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リュミエール 02.

 私と紗奈は同じ大学の一年生。学部は文学部心理学科。受けている講義もよく被る。いつも一緒にいるから、傍から見ると親友のように見える。誰も私たちが付き合っているだなんて、微塵も思わないはずだ。
 私たちは相性が良い。見た目の系統とか性格とかは全然違うけど、相性は抜群に良いと確信している。まるで磁石のS極とN極が引かれあってくっつくように。パズルのピースが綺麗にはまるように。私たちの関係はそれくらいぴったりなものだ。
 私たちには共通の友達が二人いる。貴島彩華(きじまあやか)と高瀬舞子(たかせまいこ)。私たちは四人で行動することが多い。今日も全員の空き時間で学内にあるカフェに集まっている。
 私たちはそれぞれコーヒーとスイーツを注文した。ケーキだったりパフェだったり、今自分が食べたいものを頼んだ。スイーツを待っている時、私はある物が気になった。それは彩華が付けているスマホのストラップだ。銀のリングのようなストラップで、私はそれを初めて見た。
「彩華、そのストラップ買ったの?」
 私は彩華に聞いた。それを聞いた彩華は、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの笑顔をした。
「これ、彼氏とお揃いなの。彼氏があたしの分も買ってくれてね、これすっごく良くない?」
 彩華の目はきらきらとしている。彩華には一つ年上の彼氏がいる。彼女が入っている飲みサークルで知り合ったらしい。付き合い始めて一ヶ月半、彩華と彼氏の仲は順調らしい。
「お揃いかあ。私はあんまり好きじゃないな」
 私の隣に座っている紗奈は呟くように言った。
「良いじゃん、お揃い。彼氏と繋がってるって感じがするし」
 彩華はすかさず反論する。
「そう? 私はそんなもん無くても繋がれる気がするけど」
 紗奈はお揃いというものには、興味が無さそうだ。
「もう、紗奈ってば夢無さすぎ! 小鳥と舞子は分かってくれるよね?」
 彩華は私と舞香に話を振った。舞子は話の流れにあまりついて行けて無さそうだ。無理もない、舞子には恋人がいたことが無いらしいから。
「私はありだと思うけど」
 私は答えると、彩華はやっぱりそうだよねと言って上機嫌になった。紗奈は私の答えに表情一つ変えずに、コーヒーを啜るように飲む。私の返答を聞くなり、彩華は舞子に返答を求めている。
「……私は、分からないかな。まだ、彼氏いたこと無いし」
 舞子は言葉を選ぶように答えて、カフェオレをゆっくりと口に含む。
「舞子はまず男と話せるようにならないとね」
 紗奈は子供を諭すように言った。
「そうだね。皆が羨ましい」
 舞子は俯きながら答えた。彼女は異性と話すのが苦手らしい。人見知りということもあるみたいだが、男を前にすると緊張してしまうとのことだ。
「ということで、二対二だね。引き分けってことで手を打たない?」
 紗奈は茶化すように言った。
「舞子はなしに分類されるの? まあ、良いか。そういう事にしとこう」
 彩華はあまり納得していないような口ぶりだ。そもそも、これは勝負では無い気がするが、そこはあえて突っ込まなかった。
 そんな下らない話をしている間に、スイーツが運ばれてきた。私の前にはチョコケーキが姿を見せた。私はこのカフェのチョコケーキが好きだ。甘過ぎなくて程よいチョコの甘さと舌触りがたまらない。私は早速口に入れる。やっぱり、ここのケーキは最高だと思った。
「紗奈ちゃんと小鳥ちゃんって、本当に仲が良いよね。一緒に住むってすごいなあ」
 舞子は唐突に切り出した。彩華もすぐに反応し、小鳥は紗奈に依存してそうと私をからかった。外れてはいないから言い返せない。姉御肌の紗奈とどちらかといえば妹キャラで通っている私の組み合わせだから、そう見えるのは当然だと思う。
「だって、小鳥は可愛いから。守ってあげたくなるの」
 おそらく紗奈は何の意図もせずに言ったのかもしれない。それでも、私はどきっとした。

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