叔母の着物と人生のお話
父の妹である叔母のために祖母が購入したお雛様を譲り受けました。木目込みでできた人形の姿を見ていると祖母の叔母への愛情を感じます。只今、その叔母は人生の看取りステージにいます。
お雛様よりも約1年ほど前に叔母の箪笥に眠る着物を譲り受けました。
どこかで読んだ着物と人生についての次のようなくだりがあります。
「着物には、着る人が授かった運命と切り拓いてきた人生が映し出される。」
譲り受けた叔母の着物を見て、改めてその通りだと思いました。縮緬の小紋3枚と染めの羽織1枚。小紋は白地にピンクの矢羽紋、薄黄色地の草花紋、濃いピンク地の抽象的な花紋、どれも八掛の色がとても愛らしいです。羽織は葉の地紋のある生地に絞りで紅葉が施されたピンクのグラデーション。叔母は草月のお花をやっていましたので、娘時代のお稽古用かなと推定します。おそらく、いずれも祖母が叔母のために誂えたものと思われます。
叔母は年の離れた男兄弟の末の妹。家族に大切にされたことでしょう。私が譲り受けた着物は、祖母に擁護されていた時代の授かった運命のようです。
その後、祖母が亡くなり、再婚をした伴侶が亡くなり、飼い犬が亡くなり、年の離れた男兄弟も亡くなり、子どものいない叔母は1人になりました。
自宅の脇にある陶芸小屋で花器や食器を作り、庭で季節の花や実のなる木を育てていました。私が秋刀魚用のお皿が欲しいと言うと細長い平皿を作ってくれ、梅が取れるとジャムにして送ってくれたこともあります。たまに会うと叔母は私に陶芸小屋や庭を案内して、こんなことをして遊んでいるんだと楽しそうに言っていました。
私は着物を着た叔母を見たことはありません。叔母が1人で人生を切り拓いた時代には、おそらく着物を着ることはなかったのではないかと思います。祖母が誂えたであろう娘時代の着物以外に箪笥の着物は喪服しか増えていないようでした。
授かった運命は着物を誂えてもらった祖母に擁護されていた時代、切り拓いてきた人生は孤独を楽しみ孤独と向き合う時代。叔母の着物を見ていると、人生はなかなかいろいろだなぁ〜と思う、着物がたりです。
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