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小裂標本ができました。

祖母、母が大切にしていた着物のハギレ。昔の人は小さなキレを捨てずに大切にとっておいたようです。また、着物のワードローブを把握するためにキレを繋いで見やすくする工夫もあったようです。それらを受け継ぎましたので母の記憶があるうちに標本として整理してみました。また私の着物のハギレもいつか受け継いでくれる誰かのために標本に入れることにしました。

ところでハギレという言葉についてですが、漢字にすると端切です。切り端の布ということでしょうか。ハギレについては『ハギレの日本文化誌 〜時空をつなぐ布の力〜』(福島県立美術館、2006)というとても興味深い図録があります。その中にハギレを継ぎ接ぎした寄裂仕立ての美しい染織品の数々が掲載されています。それらの染織品を見ると、ハギレはそのモノ自体は端切かもしれませんが、何かの付加価値をつけることで単なる端切ではなくなるとことに気づかされます。というわけで、私はハギレに「母の記憶」という付加価値をつけて小裂(こぎれ)標本と呼ぶことにしました。

標本は和紙の間に小裂を挟み、ラベルを付けてクリアファイルに入れました。
一覧表にするとこんな感じです。

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それらをまとめて箱に納めます。箱は頂き物の牛肉の入っていた箱に外側に緞子、内側に辛子色の和紙を貼ったものです。店構えのいい経具店の職人さんに貼ってもらったもの。たまに取り出してうっとりと眺めることにします。

捨てられずに大切に受け継がれたハギレ、人の記憶が記録されてできあがった世界で一つだけの小裂標本です。

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