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お肉などの動物性食品を食べなくなった話

地球で遊ぶには、食べることが必要です。食べない人、いわゆる「不食」の人の話もちらほら見聞きしますが、ぼくは食べるのが大好きなので、不食への道は遠そう…というか、道の先にそういう状態があるのかどうかもよくわかりません。

とはいえ、昔に比べたら、食べるものがだいぶ変化しました。

大きなきっかけは、二十代後半の頃、「ナチュラル・ハーモニー」という自然食品店に通い始めたことでした。有機栽培や自然栽培の野菜を食べ始め、それまで食べていた野菜との味の違いに驚きました。お店では、「無農薬」や「無肥料」といった表記があり、農薬を使わないほうがいいのはわかるけど、肥料を使わないことを謳っているのはどういうことなのだろうと、最初、理解不能でした。その後ちょっとしてから、なるべく肥料に頼らないほうが、野菜本来の力を発揮してたくましく育つのだというような理論が飲み込めてきました。肥料を使っていない、いわゆる「自然栽培」の野菜は、スーパーで見掛けるいわゆる「慣行栽培」の野菜に比べて少し小ぶりであることが多く、でもその分、中身が詰まっている感じがして、食べると少量で満足感が得られます。大きさの他に、色合いにも違いがあり、葉物野菜では葉の緑色が淡くやさしい色であることが多いです。そういう違いがわかるようになってきたのも、自然食品店に通い始めてからのことでした。

「ナチュラル・ハーモニー」では、店員さんたちも野菜大好きの様子で、美味しい食べ方や野菜の育て方などについて、熱く語ってくれて、ますます野菜の魅力を感じるようになっていきました。昔は大根は大根だとしか思っていませんでしたが、「聖護院大根」とか「大蔵大根」とか、在来種の野菜についても知り始め、名前がまずなんだか魅力的だし、味の違いを食べ比べるのも面白いし、食べたことのない在来種の野菜を見つけたら大喜びで食べてみました。

有機栽培や自然栽培の野菜を食べ始めたのと同じ頃、化学調味料や食品添加物もなるべく避けるようになってきました。すると、味覚が敏感になってきて、野菜本来の風味がますますわかるようになっていきました。あるとき、とあるカレー屋さんでカレーライスを食べたら舌がビリビリ痺れて、お店を出たあともしばらくビリビリしていたことがありました。多分、食品添加物が原因だろうと思います。前まではそんなことがなかったのに、舌が敏感になってくると、すぐにそういう反応が出るようになってきました。

そのうち、お肉もだんだん食べなくなっていきました。最初、相方が先に肉食をやめました。会社の仲間がお肉を全然食べないのに元気ハツラツと仕事をしている姿を見て、お肉を食べなくても大丈夫なんだ!と思ったそうで、もともと好きではなかったのであっさりとやめました。ぼくも、自分だけ家でお肉料理を食べるのも手間になるし、どうしようかなぁと思ったのですが、やっぱり長年の習慣でお肉が食べたくなり、ひとまず、遺伝子組換えのエサを与えず、抗生剤を打っていない健康によさそうなお肉を時々食べたり、動物のお肉に似せた大豆ミートを食べたりしていました。すると、不思議なことに、だんだん、動物のお肉よりも大豆ミートのほうが美味しいと感じるようになっていきました。野菜をよく噛んで味わって食べるようになってから、お肉を味わって食べようとしても動物の顔が浮かんできて、動物のお肉を味わうことに違和感を感じるにようにもなりました。そのうち、お肉に似せたものを食べたい欲求も薄れてきて、大豆ミートもめったに食べなくなり、だんだん食べる頻度が減り、今では全く食べなくなりました。

お肉を食べないとタンパク質不足になるのではないかと思われがちですが、野菜や穀物や豆などから十分摂れるそうです。動物性食品を食べないアスリートもいるくらいなので、ハードに身体を動かすとしても、お肉無しで十分に栄養を補えるようです。ぼくの場合も、お肉をやめてから体力が落ちるようなことはなく、むしろ、身体が軽くなってよく動けるようになっていきました。お肉を食べる頻度を減らした頃、時々食べると、お腹が重たくて消化に負担がかかっているのを感じるようになりました。野菜と穀物の食事だと、数時間後には消化を終えてお腹が空っぽになっているような感覚があるのですが、動物性食品を食べると、同じくらい時間が経ってもまだお腹に残っていて、もたれているような感覚が残ります。

香川に移住したばかりの頃は、まだ魚はよく食べていて、お店に行くと、瀬戸内海で獲れた珍しい魚が並んでいて、しかもびっくりするほど買いやすい値段で、いろいろ食べてみました。初めて知る魚もいろいろありました。イシモチとか、タモリとか。イシモチは名前の通り、エラの辺りに石のような固いものがあって、それを食べてしまうと、お米に石が入っていたときのようにガリっとして、食べるのに苦労しました。タモリというとサングラスのタモリさんしか浮かばないんだけど、タイの一種のようです。

瀬戸内の海の恵みをちょっと楽しんだけど、だんだん、魚を食べるとお腹が重たくなったり頭が痒くなったりするのを感じるようになり、だんだん食べなくなっていき、今は魚も全く食べなくなりました。

卵や、牛乳、バター、チーズなどの乳製品も体に不調が出るので少しずつ減らし、そのうち全く摂らなくなりました。

「ヴィーガンですか?」と時々きかれることがありますが、ヴィーガンはハチミツも食べない人を指すらしく、ぼくはハチミツは大好きでクマのプーさんのように毎日たくさん食べるので、ヴィーガンではありません。

ヴィーガンになりたくてがんばってお肉をやめようとしてみたけど続かなかった、というような話も時々聞きますが、食べたいときに無理して我慢しても続かなかったり、リバウンドみたいになったりすることが多いのではないかと思います。ぼくも魚をほとんど食べなくなったあとも、時々鮮魚コーナーに惹かれることがあり、たまに食べることがありましたが、やっぱり不調が出て、毎回結局、もう止めておこうと思うことが続き、そのうち全く食べなくなりました。いきなり牡蠣が無性に食べたくなって、何度か連続して食べたらもう匂いをかぐのですら嫌になった年もありました。

お肉をやめると不健康にやせ細ったり体調がわるくなったりするという説も見聞きしますが、それまでの食事から単にお肉を取り去るだけで、栄養の詰まった野菜や穀物や豆類などで補えていなければ、そうなるリスクはあるように思います。いろんな情報がありますが、情報を鵜呑みにせず、自分の体の声を聞きながら、ピンときたことをいろいろ試して軌道修正しながらしっくりくるところを常に探りつつ変化してきました。どうなりたいかという「最終形」は設定していなくて、今後どう変化していくかは未知数ですが、10年、20年後には食べるものや食べ方が今とはだいぶ変化しているような気もします。

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