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短歌

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記事一覧

月のウィータ(2016-2018)

ああ友よ星とスミレを匙に溜め夜によりよく我をしとねよ ふるさとは要らない黒の背広着て高き…

顔なき友(2018)

またシャツに穴あけましたね寝たばこの癖は千年直さないまま ネクタイが互いの首を締め付ける…

象牙の塔(2020)

夜を編み上げればひとはそのなかで猫を飼おうと言い出すのかも 果てしなき熱病に影は君臨す蒼…

有翅・劣化・代償(2019)

「偽果熟れり」 販売機の罅割れし声 鉄の踵で花を辿れば みな夏の殉ずるときを待っているひ…

オートマティスム2021-2022

イドの奥底〈Ⅲ〉 (2015*2021reboot)

わが夜を訪ねよ 月は見上げるな ここは愉快な王国じゃない わが夜をさらに訪ねよ キミは「…

イドの奥底〈Ⅱ〉 (2015*2021reboot)

眠れぬと申告しては深刻な顔しすこぶる過激なヴィデオ 海の音、山の香からも遠くあり 鼠色の眼 われは誰の子 触れかけてわかった おまえは生きてない 笑みは緩慢にくづれて溶ける 「事実を否認せよ」と、ぬるい炭酸が脳を間違えさせていく夏 どこまでも夕刻つづく道なりに曲がった先は地獄と見えて 胸を裂き舌を縛りて眠るごと身体は既にほころびて居る 友の背が花を背負うて揺れし夏 追い掛けることは幸福だった 湯を注ぎうすむらさきの肺と瞳(め)に 汚れが浮くを楽しみに 淫 波の

イドの奥底〈Ⅰ〉 (2015*2021reboot)

わが胸を掻き回せよとのたうてば沈みくることを知らない両手 友と云う傾き易き天秤に指先載せ…

亡びぬ光〈Ⅲ〉 (2015*2021reboot)

投げ出して沈んだわが身 血液は赤から碧へ ここは水脈 海水を口に含めば肉を刺す潮よわれを…

亡びぬ光〈Ⅱ〉 (2015*2021reboot)

窓を開け真昼の街が眠る間にキミの眉間をわれにひらけよ 無菌機が白きラジオを搭載し街を練り…

亡びぬ光〈Ⅰ〉 (2015*2021reboot)

路上にはキミと美貌の月があり 廃車の顔は暗く潰れて 師は病みて馬の下にて笑う夜 桃の旬は…

黒の接見〈Ⅲ〉 (2014*2021reboot)

薔薇水を時空航路のエナジーの真下であおるハイディメンション 潔癖は金糸のごとき寝具かな …

黒の接見〈Ⅱ〉 (2014*2021reboot)

心理学実験室に伏して泣く 最終講義終えし老躯は 永遠に水晶管路にキミを載せオブリビオンを…

黒の接見〈Ⅰ〉 (2014*2021reboot)

祝福と懺悔の呪を地表に刻み たっとき友の見返りを待つ 都にてジャーナリズムの徒となりし彼女の二の腕には蛇がいる 葬儀社の黒服どもが白く塗る壁に文字あり「不適切な死」 「終わりだ」と手帳の最後に書いて飛び散るインクの漏れごと閉じる 友の死に顔の輪郭線を描く(眠りはほとんど死に近きゆえ) この胸は乳白硝子で作らせた おまえの拳に割ってほしくて 午後からは出掛けるというその声は 止めてほしさを滲ませて凛 恍惚とベルトコンベヤー越しに読む商品説明狂気佇む みだりには風