みんなロクデナシになりたかった。
この間、とあるかなり地位の高い先輩に怒られた。
「A先輩って、ホントにきっちりとされた方ですね」
「違う!私は破天荒だ。見損なうな!!!」
この時オレは、、
「確かに、、、なんて破天荒な怒り方だ」
と、誰も同意しないであろう先輩の言を、認めざるを得なかった。
そう言えば「ガリ勉」って言葉もあるけど、これほど人気のない言葉もない。
例えば素敵な女性に友人を紹介するとする。
「彼は僕の友達で、ガリ勉なんです」
こんな他己紹介は、タコ殴りの素だ。
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「いやしかし、おかしいではないか!?」
俺はそう思った。
ガリ勉も真面目もキッチリも、まさに世の中が求めているものだ。世の中にキッチリ従えば、キッチリ真面目なガリ勉になるはずなのだ。それなのに何故、キッチリ真面目なガリ勉は、キッチリ真面目なガリ勉本人にさえ拒否られてしまうのか!
だからここからは、キッチリ真面目なガリ勉の、その謎に迫ってゆこうと思う。
・・・・・・・・・・・・・・・
記念すべきオリンピックイヤー、うちの塾の2020年仕事始めは昨日、1月6日だった。有難いことにいつも通り生徒が来てくれた。来てくれなきゃ困るが。。。
だが、そこで悩み深い生徒Aがこう言った。
「僕は野球のプロにはなれないと思うんです。自分の力量が分かってきたので・・・」
「だからお母さんに言われたんですが、高校を卒業したら情報の専門学校に行こうかなって思ってます」
彼はメンタルはあれだが、中学時代からピッチャーとして知られたかなりの逸材。最近はかなり不調だが、勉強熱心で学年2位をとったことさえある。当然大学に進学し大学野球をするものと思っていた。
それが、新年早々まさかの「情報専門学校へ・・・。」である。
・・・こんな時、どんな顔をすればいいの??
往年の綾波レイ並に悩んだが、もし奴を笑いでもしたら、180オーバーのケンシロウのような男のストレートを顔面に叩き込まれる恐れがある。しかも、ボールではなく拳をである。
俺はガチで何も出来ずに困り果てていた。挙げ句の果てにどうしたか。
「まぁまぁまぁ、、、ここは、生徒Aよ、勉強しようぜ!」と、『サザエさん』で磯野を誘う中島のように、奴を勉強に誘い出しお茶を濁したのだった。
しかし流石は我が、もうすぐ3年の伝統を誇る男塾。ここからミラクルが起きたのだ。
「コンコンコン」
教室の扉をノックする奴がいる。
「あれ?Bかな???早ぇな」
「入ってよ〜!」
しかし入ってこない。
「コンコンコン」
「えぇ?入ってよ〜!」
「つか、分かってるら?」
しかし入ってこない。
「コンコンコン」
「ウルセェ!」
俺はギャグっぽくだが怒鳴りつけると、しょうがないので塾長自らワザワザ扉を開けに行ったのだった。
するとそこにいたのはヘルメットを被った見慣れない背丈の男。
メットを脱ぐまでも色々あったが、めんどくさいので割愛すると、彼は二年前の卒業生。学習塾omiiko伝説の1期生の中にあっても、さらに群を抜く伝説を創りまくりやがったCだったのだ。
それでも懐かしいCとの会話が始まる。
C:「太ったな!」
俺:「おぉ、当時50キロで今88キロだからな!」
C:「俺を雇ってくれ。時給1200円で」
俺:「頭良くなきゃダメだら?」
C:「クソッww 」
「テメェ、キモイって言われるだろ?」
俺:「は?キモチイイって言わせてるよ」
伝説との手合わせをした後、それでも
「じゃぁね!」
「おぉ、また来てくれよ」
と仲良く別れたのだった。
(お酒は飲んでません!)
