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よせぎれの風呂敷

友人のお母様が残した和箪笥の整理のお手伝いをしました。箪笥二竿の中には着物、反物、着物をほどいた裂、その他思い出の品などなどがありました。友人たちと約3時間かけて、残すもの、リサイクルに出すもの、捨てるものに分けて、残すものは引き出しにわかりやすく分別しました。友人の一人が着物の着付講師をしているので着物レクチャーを交えながらの楽しい時間でした。
 
箪笥の中には友人のお母様の大学の卒業論文や免状などが入っていました。着物や帯、羽織の色柄からは和のお稽古事を嗜むお母様のこだわりの趣味性が伝わってきました。また、ほどいた裂は、子供用の鮮やかなものや若い頃の華やかなものなどがあり、古い裂の思い出を大切にしていたのだろうと想像できました。箪笥から一人の女性の人生の一部を拝見したような時間でした。
 
私は中でもほどいた裂にとても心惹かれ、そのうちのいくつかをいただいてきました。箪笥に眠っていた裂をアップサイクルデザインして普段使いできるモノにできないかなとあれこれ考え、まずは風呂敷にすることに。使用する裂はおそらく子供用の着物をほどいたのではないかと思われる鮮やかな色の絞りや縮緬の染めなど。風呂敷であれば鮮やかな色柄であっても普段使いできそうです。衽や襟の部分など反物の幅より細く長いもので、それらを繋ぎあわせて四角形にしました。材質は古くて柔らかく手に優しい感じでしたので、丈夫さよりも優しさを優先してミシンではなく手縫いに。チクチク針を進めながら、どんな着物だったのか、誰の着物だったのか、なぜ箪笥に眠っていたのか、たまに箪笥から出して眺めていらっしゃったのか、などなどあれこれ想像を巡らせ仕上げました。
 
手持ちの木箱を包んだ風呂敷の佇まいを見ていたら、古い裂が生き返ったように見えました。長い間箪笥に眠っていた古い裂をアップサイクルデザインした、柔らかくて手に優しいよせぎれの風呂敷です。

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