映画つくりの約束事
新作映画『おじや』の誕生までを記録するこのマガジンブログですが、なかなか進捗をお伝えできるものが無いので、よく聞かれる質問に答えてみます。
どうやって映画をつくるの?
これ、本当によく聞かれるのですが「ネットで調べれば出てくると思う」と答えます。なので、以下のことはあくまで僕の個人的な考え方を共有しているとご認識ください。
1. 制作の流れ
派手で華やかなイメージをされがちですが、物凄く地味です。見学に来たいと言われますが、地味だし面白くないですよって毎回言います。そもそも映画作りにおいて、撮影という行為はほぼ折り返し地点です。
何よりも大切なのは準備です。一応、個人的な見解です(映画にまつわることなんてぜーーーんぶ一概には言えませんから)
(1)企画
(2)脚本
(3)準備
(4)撮影
(5)編集
(6)宣伝
(7)公開
という順序で、(1)~(3)はすっ飛ばして撮影される方もいらっしゃいます。時々「誰が映画にルールなんて決めたんだ!! 自由にやれよ!」ということをすごく乱暴な解釈で捉えているかたがいらっしゃるのですが、僕はやはりある程度の約束事が必要だと感じております。そのなかで自由を求めます。
2. 約束事の例「スタッフィング」
例えば助監督さんの役割分担を例にあげます。助監督さんには大きい現場だと4つの種類があり、それぞれ1st、2nd、3rd、4thと略されます。
ざっとですが
1st:スケジュール管理
2nd:現場の段取り、衣装、メイク、エキストラさん演出など
3rd:小道具周り、カチンコなど
4th:3rdのアシスタント
こいう風にだれが何を担当しているのかがしっかり分かる現場はかなり規模が大きいと思います。(羨ましい・・・)
で、この分担をひっちゃかめっちゃかにしたとします。(=約束事を無視)すると大抵、やりにくいという感情が湧くと思われます。
そして、結局、「よし! 誰が何やるか決めようぜ」って言いだすと思います。
なぜこんな約束事が出来たのか・・・?
それは長きに渡って映画を作り続けた人々が、最も良い方法を手さぐりで探し編み出したからだと思うのです。
それを全部無視して映画を作るのは、やはり難しいのです。
これを心地よい約束事と現わしておきます。
3. 約束事の例「倫理的観点」
例えば映画のなかでこういう言葉は発してはいけないとか、煙草を吸ってはいけないとか、自転車で二人乗りしてはいけないとか、倫理的観点から表現を避けることがあります。
以下のシーンをイメージしてください。
とある女性が見知らぬ男たち数人にさらわれたとします。
その後、女性は目隠しをされ、黒塗りの車に乗せられ、人気のない森の中へ。
男が女の目隠しを取り、洋服を脱がせようとする。
別の男はその様子を嬉しそうにカメラで録画する。
最後に広い画で、黒塗りの車がガタガタと揺れる。
今、この描写でR15+指定にかかるかと思われます。
理由は、最後の広い画、車の中で何が行われているのか想像できる印象を演出しているから。
とかそういう理由で指定されます。
約束事の例「スタッフィング」 で話したときは、心地良い約束事と表現しましたが、この「倫理的観点」においては、心地良さというよりは、時代がどこに向かうのか?という点で、制作する側が常に考え続けなくてはならない課題だと思っています。
例えば、ディズニーは、2015年に、子ども向け映画での喫煙シーンを禁止しました。
今年公開の『クルエラ』で喫煙シーンがあるのか?とても気になります。『101匹わんちゃん』で、クルエラがぷかぷか喫煙するシーンがとても記憶に残っています。
こうやって、時代の流れのなかで、映画の中の約束事は変わっていきます。それを見逃さないこと。考え続けることがとても大事だと思います。
映画の約束事について、まとめるとこうなります。
基本的な決まりはないが、今まで映画を支えてきた人々が編み出した方法を心地よい約束事として採用し撮影するのがお勧めである。また、時代により変わっていく社会の出来事にアンテナを張り、それを映画作りの約束事として採用する方々もいる。
ちなみに、映画『おじや』は予算を集める段階で、これに伴い様々な計画が動いています。
この話はまた別の機会に。
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