映画レビュー「スーパー!」プアーでバッドなバットマン


友人がおらず、婚約者からも逃げられた男がある日突然「啓示」を受け、赤いコスプレヒーロー「クリムゾンボルト」として町で見かけたさまざまな悪人に制裁を加えていく物語。

「ガーディアン・オブ・ギャラクシー」のジェームズ・ガンが監督を務め、レイン・ウィルソン、エレン・ペイジ、ケヴィン・ベーコン、マイケル・ルーカーらが出演。

「一般人がコスチュームを自作して自警団的なヒーローになる」というあらすじは「キック・アス」とよく似ているが、こちらはさらに泥臭い。

主人公であるフランクは精神を病んだ冴えないデブ男で、「啓示(妄想)」によってヒーローとなるのだが、もちろん特殊も超人的な肉体持ち合わせていない。

唯一の武器はその右手に持った真っ赤なレンチ。麻薬の密売人であろうとスリであろうと映画館の割り込みであろうと、おもむろに殴打してぶちのめす。(そして「やりすぎたか」と動揺したりもする)

赤いレンチで殴りかかる真っ赤なおっさんなんて側から見れば狂人としか思えないのだが、そこにさらなる狂気が投入。

物語中盤で無理やり相棒となる、エレン・ペイジ扮する「ボルティー(リビー)」はヒーロー大好きなサイコパス。最低レベルの良心は備えているフランクと異なり、なんとも楽しそうに残酷にヒーロー的行為を働いていく。

そのような二人が小さな町でミニマムにバイオレンスに暴れまわる本作は間違いなくブラックユーモアなのだけれど、暴力シーンの生々しさや敵役含むキャラクターの描写が丁寧であり、「笑える」だけではない良さを与えてくれる。

「ヒーローは悪を倒すためなら何をしてもよいのか」
という問題は何十年も前から見かけるが、本作はそれにかなり真面目に向かい合っている。何しろこの物語のヒーローコンビはダサくて残酷、冷酷で考え無しだからだ。

劇中においてある人物のことばから発せられる、この問題へ問いかけに対してフランクが一体どう答えたのか、ここはかなり重要だと思う。

そして、ラストのシークエンスはかなり意表を突かれるもので、かなり賛否が分かれるものとなっている。結局、「彼はヒーローとなって何を得て何を変えたのか」という話なのだが、これらの場面をどう捉えるかは人によって大きく異なってくるだろう。しかし、僕個人としては、倫理的にはさておきとてもしっくりくる終わり方だった。

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