映画レビュー「鬼の詩」芸と見世物の違い

明治時代の上方を舞台に、とある噺家の執念を描いた物語。

桂馬喬は本来とても堅物の噺家であったのだが、
ある日を境目にインパクトの強い芸を披露するスタイルに転向。

これまで邪道と見なしてきたライバルに恥らずなまでのすり寄りを見せ、
その身振り手振りを真似ようとする。「はしたない」と怒鳴られてもお構いなし。

物語中盤、ある悲劇によってその芸風はさらにエスカレート。
物乞いや口寄せの真似事を高座で見せびらかし、さらには観客が投げた馬糞を喰らってまでウケを狙おうとする。

それによって彼の人気はどんどん高まっていくが、その代償もとても大きなもので・・・という話。

ある意味とても現代的な話。
この物語に登場した噺家にはモデルがおり、
これほどではないがやはりある種の狂気をはらんでいたらしい。

彼は芸に対する情熱をまったく別の形に変えたわけなのだが、
それは本当に正しいものだったのか。

終盤、人間離れした風貌と化した彼に対して投げかけられることばが
この物語の問題提起となっている。

一見まじめで堅苦しい物語に見えつつも、
「怖いもの見たさ」や「人の狂っていく過程」が丁寧に描かれた良作。
YouTube大好きっこはぜひ一度ご鑑賞あれ。

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