見出し画像

エッセイ『ツバメの宇宙』

32歳の時、突然絵を描き始めた。
私自身理由なんて分からない。ただ目の前に買ったばかりハガキサイズのスケッチブックと青系のペンがあった。
『最初は遊びだったんです。』と警察24時の逮捕された人みたいな出来心。
言わば、『魔が差した』ようなもんである。
私はそれまで私に絵を描く事を禁じていたようにも思う。
それは絵が苦手だと言う自意識があったから。
人と同じ様にとか、目の前の物を描写する事が出来ない。
美術教師には何度も絵を直されたし、母親には創るという行為自体を否定されていた。
だけど『ツバメの宇宙』は何故か描けた。
確か3時間くらいかけて夢中になって描いた覚えがある。
試し書きのつもりがいつの間にか1枚の絵になった。
何だかすごく嬉しかった。
ちゃんと紙が埋まって下手くそでも1枚絵が描けたのが嬉しかったんだと思う。
絵を描いたらちゃんと名前を着けよう。そう直感的に思った。
何故絵に名前をつけようと思ったかもこれまたよくわからない。
でもちゃんと作品になったから名前はつけなくちゃと思った。
タイトルの『ツバメの宇宙』は絵を見て思いついた。丁度インクの色がツバメの青さに似ていて、なおかつ絵が宇宙を思わせるように感じたからだ。
そして一言の『ツバメの飛んでいる空は宇宙と繋がっている!』は我が家に巣を作って巣立ち前に食べられてしまったツバメの子供への鎮魂の意味を込めた。
空は宇宙、もっと上の天国と呼ばれる所まで繋がっていたら、巣立つ前に食べられてしまった子たちも自由に羽ばたけるんじゃないか。
と独りよがりな鎮魂の意味を込めた一言だった。
ここからルーティンとして私の作品にはタイトルと一言がつけられるようになった。
この1枚が描いてSNSに上げたところ『こんな表紙のノートが欲しい』と従姉妹のMちゃんに言われ、すっかり調子に乗ってそこで初めて自分から『絵が描きたい』と思った。 
そこから約8年。健やかなる時も病めるときも絵を描いてきた。
たまに描けない時もあった。
でも今の生活を支えているのはやはり創作の喜びだと思う。
『ツバメの宇宙』は私の宇宙を広げてくれた作品でもあるのだと思う。
でも売っちゃったけどね☆。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?