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タクシー。

散歩に出た。

ずっと重い荷物を持っての移動だったので、足取りが軽い。

フランスの気候は、気温が高くても日陰に入れば涼しいからこの季節でも外を出歩くのが嫌にならないのが本当に嬉しい。フランス人の友達は早朝の長距離移動で疲れていたらしく部屋でお昼の睡眠に入ったので、日本人3人で街を歩いた。

西仏行きの新幹線(TGV)の発車時刻が2時間後だから近場で散歩しようとそういうことになった。パリの街を見ながら日本とはここが違うといった話をして盛り上がり数キロ歩いたところで、もうそろそろ戻ろうかとなり携帯の地図を頼りに家に向かって歩き始めた。

行きとは少し違う道で帰ろうと、地図が表示する第二候補のルートに沿って歩いて、なんて便利なんだと携帯という今となっては当たり前のものに対する感動を覚える。

しかし、歩いても歩いても目的地に到着しない。
確かに地図上のピンは存在していてそこに向かって歩いているのだけど、ピンと現在地が一向に近づかないのだ。少し焦りを覚えて歩調を早めた。少しずつ目的地に近づいていき、最後は小走りだったかもしれない、ようやくピンと現在地が重なった。

目の前に広がっているのは見たこともない風景。
嫌な予感がした自分たちは家で寝ていたフランス人の友達に電話をかけた。家の住所を教えてもらい、地図で調べてみるとここから3キロ先にピンがたった。所要時間40分。帰ってなくてはいけない時間はとうに過ぎていた。

40分もかけて帰ったら新幹線には絶対に間に合わないし、チケット代はもう払ってしまっている。地下鉄のアクセスがあまりいい場所ではないのでそれに乗るわけにもいかない。終わったと思った。

電話越しの友達の声は少し怒っている。普段はあまり怒るような人ではないので、そのわずかな違いでもイラ立ってるのがわかる。

仕方なく、タクシーを捕まえた。
英語は基本的にあまり通じないので、タクシーの運転手のフランス語と自分たちの英語での会話になる。とにかく住所をみせてここ!ここ!と指差した。目的地が分かったらしく、タクシーは発車した。

新幹線出発まで40分。無事に家まで到着した。もともとの予定だったメトロに乗っていたら絶対に間に合わないので新幹線駅までそのタクシーに引き続き連れて行ってもらった。

電話の声だった彼とも合流して4人で駅に向かう。
現地人の現地語を話せる人がいるということがどれだけ助かることなのか、この時改めて思った。無事にタクシーは駅につき、新幹線には10分も余裕を持って乗ることができた。焦ってる時は苛立っているけど、冷静に後から振り返ってみるとこれでこそ旅、となる。ほんとにネタになる1日だった。

地図のピンに感謝。

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