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上場後初の株主総会運営③~各準備事項の留意点~

今回の記事では、株主総会の準備事項の留意点について、書いていきたいと思います。

(上場後初の株主総会運営①~はじめに~はこちら
(上場後初の株主総会運営②~関与プレイヤー・スケジュール編~はこちら

留意すべきポイントを以下の目次のとおり、見ていきます。

1.総会会場について(ロジ周りについて)

1 会場の選定
会場規模としては、株主の1%程度が実際に来場する想定で、その人数の株主が十分に収容できる会場を探します。
例えば、株主が2,000人だとしたら、20人程度を十分に収容できる会場(余裕をみて40人から60人程度収容できる会場)を探します。

会場タイプとしては、ホテルや一般の会議場などが考えられますが、弊社では、弊社のサービスを使って探した以下のスペースで開催しました!

なお、会場については、前日のリハーサルから株主総会後の取締役会(通常、株主総会後に取締役会を開催し、代表取締役の選定を行います)の時間までを確保して押さえておきます。

(ちなみに、私が、総会準備をする上で一番最初に悩んだのが会場の選定でした。弁護士として、総会対応をしていたとき、前日のリハに行く時点では、(当然ですが)既にロジ周りは整備されていたので、いざ会場を選ぼうと思ったときに、規模や場所について、どんな会場を選べばよいのかの基準が全く分かりませんでした…)

2 会場レイアウト
会場レイアウトのポイントを列挙すると、

・株主が来場した際の受付スペースを設けること
・株主の入口と会社関係者の入口が別であること(株主が直接、役員と接触する動線を作らないこと)
・役員席へ直接、役員が入場できる動線を用意すること(役員控室から役員席へ直接、入場できるようにすること)
・役員席の後ろに事務局席を設けること

などがあげられます(イメージとしては以下のとおり)。

総会レイアウト

なお、レイアウトは、株主総会開催に慣れている会場(ホテル等)であれば、一通り、アドバイスをいただけるようです。

3 警察への臨場要請
現在は少なくなっているかと思いますが総会屋対策として、また、暴力的言動に及び得る株主対策として、万が一に備えて警察への臨場要請を行います。
自社の本店所在地を管轄する警察と会場地を管轄する警察に臨場要請をするのが通常のようです。

2.想定問答集について

株主総会では、株主との質疑応答の時間があります。
この質疑応答について、その場で逐一、考えて回答するのでは、適切な回答ができませんし、誤ってインサイダー情報などを回答してしまう可能性も否定できません。
そこで、あらかじめ想定問答集を作成し、事前に回答者(通常は、代表取締役社長(議長))にインプットする作業が必要となります。

想定問答集の作成は、以下の本などを参考に作成していきます。

しかし、市販されている本などでは、一般的な回答が記載してあるのみなので、自社の事情に応じた回答は自社で用意する必要があります。
自社の事情に応じた回答の作成に当たっては、当日出席するのは株主であるため、普段から株主対応を行っているIR担当等に協力してもらいながら作成すると、より具体的な想定問答集を作成することが可能となります。
具体的な作成イメージは、弊社IR担当の田中くんがまとめてくれた以下の記事が大変、参考になると思いますので、ぜひご覧ください!!

3.シナリオについて

株主総会は、法的にミス(瑕疵)なく終結させることが一番の目標となります。
例えば、「役員候補者の選任理由を教えてほしい」、「議長を交代してほしい」、「今後の事業計画について、もっと詳しく説明してほしい」など、株主からの質問は様々なものが想定されますが、実は、これらの質問の中には、対応を間違えると株主総会に瑕疵が生じる可能性があるものがあります。
そのため、証券代行や顧問弁護士の指導の下、法的に瑕疵がない進行ができるよう、事前に綿密なシナリオを作成する必要があります。

シナリオについては、法律事務所が出している本や証券代行からもらえるひな形などを参考に作成すると適切なシナリオを作成できます。

4.リハーサルについて

1.議長リハ
総会を進行し、質疑応答に回答するのは主に議長の役割ですので、全体的なシナリオのリハとともに、想定問答のリハを行います。

全体的なシナリオのリハでは、シナリオの読み合わせとともに、手続的動議(議長交代に関する動議など)が提出された場合の対応もシミュレーションしておく必要があります。
経験者の議長であっても、動議などの不規則な出来事が発生すると焦ってしまうこともあるので、「しつこいくらい練習して慣れてもらう」、「不規則な出来事が発生したら、とりあえず事務局に指示を仰いでもらう」など、議長のキャラクターに合わせて対応方法を調整するのが良いと思います。

想定問答のリハでは、作成した想定問答集を用いて、ひたすら練習を繰り返します。練習を繰り返す中で、議長が回答に詰まった点や答えにくそうにしていた点などを適宜、ブラッシュアップしていき、想定問答集を仕上げていきます(想定問答の共有の仕方は、上記の記事をご参考ください)。
想定していなかった質問を当日にできるだけなくすことがリハの目的なので、総会担当者のほかに、場慣れしている証券代行や顧問弁護士、逆に総会慣れしていない他部門の従業員などに協力してもらいながら、様々な角度から練習を繰り返していくのがおすすめです。

2.受付リハ
株主総会では少し特殊な受付対応が必要となることがあります(本人確認の方法や定足数の集計方法など)ので、株主受付を担当する従業員についても、当日の対応方法をリハします。

3.前日リハ
前日リハでは、本番を見据えて、役員の入場から退場まで通しでリハを行います。

5.当日の留意点について

1 総会開始までの準備
前日までに準備は終えていると思いますので、当日の留意点は、リハ通りに進行できるよう意識すること、イレギュラー対応を要することが発生しないよう気を配ること程度です。
なお、これまでの記事の中で出てこない当日に必要な役割として、最寄駅から会場までの案内係が存在します。株主が迷うことなく来場できるよう、最寄駅の出口あたりから会場の入口付近まで、要所要所で案内係の従業員を配置することが通常です。

2 議決権行使について
特にベンチャー企業であれば、会社関係者が多くの株式を保有していることも多いかと思いますので、当日までに、または、当日にきちんと議決権行使をしてもらうよう促し、議案を可決するのに足りる議決権個数を確保します。

3 総会後について
総会後については、そのまま取締役会を開催することが多いです。
また、総会で役員の選任議案があった場合には、役員の変更登記が必要ですので、こちらも忘れずに対応するようにします。

6.(最後に)バーチャル株主総会について

以上、私が中の人として初めて株主総会を経験し、学びがあった事項を中心に留意事項をまとめました。

ところで、新型コロナウイルスの感染防止の観点などから、バーチャル株主総会が巷で話題となっています。
経済産業省からは、以下のとおり、ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイドラインも公表されました。

ガイドラインを見ても、まだバーチャル株主総会の実務については固まっていないように思いますが、今後、バーチャル株主総会を支援するプレイヤーやオンラインで総会を開催する企業が増え、実務が固まってくれば、上記で記載した実務についても大きく変わるかもしれません(少なくとも、多くの株主が来場する前提でのロジ周りの準備は不要になるかと思います)。

一総会担当者として、今後のバーチャル株主総会の動向についても引き続き、注視していきたいと思います。

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※一連の記事は、執筆者個人の見解であり、執筆者が所属する団体とは一切関係がありません。

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