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上場後初の株主総会運営②~関与プレイヤー・スケジュール編~

今回の記事では、上場会社の株主総会に関わるプレイヤー・株主総会準備のスケジューリングについて、書いていきたいと思います。

(上場後初の株主総会運営①~はじめに~はこちら

1.上場「前」の株主総会について

まず、上場前の株主総会の一般的なスケジュールについて見てみます。スケジュールを立てるときは、株主総会当日からさかのぼった方が分かりやすいので、その順番で見ていきますと、

① 株主総会当日
~中2週間~
② 計算書類等の承認・株主総会招集に関する取締役会決議及び株主総会招集通知の発送【会社法298条及び299条】
~中1週間~
③ 取締役会の招集通知の発送【会社法368条】

となります。カレンダー形式にしてみると、以下のような感じです。

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上場前の株主総会においては株主数が限定されているため、招集通知の発送等の事務作業は自社で行うことが可能です。よって、役員のスケジュールを確保できさえすれば、上記のスケジュールの作成程度で問題なく株主総会を開催することができると思います。

しかし、上場後の株主総会においては株主数が突如として増加します。それに伴い、株主名簿の管理や招集通知の発送の事務手続きを自社だけで行うことは到底、不可能となります。
つまり、上場後の株主総会においては、自社以外のプレイヤーの動きも意識してスケジューリングをすることが大事となってくるのです。

2.関与プレイヤー

では、スケジューリングの前に、上場後の株主総会では、どのようなプレイヤーが関与することになるのかを次に見てみたいと思います。

① 株主名簿管理人
名前のとおり、株主名簿【会社法121条】を管理する機関【会社法123条】であり、株主名簿管理人には、株主名簿の作成事務や招集通知の発送事務等を委託します。
通常は、信託銀行が株主名簿管理人に就任することが多く、別名「証券代行」と呼ばれたりもします。
株主名簿管理人は株主名簿の管理以外にも、株主総会の運営に関する指導・助言を行ってくれる存在であり、総会準備で困ったことがあればアドバイスをもらえる存在です(弊社は大変、お世話になりました)。

② 印刷会社
印刷会社には、招集通知の印刷をしてもらいます。また、印刷の前提として、招集通知の作成自体を印刷会社のシステム上で行うことも多く、招集通知の作成で困ったことがあれば、アドバイスをもらうことができます。

③ 会計監査人
上場会社は、東証の規則上、会計監査人を設置する必要がありますので、上場後は会計監査人というプレイヤーも出現します。
会計監査人は、株主総会の準備に直接、関わりがあるわけではありませんが、招集通知と合わせて発送する計算書類を監査する機関ですので【会社法436条2項1号・437条】、招集通知の作成に当たっては、監査のスケジュールを調整しておく必要があります。

以上の3社が上場後の株主総会で新たに関与するプレイヤーとなり、上記3社とも調整の上、総会準備のスケジューリングをしていくこととなります。

3.株主総会準備のスケジュール(関与プレイヤーの予定を組み入れる)

では、実際に、関与プレイヤーの予定を組み入れた総会準備のスケジュール例を見てみます。
カレンダーの形にすると、以下のような感じとなります。

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ポイントとなる各日程について、株主総会当日からさかのぼり、順を追って見ていきたいと思います。

<②招集通知の発送~①株主総会の期間>
法律上必要な期間となります。
招集通知の発送は、総会の2週間前まで(中2週間)に行う必要があります【会社法299条】。2週間前までに発送できないと法律違反となりますので、この期間は遵守する必要があります。
なお、招集通知の発送自体は株主名簿管理人(証券代行)がしてくれます。

<③招集通知の納品~②招集通知の発送の期間>
招集通知を封筒詰めする期間です。
証券代行が招集通知を発送するにあたり、証券代行において、印刷会社が印刷・納品した招集通知を封入する時間が必要となりますので、その時間を勘案してスケジューリングします。

<④招集通知校了~③招集通知の納品の期間>
招集通知を印刷する期間です。
印刷会社が招集通知を印刷する時間を勘案してスケジューリングします。

<⑤計算書類等承認・株主総会招集の取締役会>
招集通知を校了すると、印刷会社が印刷の作業に入りますので、それ以降は招集通知の内容を修正することはできません。
よって、招集通知に記載する計算書類については、校了までに、会計監査人による監査と、取締役会での承認を受けなければなりません【会社法436条3項】。
また、招集通知の校了ができるということは、株主総会での議題も決定しているはず(招集通知に議題を記載するため)ですので、このタイミングで株主総会招集に関する取締役会決議も行います【会社法298条】。なお、株主総会招集に関する取締役会決議を行い次第、直ちに決算取締役会決議通知書をTargetを通じて提出する必要があります。

<⑥取締役会の招集>
取締役会の招集は、原則、1週間前まで(中1週間)に行う必要があります【会社法368条】。

4.株主総会準備のスケジュール(その他の予定を組み入れる)

上記のスケジュール例は関与プレイヤーの予定を組み入れたものでした。
しかし、株主総会準備に際しては、他にも色々な業務が発生します。以下は、その主な予定も組み入れたスケジュール例です。

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それぞれのイベントにつき、少し見てみます。

<(1)有価証券報告書、CG報告書、臨時報告書の提出>
有価証券報告書(内部統制報告書・確認書を含む)は事業年度経過後3か月以内にEDINETで、CG報告書(コーポレートガバナンス報告書)は株主総会後遅滞なくTDnetで、臨時報告書は株主総会後遅滞なくEDINETで提出する必要があります。

<(2)独立役員届出書の提出>
独立役員届出書は変更が生じる日(株主総会日)の2週間前までに提出する必要があります。
東証のHPによると、招集通知を株主に発送するタイミングに併せて届け出ることが想定されている、とのことです(招集通知を、以下のとおり早期web開示する場合には、これと同時に提出することも考えられます)。

<(3)早期開示>
コーポレートガバナンスコード補充原則1-2②では、招集通知の早期発送・早期web開示が要請されています。招集通知の校了データ確定後は、招集通知を早期web開示することも可能ですので、早期web開示を検討します。

<(4)決算短信承認決議・決算発表>
期末後45日以内にTDnetで提出する必要のある決算短信を、取締役会で承認【会社法362条4項】を得たうえで提出します。

5.まとめ

今回は、株主総会準備のスケジュールをまとめてみました。
以上の想定スケジュールは、あくまで例であり、初めての経験でイレギュラーな事項が生じることも考慮すれば、もう少し余裕をもってスケジュールを組むのが望ましいとも言えますので、調整可能なイベントについては、適宜、自社の事情に応じて調整するのが良いと思います。

さて、次回は、
・上場後初の株主総会運営③~各準備事項の留意点~
を書く予定です。
「総会会場ってどんな会場を予約するの?」、「想定問答集ってどう作るの?」などなど、総会準備を進めていく上でのポイントを弊社での経験も踏まえ、書いていきます。

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