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息子を寝かしつけるために物語を創作していたら町がデスタウンになった話

せなけいこ本による恐怖支配とそれに対する反動

なかなか寝付かない息子に向けて「夜は早く寝た方がいい」という物語を創作し続けた結果、住んでいるまち狛江が夜になると「バイオハザート2」のラクーンシティのようなデスタウンになってしまった。

バイオハザードRE2-1

発端は、興奮してなかなか寝そうにない息子を寝かそうとして、せなけいこ先生の『ねないこだれだ』を決戦兵器として投入したところから始まった、ような気がする。

この『ねないこだれだ』という絵本は、私が幼少時代から存在する書物で「おばけ」という存在がこの世に存在することや「いうことをきかない悪い子はおばけの国につれていかれる」という遊び盛りの子供にとって不都合な内容の話が、すさまじいインパクトで描かれている悪魔の書(年齢指定図書扱い級の本)である。

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実際にこれを読み聞かせ出すと、息子はガクブル状態となり、スルスルと布団の中へスライドしていった後、まるでピラミッドに埋葬されていた太陽王ラムセス2世のような格好(胸に腕をクロスさせた状態)で不快な眠りの中に落ちていくのだった。

しかし、この恐怖による支配は長くは続かなかった。
ある日、意を決した息子が我が家にある、ありとあらゆる「せな本」を本棚の奥に押し込んで埋めるという、焚書坑儒のような暴挙に出たのである。
埋められた一団の中には『ふうせんねこ』や『あーん、あん』など、おばけが全く出てこない穏健派も含まれており、せな本というだけで厳しい弾圧の対象となった。

よみうりランドの天才が考案した「ゾンビ忍者」

この一件により、息子の夜更かしに対する抑止力は完全に消滅してしまった。
その後、せな本に代わる抑止力として我々が着目し、新たに採り入れたもの、それがよみうりランドが考案した「ゾンビ忍者」だった。

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これは息子と2人でよみうりランドに行ったときに「ゾンビ忍者屋敷」という謎のアトラクションに入ったところ、息子が思いのほか怖がり目を閉じたまま動かなくなったため(そのために私はフリーズした息子を抱っこしてその迷路を抜ける羽目になった)、これはいいと使わせていただくことした。
その後、狛江にはいくつかよみうりランドに繋がる秘密のトンネルがあり、夜な夜なその穴を通じてゾンビ忍者達が狛江の町を徘徊、悪い子供たちをさらい、夜のよみうりランドへ連れて帰るという話になっていった。

ゾンビ忍者は非常に戦闘力が高く、仮に私が戦った場合、良くて相討ち、難しい場合は負けるという設定になっており、子供の長く伸びた爪、歯磨きしていない歯、お風呂に入っていない身体の匂いに反応して来るため、身を護るには爪を切り、歯磨きをし、お風呂に入って清潔にしていなければならない。

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他にも存在する脅威

また、夜の狛江に現れるのはゾンビ忍者だけではない。
大きな声で騒いだり、飛んだり跳ねたり、壁にぶつかったりする音に反応して追跡してくる「片脚のない猫」(残った片腕で家のドアにある新聞受けに手を入れ、中から鍵を開けるスキルを持つため、片脚のない猫に目をつけられたとき、我が家の玄関のドアは突破され、人生終了となる)や、「おっきいワンワン」(外を歩いている子供をじっと見つめ、子供が親と離れて歩いているとバッと駆け寄り、そのまま河原へと連れ去っていく大きい犬)、建物の屋上から悪い子を常に探している「三匹の鳩」など個性的なキャラクターが揃っている。
さらにこの10月からスティーブン・キング原作による映画「IT」より殺人ピエロの「ペニー・ワイズ」(雨の日に狛江の排水溝や下水管に現れる設定で今のところこれが最強)まで加わり、息子にとって狛江はかなりデンジャラスで緊張感の漂う町となった。

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息子は今も厳しい世界の中で生きている

改めて考えてみると、寝かしつけのために始まった着地点の分からない物語によって、恐ろしい町で生きなければならなくなってしまった息子には申し訳なく思う。
その一方、そんな恐怖の中でも隙を見ては夜更かしし、夜になっても壁にぶつかったり、大きな声ではしゃぎ回っている息子の胆力は相当なものではないかと感心もしている。
最近はプラスチックでできた大小の刀を手に、忍者になるための修行をよく行っているが、そうした行為も自分を取り巻く脅威に対抗(対ゾンビ忍者戦を想定か?)するため、自衛のための力を高めようとしているのかもしれない。

いずれもサンタクロースより前に消えていきそうなライフサイクルの短い存在ばかりだが、息子との間で育ててきた大切なキャラクターなので、消えていくその日まで愛情を持って育んでいきたい。

小~中学校まで高田純次並みに適当な内容の日記を書いて提出していたところ、小・中の担任から「君の文章、変だけど面白いよ」と言ってもらい、書き手も読み手も楽しい幸せな日々を6年程送りました。その頃のことを思い出し、あまり根詰めずに文章を綴っていきたいと思います。のらねこが好きです。