれたパジャマを買いました。一目見た息子が「可愛い!」と飛びつき、言葉を覚えつつある娘も「かわいー!はな!」とすぐに気づいてくれました。

 ああ、こういうことか、とふと笑っている自分がいました。

 筆者は期待しすぎないことで人生が意外と悪くないと思えると最後につづっていますが、これは宮澤賢治の『雨ニモマケズ』に通じるものがあります。

 欲を持たず怒らずいつも静かに笑っていられれば……正直、それができたら楽でしょう。結局低空飛行が勝るのでしょうか。

 わかりますが、もう少しあがきたい若い自分がいるのも事実です。

 ただし、この本を読んだからには、私、学習しています。欲望も期待もやる気も、あふれてきたら無理におさえるのは体に悪いです。

 だから、そっと自分の中で密かに育むことにしました。

 相手に悟られない分には、まだもう少しあがける気がします。

 

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