父には言えない1159文字の想い、夢

6月27日 入院による父の抗がん剤治療が始まった。2日間かけて抗がん剤を点滴で投与し2日安静で退院するスケジュールである。これを合計7回行う。治る治療でない。簡単に言う、これはただの命を引き延ばす延命である。
今は2回目の抗がん剤治療で入院している。しかし父は今肺に水が溜まり抗がん剤を予定通り行えず入院が伸びているところでいる。
今日は実習が休みであったので面会に行ってきた。父を見た時に感じた昔の頑固さや父の尊厳という衣装をまとった偉大な姿はなかった。副作用で髪を抜けて所々が禿げている。またガンという悪魔に呪われすべての体力を吸われ看護師に見守れながら酸素ボンベと点滴が欠かせない父の弱々しい姿であった。
二人で話す時間はなんだか久しぶりであった。なんか照れくさそうに話す父と息子。周囲から見たら微笑ましいと思う。
入院中夜看護師を呼ぶのが申し訳ないからとお小水をペットボトルでしたと笑いながら言っていた。心配している息子の前で強がったのだろう。笑顔の中で今にでも泣きそうな顔をしているのは息子として分かる。
父が刻む1日は自分とは重みが違う。父の1日は死へのカウントダウンがもう間近でそこから逃げたくても着実に近づいてくる。だってもう治らないから。

母は精神的崩壊し家を出た。そして父の治療費として貯めておいた50万を持ち出した。今どこにいるかもわからない。今こそ支えるべきである母は姿を消した。父はこんな仕打ちを受けるほど今まで悪い事でもしたのかと神様を恨みたくなる。父の知り合いは全員口を揃えて「真面目過ぎる人である」と。父の事を悪く言う人を聞いたことは無い。こんな人間に人生の最後にこんな仕打ちがあっていいのか。

今、臨床実習で病院で実習をさせていただいている。担当の患者様に対して「どんどん聞きたいことがあったら聞いてね、立派な作業療法士になってね」と言われた。その言葉に涙が出そうになった。このような言葉は実習生が言われることは少なくはないと思う。しかし、こんな未熟なはじめましての人間に、自分が病気で辛いはずなのに優しい言葉をかけてくれることに対してしっかり受け止めなければならない。この言葉を無駄にしたくない。
このように感じるのも父の姿を見て強く感じるようになったと思う。
今父・担当の方を含めて患者様にたいして自分の能力は無力である。時分には夢がある。それは作業療法士になり将来がんや脳卒中のリハビリを進歩することに貢献したい。そしていつか父のような人、自分のような家族を笑顔にしてあげたい。そうすることで父や担当の患者様はきっと喜んでくれるだろう。
そのためにも今この逆境に負けている場合でない。負けられない。今のこの状況に絶対跳ね返す。この文章を読んでく中で少しでも心の支えになる方が居たらうれしいです。
以上


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?