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「リメイクで楽しむ帯の仕立て」に参加しました。

横浜市技能文化会館主催の横浜マイスター塾「リメイクで楽しむ帯の仕立て」に参加しました。好きな生地を持ち込んで4回の仕立て実習で名古屋帯を仕立てる講座。講師は水守康治さん、帯仕立て職人では日本で唯一、黄綬褒章受章の方です。

私が持ち込んだのは母が20代から50代に作った6種の着物の残り裂。
・20代 朱色絣お召し 着物から道行に直したもの
・30代 柿色小紋 着物
・30代 朱色菊柄 羽織
・40代 樺色草木染め 着物
・40代 金茶地更紗 着物
・50代 梔子縮緬色無地 着物
今年米寿の母の半生の着物といったところでしょうか・・・。

実習では、まず6種の裂を繋いでお太鼓部分と胴回り部分と手先部分の総合計の自分サイズの長さにしました。そして幅を決めて袋縫いにし、帯芯を縫い付けていきます。この縫い付ける作業がとても難しく参加者全員が大苦戦。表地に糸が出ないように針を入れるのは音と指先に伝わる感覚のみ。水守さんはこの難しさを伝えたかったよう。型崩れせず長持ちする帯は丁寧な帯芯の縫い付けにありここが職人技の見せ所、素人が一朝一夕でできるものではありません。そして裏返してアイロンがけし、細かな部分をまつり縫いして仕立て上がりです。

実習以外では水守さんの作品を見せていただきました。お太鼓と胴が二部式でリバーシブルになっていたり、お太鼓の部分に伊達襟のようなチラッと見える着脱式のスペアの布を入れるなど、一本の帯を様々な組み合わせで楽しめる遊び心あふれる名古屋帯。一方、刺繍をびっしりした絽を別の織に切嵌めした反物から仕立てた袋帯はプライスレスで溜息ものでした。

また、着付教室や着物販売店とは異なる、作り手の視点でのお話は「へえ〜!!!」の連続。
帯芯は色々あり、値段にすると10倍の差になります。最高級の正絹の帯芯は触ってみるとふっくらしていました。実習で体験したとおり、丁寧な帯芯の縫い付けなど、帯は表から見えないところにとても手間暇がかかります。水守さん曰く「お安くしておきます」とはイコール「手を抜いておきますよ」という意味だとか。
最終回に聞いた「帯に終わりはない」の言葉が心に響きました。作り手のお話を聞くことで、約4mの単純な形態の長い裂からできた帯には、日本の服飾文化の面白い複雑さがたくさん詰まっていることを知りました。

さて、母の半生の着物の裂から仕立てた帯。色無地や地味な大島・結城に合わせやすいように胴の部分は朱色の絣お召し1種類にし、残りの5種類はお太鼓と手先にレイアウトしてみました。長さは私の胴回りにジャストサイズ。6種の裂と水守さんから教えていただいた帯にまつわるあれこれがぎっしりと詰まった、プライスレスの宝物の帯になりました。

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