Cは学校はサボりまくりだったが、アルバイトにはしっかりと通っている。でもお金が悪いのでもうすぐ辞める予定だ。数日前、Cのお母さんとお婆ちゃんに会った時には、
「Cはしっかりと会社に行ってます」
と、とても喜んでいた。
そして、この日はやはり進路の話をよくした。
「先生、二十歳の時、何やってた?」
「俺は代々木ゼミナールの代々木本校でまだ浪人してた」
「ハハハ」
「でも、そこで出会った小論文のカリスマ講師に鍛えてもらったもんで、本出せたに」
「・・・おぉ・・・」
「卒業生のDは何で退学になっただ?」
「・・(割愛)・・したもんでなぁ」
「つか、俺はアイツをお坊さんにしようかと思って、日蓮宗総本山のとこにある身延山高校の資料、クリスマスプレゼントで贈ってやっただよ」
「クリスマスにかっ!?」
「遠くから来てくれてたEも、高校退学したに」
「お、おぅ」
「・・・お前んとこ、退学ばっかじゃねぇか(^◇^;)」
「まぁな。アイツは辞めてすぐ金髪にして、ノーヘルで原付2人乗りで乗り回してただよ。だけん、Eも今、鳶職の仕事を超頑張ってる」
「しかも最近は『勉強したい』って言ってるだって」
「だもんで、C、お前ももう一回勉強したくなったら来てよ」
「イヤ」
「・・・俺の友達の岡村さんの弟子は、大学生だけど静岡駅前で靴磨きして、月に20万円稼いでるに」
「岡村さんだって飛び込みでピンポン押して『整体いかがですか』ってやってる。100件に1件しか入れてくれないけど、数年後には年収1千万円になるって」
「ヤベェ」
俺:「俺の本に出てきたヤンキー起業家の望月さんのとこで雇ってもらえよ!」
C:「でも、雇ってもらえんら」
俺:「俺が口聞いてやるに」
C:「説得力ねぇ」
「つか、俺はまだいいよ。正社員は」
「もうちょっとアルバイト色々して、そこから決めてこうと思う」
「あぁ、それがいいかもしれんなぁ」
この間に中1のBも来て、色々下ネタを叫んでいた。
さらには恐るべきことに、ココで言えない程のCの伝説があって、AとBの帰りがけにそれを少し話した。
Aはもちろんだが、Bもなんだかんだで学校でもらった進路の紙を持ってきたりして、色々悩んでいたようだった。だが、余りにもヤバい奴らが超元気に生きてるのを見て、AもBも進路に悩むのがバカバカしくなったようだ。
Aを送る時にこう言った。
俺:「ガッツさえありゃ、靴磨きで食ってけるぜ。問題ないら」
A:「ハハハ」
「先生、、、
、、、僕はIT社長になろうと思います」
俺:「はぁ????」
全く意味不明だが、今日はCのそんな所に存分に助けてもらった。Aもまた同じだろう
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いい点とって、
いい高校入って、
いい大学入って、
いい会社に入って、、、、
って、、、
確かにそれもいい。
だが、97年から、大学を卒業しても就職できない奴らが世界的に急増している。世界経済の方は拡大し続けているにも関わらずにだ。
決まり切ったことをキッチリやる仕事は自動化され、機械にとって変わられた。その結果だ。その辺りは映画『most likely to succeed』に詳しい。
掛川副市長と一緒にこの映画を見た時、「これからの子供の成功とは何なのか」。この問いについて考えた。
僕は、「ロクデモナイ奴」になればイイんだと思ってる。
もう、「キッチリ真面目なガリ勉」は通用しなくなったから。
ニーチェはこう言った。
「
人が確実なものへ執着するってことは、これはもう本能に近い。
確実なものは不確実なものより価値があり、幻想は真実よりも価値が低いと、誤って認識されてしまっているからだ。
しかし、人はそんな単なる『確実な何か』、で測れるような存在ではない。
」
「
誰もに認められるから真実なのか。
誰にも認められずとも突き進めるから真実なのか。。。
(ニーチェは後者に立つ)
もし『お前の真実が受け入れられないから』といってキレて人と争うのなら、真実とはまるで何かのクリーチャーのようではないか。しかも、真実の癖に誰かの擁護を必要とするというのだから、何とも情けない話ではないか。
(・・・起業家は明かに後者の立場に立つ。真実とは正しさを意味するものではなく、ガッツを意味するものだとする立場に)
」
ニーチェ『善悪の彼岸』より。(原書のドイツ語が読めないので英書を激烈バカ的超訳)
今、世界の起業家研究界隈で話題沸騰中。おそらく近い将来バズワードになるだろう、「エフェクチュエーション」という概念がある。これまでの学問が因果関係を追求してきたのに対し、エフェクチュエーションは仏教で言う「縁」の関係を追求している。
戦略やマーケティングによる正確な予測を基に行動した因果論のパラダイムに対して、、、
エフェクチュエーション、すなわち「縁」のパラダイムでは、直感を通して感じた「何かが起こりそうな予感」をベースに、人にぶち当たって行く。その結果、いつのまにか星座の布置のように、いるべき人々がすべき事業を展開している。
なかなか理解しづらい概念だが、こうしてユングのコンステレーション(星座の布置)の概念を援用すると分かりやすく理解できる。
学問を通して人の優位に立とうとする因果論に対して、学問を通して人にぶち当たる「ガッツ」を養成するのがエフェクチュエーション、つまり「縁」のパラダイムになる。エフェクチュエーションでは、ガッツこそが何よりも大切になるのだ。
吉田松陰や坂本龍馬、大河が始まった渋沢栄一など、維新の志士の行動様式に極めて近い。
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Aが困ってしまったのだって、予測できない時代に予測を強いられてるからじゃねぇかな。そんな時は予測不能な奴らと一緒にいてみりゃいい。
停学になった
退学になった
会社辞めた
会社つくった
謹慎くらった
脱藩した
会社つくった
維新起こした
大変革の時代はそれでいい。ロクデナシで。
・・・・つか、逆にそれじゃなきゃ、だら??
お読みくださいましてありがとうございます!!
めっちゃ嬉しいです(≧∀≦)
起業家研究所omiiko 代表 松井勇人(まつい はやと)
新刊出させて頂きました。
ご感想いただけましたら、この上ない幸いです(o^^o)
サポートありがとうございます!とっても嬉しいです(^▽^)/