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川端康成 川の音


 川端康成の本が好きです。言葉遣いや描写表現、どれも私が今までで読んできた中で、一番だと思っています。「雪国」のラストシーンに衝撃を受けてから、かれこれ7冊目くらいでしたが、これまたとても良かった。

 えっっ!?待って…これで終わりですか!?!?終わらないで!!!という読了感。名作。何が名作かって、行動やそれぞれの人物の細かな所作が、一つ一つ心に残るような所がいい。たたずむ菊子の買い物カゴの中から、枝豆が飛び出している描写は、それだけで夏の汗ばむ感じや蝉の鳴き声が聞こえるようであり、そこまでの話の流れからは菊子の寂しさを感じずにはいられない。主人公の、能面を見た時に、はっと艶かしい女らしさをやけに生々しく感じてしまう一部始終にはもう顔を机に突っ伏してしまった。こんな表現があるのか…と。今、宮藤官九郎脚本の「俺の家の話」をみているからなおさら印象にのこったんだと思う。もし川端康成が生きていたのなら、どう感じて生きていたのか、一目会って知りたい。どれほど内観的に生きて、このような文章が生まれるのか。菊子の堕胎のシーンでは、ゴッドファーザー2のケイトとマイケルの対話のシーンが想起された。

 ある物事に対して、知れば知るほどその見方が180度コロコロと変わっていく。知らない方が幸せだったかもしれない。しかし知れば知るほど、真実に近づくというのも、事実だ。真実は残酷なもので、それが自分の希望と離れていても、見つめなければいけない。老いと共に、彼の感情が追いつくのが一呼吸遅れ、その感情がやっと追いついた時、山の音が呼応したのではないだろうか。

 今は掌の小説を読んでいます。もし美しい日本語表現を使っているのような本を知っていたら!!ぜひ!!教えていただきたい!!絶対読みます!!

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