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焙煎士、サウナを語る 第一室

「焙煎士、サウナを語る」は、NOG COFFEE ROASTERS オンラインストアで商品を購入すると同梱されるフリーペーパー「NOG COFFEE TIMES」にて連載されたコラムである。NOGの焙煎士である藤城が、焙煎理論を構築する際に気づいた、焙煎とサウナの共通点を独自の切り口で記したものである。
今回から全5回に渡ってそのコラムのアーカイブを掲載する。


対流熱について語ろう。


対流熱とは熱源から発せられた熱が風に乗って、ものを温める伝わりかただ。つまり熱風のことである。

焙煎において、対流熱はとても重要である。なぜなら、対流熱はコーヒー豆を効率よく温めるが、伝導熱、輻射熱と比べ焦がすことはあまりないからだ。そもそも焙煎はコーヒー豆の中に十分な熱を与え、内部で化学変化を起こす作業である。しかしいくら熱を与え、フレーバーを最大限引き出すことができるからと言って、最大火力で温めればいいというわけではない。料理と同じく、中身が美味しくとも、外が焦げてしまえば台無しである。

このバランスはサウナにおいても見受けられる。フィンランドのサウナには、アウフグースと呼ばれる文化がある。熱波士がタオルや草木を用いて、サウナの中で大気を仰ぎ、人々に熱波を与えるのである。このアウフグース、一度体感してみればわかるのだが、サウナで静止している時より遥かに熱さを感じ、体はもちろんのこと頭までたちまち熱くなってくる。ちょうど良いところで水風呂に飛び込めば、それはもう合法麻薬と言っても過言ではないほどの快楽を得ることができるが、少しでも限界を超え我慢しようなどすれば皮膚が火傷に近いヒリヒリ感を覚え、水風呂に飛び込んでも痛みが勝ってしまう。

僕はアウフグースを体感するたびに、焙煎機の中で対流熱を当てられているコーヒー豆を思い出す。人間は自分の意思で、サウナを飛び出ることができるが、豆たちはそれができない。だからこそ焙煎士が豆の声をよく聞いて、限界を察し、対流熱をコントロールするしかないのだ。

コーヒー豆の気分を味わいたい方は、ぜひアウフグースを体験してみてほしい。自身のフレーバーを最大限引き出し、焦げる限界まで攻めたい方は、サウナハットを忘れないように。それでは良いサウナライフを。


今日のサウナ 〜最強の熱風焙煎〜

朝日湯源泉ゆいる 川崎駅よりバスで約10分 
1時間おきに行われるアウフグースはまさに熱風焙煎。熱波士によっても仰ぎかや盛り上げ方が
異なるため、お気に入りの熱波士を見つける楽しみもある。

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